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プロローグ アルカディアの境界


「私は反対ですっ!!」


AOM――アルカディア対策本部、その部屋に怒りに満ちた声が響く。

その声の主は十八か九か、まだ幼さの抜けきらない金髪碧眼の女性だった。

凛々しい軍服姿だが、その腕に巻かれた包帯が少々痛々しい。

向けられた先に居たのは青年だった。

机に肘をついて考え込んでいる彼は、彼女の上司である。

視線の先には一枚の報告書があった。

「あの子を実戦に投入するのは早すぎますっ。たしかに、私よりも能力は上でしょう。あそこまで見事な補助をできる空操師(からそうし)はそうはいないでしょう。しかしっ、あそこまで不安定な空操師もいませんっ!!」

それに対して、青年――彼女の上司である館石は無言。

考え込み、考え込み、考えた末……小さく言った。

「彼女を、特務に移動させる」

「……そんな、館石さん!」

「異論は認めない。彼女は近日特務クラスに移動させる。その代わり、お前を教師とする。実戦投入可能になるまでフォローをするんだ。その腕が治るまで、休暇の消化も兼ねてな」

そう言った館石の目はどこか厳しい。

それに、ミントは歯がゆいとばかりに叫んだ。

「それでも彼女は……白野(しらの)梓月(しづき)は……危険すぎます」


思い出すのは少女の操る空間。

あの、怖ろしいまでに怨みと負の感情に塗れた世界。


「ミント、これは彼女の為でもあるんだ」

「それは……彼女が(なつめ)博士の娘だからですか?」

「それもある。しかし、それ以上に――彼女の世界は危険だからだ」




2156年――今から十年前、あるネットゲームが話題になった。

そのゲームの名前は『アルカディアの交錯』。

バーチャルリアリティゲームが盛んだったその時代、『アルカディアの交錯』もまた流行に乗って作られたゲームの一つであり、見た目は別段特徴の無いよくあるような普通のゲームだった。


ストーリーは地球の人間がアルカディアと呼ばれる世界にトリップして生活を営むというもの。一昔前のネット小説ではやったような内容である。

しかし、プレイしていくにしたがい、あまりにもゲームがゲームの形をなしていない、ふざけたバグだらけのゲームということが明らかになった。



元々いるNPC、ノンプレイヤーキャラクターと話す事が出来ない。

一つのクエストが終わるまで別のクエストを受けることができない。また、クエストを拒否することもやめることもできない。

千を越えるエネミーがいるにもかかわらず、彼等と戦う事が出来ない。

プレイヤーがエネミーと接触した場合、もしくは瀕死になると勝手にログアウトさせられる。

セーブが出来ない。



あまりにもおかしすぎるそのゲームに、一部のマニアはこぞって攻略をしようとした。が、誰もが挫折した。


一年もたたないうちにそのゲームはマイナーゲームの黒歴史に沈んで行った。

が、二年後、つまり今から八年前、とあることからそのゲームが有名になる。

むしろ、今この日本で、いやこの世界で知らない者はいない。


なぜなら





そのゲームのエネミーが現実を侵食するかのように現れたからだ。



こちらが、本来のプロローグ……

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