原初の魔王3
助けてほしい。この現実から。この顛末から。
こんなのは嫌だ。
世界を、変えたい。こんな世界は嫌だ。
もっと、強くなりたい。こんなによわいのは、弱いのはもういやだ。
だけど、誰も助けてくれない。
自分しかいない。
だから、英雄の世界を……。
「……それ……は……」
そうだ。
あの時から、自分の世界は変わった。
「ちょ、ちょっとアレっ」
戦いを見ていた湖由利が、慌てた様子で叫んだ。
他の人々のざわめきが梓月の思考を遮る。
「おい、逃げろっ!!」
「な、人間がエネミーにっ?!」
「うそだろっ」
今、思い出したことを頭の隅に追いやりながら振り返ると――そこに、化物がいた。
さっきまでいたはずのグレイズと戦っていた男の姿が消え、変わりに巨大なコブラの様な、龍の様な化物に変わったのだ。
そこに黒炎を纏った拳で殴りかかったグレイズだったが、まるでびくともしない。下でも止まったかのような反応に舌打ちをする。
「くそっ、やっぱり強化されていやがるっ」
強化――さきほどの所為だ。
ティアロナリアの情報が人々の間に広まったことで、ティアロナリアに影響を受ける魔物や魔王である彼等の力を増した。その事を梓月達はアイテールによって聞いていた。
「私の近くに集まってくださいっ」
ローズマリアに言われ、戻ろうとしていた陽香も一緒になってローズマリアの周りに集まった。
「みなさん、下がって!!」
よく通る声でローズマリアが叫ぶ。
見知らぬ、しかもゲートから現れたエネミーかもしれない人間の言葉だ。すぐに反応できず――ソレに、巻き込まれた。
「これはっ?!」
突如、身体が重くなり地面に叩きつけられる。
それは、重力。彼のエネミーの一定範囲がかけられた重力の重さで陥没した。
クレーターの様にできた穴の中には、あの犬耳の青年もいた。
「グレイズっ!」
「オレは大丈夫だっ。それより、ニンゲンどもをどうにかしやがれ!!」
ローズマリアの傍にいた梓月達はなぜか無事だったが、他の場所に居た人々は巻き込まれて重力に押しつぶされ動けないでいた。
「梓月、どうにか出来ないのかよっ?!」
「出来てたらとっくのとうにやってる!!」
クロムの言葉に、梓月は苛立ちながら答えた。
梓月の『場』では無理だ。所々から柄創師の苦しむ声が聞こえて来る。が、だからと言って何もできない。梓月が出来るのは、攻撃力を上げること少し早さを上げることぐらいだ。影を操ることもできるが重力の前では意味が無い。
グレイズが未だに継続する重力の重みに耐えながら立ちあがった。
周囲に黒い靄が立ち込めると、突如発火し黒い炎となって燃え上がる。
しかし、蛇の尾が虫でも払うように振り払われた。
思うように動けず、避ける事も出来なかった。
グレイズは吹き飛ばされると炎は霧散した。
吹き飛んだ先の壁を壊し、止まる。瓦礫の上に倒れたグレイズにローズマリアが叫んだ。
「グレイズっ、やはり私が--」
「お前はっ、こんなかでお前とロイドぐらいしかマトモな奴がいねぇんだからっ、そいつらを守っていろ!」
「しかしっ、本気も出せず、一人では--」
額から流れた血を乱暴に拭う。彼は、嗤いながら言った。
立ち上がろうとするとさらに重力がかけられ、蛇の尾が叩きつけられた。
「グレイズ!!」
重力のせいで動けない中で、叩きつけられた。そこから、逃げる事も出来なかった。
尾がどけられる。
「ちょっと、犬耳君、ひどくない? ぼくらもまともなんだけど。それ、忘れているよね?」
そこには、光の結界の様な物に守られたユイシャンによって庇われたグレイズがいた。
ほっとローズマリアが息をつく。
「……まとも? 本気を出せない?」
戦いを傍観しているだけの立場。だからこそ、風間陽香は首を傾げた。
「そういえば、あのヒトも魔王だと言うのなら、力が強くなっているんじゃ……」
一方的な二人の戦いを見ていた湖由利がぽつりと漏らす。
「……だからこそ、だよ」
「?」
ローズマリアは梓月達を守る結界を創りだしながら、言った。
「ティアロナリア様の力が強くなれば強くなるほど、彼等は力を増す。同時に……狂ってしまう。ティアロナリアの狂気で、ただの化物と成り果てる」
「……え?」
狂う? 彼等が?
「魔物達が人を襲うのは、狂ったせい。もともと力が強いモノはどうにか意識を保っているが、全力を出せばすぐに狂ってしまう」
だから、グレイズたちは本気を出せない。
ヴィオルールや巨大な蛇になってしまった男たちと同じように彼らもなにかに変わる事が出来るのかもしれない。しかし、それをすれば狂ってしまう。
だとしても、ヴィオルール達は大丈夫なのか? 疑問を覚えるが、そんな疑問を言う前に自体は急速に変わっていった。
少し離れた場所で重力なんてないかのように戦っていたヴィオルールとロイド、二人の戦いに終わりが近づいた。
梓月達は知らないことだが、ローズマリアとロイドはアルカディア神の加護を一身に受けている。その攻撃はティアロナリア神の力を無力化させる。魔物や魔王達からすれば天敵。
あまりにも理不尽な強力な力を持っている。
だが、それでも彼は信じられなかった。
「……本気を出しているんですか」
ヴィオルールがロイドの攻撃を受けて地面に叩きつけられる。動けないヴィオルールに、ロイドは剣を向けた。
至る所から血が流れている。先ほどから、彼は逃げ回ってばかりだ。
ヴィオルールは、もっとも古い魔王だ。そして、同時に魔界を統べるなんて言われるほどの力を持っている。
だと言うのに、なぜ?
不気味な物を感じながら、ただ好機とばかりに息の根を止めようとした。
しかし、それを遮るように彼は問いかけてきた。
「君のお姫様は無事かな?」
「っ?!」
まさか。慌てて梓月達のいる方を見た。
瞬間、周囲の地面が歪んだ。
突如足元が柔らかくなり、沈んでいく。
「な、これはっ」
あたりの黒い液体が発光していた。血だ。
ヴィオルールの血が、辺りに――陣を描くように飛び散っていた。
彼はこれを狙っていたのだ。
抜け出そうと足を抜こうとするが抜けない。さらに、地面だったモノがロイドに触手の様な物を伸ばす。
右手に、絡みつく。左腕に絡みつく。さらに胴を、首を、両足を。
「ロイドっ!!」
事態に気づいたローズマリアが叫ぶが、すでに遅い。術は発動している。
すでに、その身体のほとんどは拘束され、見えなくなっていた。
「お休み、アルトカの騎士」
「きさ、まっ」
ヴィオルールの嘲笑う声が響いた。
それとともに、ロイドの身体が完全に見えなくなった。
ロイドを包み込む地面は元の地面の形へと直り、そこに先ほどまで騎士がいた形跡は消えていた。
「よかったよかった。アルカディアの加護の少ない場所だから、上手くいったのかな?」
嗤いながら、ヴィオルールは梓月達を睨みつけた。
負けているように見せたのは油断させるためだ。
人の姿のままだったのは、先ほどの術を発動させるのに適していたからだ。
ロイドはいなくなった。
「さて、次はお前たちだ」
煩わしさを感じていた人の姿を捨て、元々の――本来の姿へと、変わる。
「ロイド……っ」
遠くでロイドの姿が消えていくのを、ローズマリアは呆然と見ていた。
無論、本当なら助けたかった。しかし、計ったかのように放たれたメルキスの攻撃から梓月達を庇っていたためになにも出来なかったのだ。
悔しげに顔を歪ませるそれを見ていた梓月達は、自分たちが枷になっていることに嫌がおうにも思い知らされた。
メルキスと戦っていたはずのムニエルがドラゴンに向かって雷を――魔法を放った。
自然ではありえない、窓よりも大きな球体に押し込められた雷がその身体にぶつかり、鱗を焦がす。が、ほんの少しだけ。
ヴィオルールは避けることすらしなかった。その魔法では、この身を傷つけることなどできないと知っていたからだ。
「……さっきのせいでっ」
ムニエルはさらに魔法を放ちながら自身もドラゴンへ迫り、宙から取り出した槍で斬りつける。炎を纏った刃が煌めくが、鱗を斬るどころか傷つけることすらできなかった。
弾かれた刃にムニエルは驚愕をした。
「前より、硬くなってるっ。もうっ、面倒な!!」
ムニエルですら傷つけられなかったのでは、人の身では無理なのではないだろうか。
そんな、弱気を抱いてしまう。
「ど、どうしてっ?!」
状況を知らないローズマリアは苦戦する様子に唇を噛んだ。
「さっき、あの輩がこの世界の人達にティアロナリアの事を認識させたせいだよ」
アイテールの話を聞き、はっとしたように彼のほうを見る。
「なら……どうにかできるかもしれないっ」
「どうやって、なにをするんですか?」
クロムが問いかけると、ローズマリアは困ったように眉をひそめた。
「他の神々の事を人々に認識させればいいと思います。しかし……その手段が、今はない」
「今は?」
なにやら強調された場所に、クロムは首を傾げた。
「ハルファが来ない限りは……」
そういえば、ハルファは今回来ていない。
梓月が知っているアルカディアの住人はムニエルとユイシャン、そしてローズマリアとルキア、ハルファだけだ。なので、今回、いろいろな人や魔王が現れてかなり驚いている。
それにしても、会った事があるヒトがほとんど魔王ってどういうことだ。もしや、向こうの世界では魔王がたくさん、山のようにいるのか。
ふと、身体が軽くなった。周りを見れば、押しつぶされていた人達がなにごとかとあたりを見回しながら立ちあがっている。どうやら、重力が消えたらしい。
「ったく、手間取ったぜ……」
「まったくだ」
ボロボロになったグレイズとユイシャンが巨大な蛇を倒したところだった。二人とも本当にふらふらで、これ以上戦えるのかと心配してしまうほどだ。
しかし、苦戦するムニエルの元へとユイシャンは向かう。グレイズもまた、向かおうと蛇に背を向け――
「だめっ、そいつまだ、死んでないっ!!」
ムニエルがユイシャンのほうを見て、とっさに叫んだ。
背を向けていたグレイズの元に尾が向かった。その尾は、氷を纏っている。
「っーー!」
とっさに避けようとするが、間にあわない。そのまま、絡め取られ、きつく締めあげられた。
「グレイズ!!」
ムニエルとユイシャンが助けに行こうとするが、それを阻むようにヴィオルールが間に入る。
「ロ、ゼっ、ダメだっ、お前は、そいつらをっ」
とっさに動こうとしたローズマリアに、グレイズが叫んだ。
その言葉に足を止めるが、その顔は険しい。
このままじゃ、まずい。梓月にもわかる。
このまま、彼らに守られるのか。このまま、彼等がやられるのを見るだけなのか。
「ちょっとぐらいなら、援護だって出来る」
最初の人の姿のままではさすがに手を出しづらかった。だが、相手は正真正銘の化物だ。
「うわっ、湖由利動くなよ?!」
「ちょっと黙ってて」
湖由利がこそこそと何かを出した。こっそりと持ってきていたらしい銃。
それを見た梓月に湖由利は悪戯がばれた子どもの様に舌を出す。
「こんなこともあろうかとね。ほら、クロム動かないでよ?」
「え、ちょっ、危険だろっ」
「はいはい、黙ってシャッラプね」
「お、おいっ」
狙うのはもちろんあの蛇のエネミーだ。
考えていたことは一緒らしい。梓月もまた、意識をエネミーに集中させる。
「動かないでよっ!!」
願いを呟きながら、湖由利が引き金を引いた。
それとともに、梓月も放つ。
「行けっ!!」
湖由利の銃弾、そして梓月の影の弾、共に一か所を目指す。
やっぱり、考える事は一緒だったのだ。
命中したのは、目。
戦闘では、ヴィオルールと同じく硬い鱗によって攻撃が阻まれていた。離れた場所からの銃弾や梓月の影の弾では攻撃力は足りないだろう。ならば、もっとも守備力が低い場所。おのずと、鱗のない目に攻撃先が決まったのだ。
人の悲鳴のような絶叫が響いた。
それとともに巨体が激しく動き、一瞬拘束が緩んだ隙にグレイズが抜け出す。
「射撃得意なの?」
「まあね、すごいでしょ」
クロムに背負われている状況にもかかわらず、目に見事命中させた湖由利の腕を褒めながら、梓月は次の攻撃に映る。
未だ唸り声を上げている巨大蛇は片目を失い、血を流している。もう片方を狙いたいが、今は痛みから暴れまわっているため狙いをつける事が出来ない。
「下がってください」
ローズマリアが皆を庇うように一歩前に出た。
梓月達は気づいていなかったが、黒金のドラゴンがこちらにむかって来るところだったのだ。はるか上空から向かって来る。それに、ローズマリアは怯みもせずに剣を向けて一言つぶやいた。
「弾けろ」
ドラゴンの鼻さきで小さな爆発が起きる。小さいと言っても顔の至近距離で爆発したのだ。一瞬視界が塞がれた隙を狙ってムニエルが全身に雷を纏い槍を構え、横から突進をする。
不意をつかれた黒金のドラゴンは進路をずらされ、梓月達とは離れた場所に着地した。
そこに、見てばかりではいられないとばかりに柄創師が囲った。
ドラゴンは家三軒分ほどの大きさがある。しかし、柄創師達はこうしたエネミーと戦った経験があった。過去、数年間にこれほど大きくはないにしても巨大なエネミーを数十名で討伐する事が何度もあったのだ。
梓月の『場』の支援により、攻撃力だけは上がっている。
何度もアクト・リンクで創られた刃を打ち付ける。統率のとれた動きで翼を狙っていく。
なぜか、その攻撃はムニエルの魔法や攻撃よりも効いている様子で、攻撃を受けるごとにドラゴンは身をよじらせて煩わしいゴミを払うかのように柄創師達を尾で払う。
あのドラゴンの攻撃を一撃でも受ければ重傷を――悪ければ死ぬだろう。湖由利の受けたあのブレスならば、消滅してしまうかもしれない。それゆえに、積極的に攻撃を行う事が出来ない。
梓月はそれをなんとも言えない気持ちで見ていた。梓月の『場』による攻撃力上昇は無くてはならないモノだ。しかし、どれだけ攻撃力が上がろうとも当てなければ、意味が無い。
梓月も隙をついて巨大蛇やドラゴンに攻撃を行うがあまり意味が無い。
その時、ドラゴンがブレスを吐いた。
一直線に――家が、道が、町が、壊れる、削れる消滅する。柄創師を狙っただけだと言うのに、直線上にあった全ての物が破壊されていた。
それに巻き込まれた柄創師がいたのを梓月は見ていた。
「っ!!」
幸い、死んだ人はいないようだが、町のほうではどうだったのだろうか。ブレスは避難が進んでいない場所まで破壊している。
その隙をついてドラゴンは動きを乱した柄創師達を次々にその凶悪な尾と爪で吹き飛ばしていく。うっとおしい蠅でも追い払うように、容易く。
彼等に守りの補助はない。梓月の死乃絶対完結理論は、完全なる攻撃専門だから。
このままでは、ダメなのだ。
ドラゴンが狙いをつけずに四方にブレスを浴びせた。
その一つがこちらにまで向かって来る。
「伏せて!!」
ローズマリアが結界の様なモノを作り防ごうとした。しかし、みしみしと音が聞こえるたと思うと、ひびが入り粉々に砕ける。爆風に、巻き込まれた。
近くの道に身体全体をうちつけ、痛みの中起き上ると数メートル離れた場所に居た。
ぐらぐらとしっかりしない頭で考える。どうやら、ブレスの直撃は受けなかったが吹き飛ばされてしまったらしい。近くに居たはずのクロムと湖由利、アイテールの姿も見えない。ローズマリアはほぼ直撃を受けたはずだ。大丈夫なのか知りたいが、梓月からはその行方は見えなかった。その代わり、ボロボロになった町を見ることとなる。
戦場では、多くの人が血を流していた。
「……あ」
初めて、見る光景だっただった。こんなに多くの人が血を流しているのは。
いや、昔あった。あの時も、あの時のドラゴンとの戦いも、こんな光景だった。
どうして忘れていたのだろう。きっと、それはいつだってミントの『場』があったからだ。ミントの『場』では誰もが守られ、血を流すなんてことが無かったから。
これまで、持っていなかった感情が沸き起こる。
悔しかった。
この『場』がエネミーに通じないのが。ではない。助けられないのが。
自分が自分の為に押し付けた世界では、誰も助けられないのが。
『みんな、絶対に生き残る。だって、この戦いは絶対に負けることなどあり得ない。
だって……それが、それが確定された未来だからっ!
確定され、完結した未来が変わることなんてありえない
だから、あきらめないで! 絶対に未来はあるから!』
それを叫んだのは誰だったか。
「アキホ……」
梓月は、知っている。彼女は人殺しだった。
直接じゃない。ただ、死ぬように誘導しただけ。死ぬような命令をしただけ。大切な物を守る為に。
誰にも、死んでほしくない。絶対に勝つ。私達に未来はある。そう言いながら、大多数を救うために柄創師を死地に向かわせた。
それは、しょうがなかった。あの時、そうするしかなかった。誰もが、必死だった。
彼女の様になりたかった。
鈴村晶許が死んだのは、自分のせい。
もしも、自分がアキホのような空操師だったら、あんなことはおこらなかった。
平凡な空操師を、アキホが庇うことなんてなかった。
だから、時雨日和《役に立たなかった『場』》を忘れて、死乃絶対完結理論《アキホの『場』の模造》をしたのだ。
それは、アキホの『場』を模造しようとした欠陥品だったけれども、時雨日和を忘れたかった。
でも、
「私は、君みたいになれないや」
誰かが死ぬのは、見たくなかった。
思い出すのは、ほんの数カ月だけ一緒に暮らした女性。
誰よりも優しくて、傷つきやすくて、見ていてほほえましく思ってしまうほど自覚のない恋をしていて――
「お願い……しぐれ、びよりっ」
――誰よりも必死に助けようとした。いや、助けた。救った。
自分とよく似ている、なんて彼女から言われたけれど、それは違うと今ならはっきりと言える。だって、梓月には彼女ほどの覚悟はない。自分の命を投げ出してまで、誰かを守るなんて、できない。
でも、それでも。
「時雨日和っ!! お願いっ、時雨日和!!」
必死に叫ぶ。今、必要な『場』の名を。
死乃絶対完結理論を展開したまま――違う『場』を創りだす。そんなこと、出来ない。無理だ。前例がない。
だから、むり。
なんて、ありえない。うそ。
違う『場』を、一人の空操師が創りだす。出来る。それくらい出来る。
だって、『場』はその人の心から創られるのだから。
その人が信じれば、なんだってできるのだから。
「誰も、死なせないっ」
晴天の空から、誰かの涙の様に、雨が降り出した。




