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アルカディアの境界 ‐空の奏者‐  作者: 絢無晴蘿
Noblesse Oblige外伝 聖ルキアの後悔と鏡の魔王。そして主人公ローズマリア
73/80

ミリアルズの初恋


その昔、彼女はとても美しい魔王でした。

災厄の魔王と呼ばれるほどの力を持つ者でした。

美しき魔王は、自由気ままに災厄を振りまいて、幸福の幻を創りだし、自由気ままに遊びます。

さて、彼女の名前は何と言うのでしょう。


ハルファレイズ・ミリアルズ・ミナカトール


美しき魔王は最悪な事にハルファレイズ・ミナカトールの末。

最も恐ろしきあの原初の魔王の末娘なのです。

魔界ではその名と力ゆえに跪かれ、他の神の使い達からは警戒をされ、彼女は退屈をしていました。

どうしても、ハルファレイズ・ミナカトールの名前は無駄に大きすぎるのです。

彼女はふとしたことから、人間達の前に姿を現す機会がありました。

その時、彼女ははたと気づきました。

人間達の間ならば、自分はただのミリアルズになれる。

人間達はミリアルズの事を誰も知らないのです。そもそも、魔王と言う存在を誤解すらしている。

そして、彼女が人に扮すれば、魔王とばれる事も無い。


やがて、ミリアルズは人々の中に潜んだそうです。

とある旅人達と共に世界を廻ったとか。

そして、彼女は運命のヒトと出逢ってしまうのでした。


これはやがて訪れる、永遠を求める魔王と、鏡の巫子のなりそこない、偽物の聖女の物語の前日譚。





彼女は、掟を破った。


黒い髪に空色の瞳の少女は少しだけ頬を赤く染めて言紡ぐ。

「おじいさまっ、お願いがあるの」

それは、決して誰にも知られてはならない願いだった。

「ミリアルズ……突然戻ってきたら、開口一番にそれ? オレにいろいろと言わないといけないことがあるんじゃないの?」

原初の魔王と呼ばれた(唯一信頼できるヒト)にしか、告げられない秘密。

「もう、ヴィオルールおじいさまったら。いいじゃない、ちょっと人間達に混じって遊んでいるだけでしょ。それに、魔王(なかま)たちに迷惑もかけてないわ」

おてんばな少女の最後のわがまま。

「そういう問題じゃないだろ。……それで、なんなんだ?」

末の娘に甘いヴィオルールを、ミリアルズは嬉しそうに微笑む。

「なんだかんだ言いながら甘いおじいさま、好きよ」

身内の事になると甘すぎる彼は、その時のことを何度も後悔する事になる。

「はいはい。ほら、さっさといいなさい」


ミリアルズは、掟を破った。


「あのね、おじいさま……私ね、好きなヒト(同じ眷族)と出逢えたの。それでね、そのヒトの子どもが欲しいの」


その後、ミリアルズは行方をくらまし、遥か遠くの異世界で朽ち果てることとなる。



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