死と永遠の魔王
昔、永遠を求める哀れな男がおりました。
その者は、どうしてもどうしても、永遠を手に入れたかった。
目の前にある命を、永久にとどめておきたかった。
それが、子を残した彼女への償いだったからです。
彼女とは、男のせいで死んだ妻でした。
いえ、男のせいではないのです。本当は違うのです。彼のせいではないのです。
でも、男は何もできなかった自分を恥じ、どうか次こそはと願いました。
(それは違う場所で違う彼女を失った愚かな男は違う決断でした。それは褒められたことなのでしょう。)
しかし、彼は決定的な間違いを犯してしまいました。
『永遠』というあまりにも恐ろしく無慈悲で、救いようも無いモノに手を出してしまったのです。
男は永遠に生き続ける苦痛を知らず、永久に彷徨う寂しさも知らずに不死を求めて――やがて、魔王を生み出しました。
これにて彼の物語は終了します。
なぜなら、彼は死に至ったから。
祖国に追われ、友たちに裏切られ、愛した人を失い、自らの子を魔の眷族に堕として。
彼は、微笑みながら最期を遂げました。
あぁ、自分は願いを叶えることができた。そんな、独りよがりなことを考えながら。
さて、生み出されてしまった魔王はどうなったのでしょう。
きっと、悪逆非道な魔王となったのでしょうね。
きっと、災厄を招く、死の魔王に。
家族を全てなくして、人々に迫害されて、魔王からは異端と忌避され、永遠の時間を彷徨う、哀れな魔王。
ソレは、今でも生きていて、永遠に苦しめられているそうです。
生み出された魔王の名前?
それはもはや失われてしまいました。けれど、彼の母親と、彼女が生まれ育った国の名前だけは今も語り続けられています。
その名は――リア姫。不死の魔王に滅ぼされたレイランス王国の王女だったとか。




