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0 約束された過去と未来

これは、本編前の未来のお話し。

エピローグ “BAD END”Aパート


これは真実の終わり《TRUE END》ではない。

ましてや、幸福な終わり《HAPPY END》では、確実にありえない。




物語の成立には、登場人物の存在が不可欠である。

中心となる彼等が消えたのであれば、彼等の物語はそれ以上紡がれ続けることはない。

ゆえに、それがその物語の幕引きとなるのだろう。

永遠に奏でられる物語はないのだから。


すでに、この物語の中心となる彼等は死に向かって歩んでいる。

守る為に自らを犠牲にした女。

次代に意志を繋げるため死んだ男。

自らを知り、世界を変えて果てた女。

大切なモノを最期に手に入れた少女。


残ったのはたった二人。

全てを失いながら歩き続ける騎士。

真実に全てを失った少年。

そして、そのうちの一人も、すぐに消滅してしまうことだろう。


ゆえに、これにてこの物語は幕引きとなる。



The end



神様に願ったことなんて、一度もなかった。

ましてや、感謝したことなんて。


でも、もしも本当に神様がいるのなら、今、最期に感謝をしたい。


ここまで、私は生き続けることが出来た。

そのおかげで彼を助けることが出来た。

支えることが出来た。

最高の終わりに導く事は出来なかったけれど、それでも彼を救う事は出来た。


自己満足かもしれない。


それでもいい。

私は、今、初めて幸せだと感じている。

本当に、よかった。

ここまで歩き続けられて、よかった。


背を通して彼の熱が伝わってくる。

以前はあんなに頼りなかった小さな背中は、いつの間にか大きくなっていた。


「かみさまって、ほんとうにいた……」

「……あんなの、神なんかじゃない。本当に神がいるなら、こんな結末になったりしない」

彼の声は、どこか遠くから聞こえて来るように感じた。

背負われているせいで、顔を見ることは出来ない。ただ、声だけ聞くと、泣いているように感じた。

だから、ため息をつく。

「なきむし。そういう意味じゃない」

「……泣いてなんて、ないよ」

「うそ」

そういえば、初めて逢った時も泣いていた。

そっと微笑んでも、彼にはきっとみえない。


周囲は、暗かった。

空洞を歩いているようだった。

長い長い廊下。窓が無ければ、明かりもない。

そこを、彼は私を背負って歩いて行く。


ぼろぼろだった。

私も、彼も。

戦いの果てに、生き残って、ここまで歩いて来た。

ようやく、光が見えてくる。


「……初めて、かみさまにかんしゃした」

「……」

「君に出逢えて、良かったって」


薄ぼんやりとした視界の中で、光は少しずつ近づいて来る。

長い長い暗闇を抜けた先にあるのは、光。それが、嬉しい様な哀しい様な。複雑な思いを抱く。


「ほんとうに、よかった」


これで、私の物語は終わる。

ここまで、続いたことが奇跡だった私の物語が。


幸せだった。


「わたし、こんなに……しあわせだったんだね」


何も無いと思っていた。

けれど、大切なモノが今は……ここに。

ねぇ……?



Her satisfactory death.




女が戦場に倒れていた。

周囲に、生きている者は誰もいない。

だが、女の仲間は周りにいた。

彼女の傍で、佇んでいた。


「終わった」


口元の血を拭いて、彼女は嗤う。

鉄臭。口の中が鉄の味で気持ち悪い。そう、嗤う。


『お疲れ様』


誰かが彼女の傍で言った。


「うん、疲れた」

『……』

彼は応えない。

ただ、よくやったとばかりに頭をなでる。

「おかしいよね。どうしてあんたの時は見送れなかったのに」

『死んだ奴が見送るのか?』

「そうそう」

『たしかに。反対だよな』

「そう、だよね」


女はそう言って、今度こそ笑顔を見せた。

曇りのない、微笑み。


「でも……これはこれで、いい最期だった」


笑いながら、目を瞑る。

そして、二度と目を開けることはなかった。

周囲に居た仲間たちの姿が崩れて逝く。

槍を背負った彼も。

幼馴染を守った青年も。

自分を犠牲にして全てを守った女性も。


残ったのは、目を閉じた女性だけ。


物語に振り回され続けた彼女は……微笑みを残して眠りに着いた。



Never open its eyes.




騎士の目の前に広がるのは戦場。

血に塗れた惨状。

酷く歪な終焉の風景。


水晶で創られた様な、硝子細工の様な、美しい巨鳥の姿は既にない。

愛しい婚約者の腕の下で息を引き取ったという。

そして、聖女ルキアの奇跡によって、多くの人々は救われた。

戦いは、終わったのだ。

しかし、この戦いは――いったいなんの意味があったのだろう。

人々も、魔物達も、誰も彼も戦いたくなんてなかった。喪いたくなんてなかった。死にたくなんて、無かった。

それなのに、どうして?


「教えてください、アルカディア……」


そう、願った時――二つの影が揺らぐ。


いつだって、物語は紡がれる。

戦場の中心で、一人の騎士は世界を知らずに物語を紡ぎ続ける。

嘘だらけの日々も、これでお終い。

偽りの聖女も、本物の聖女も、賢者を騙る者も、狂気に苛まされた魔王も何もかも――白日のもとに晒された。

だから、騎士は始まりの場所へと向かう。

全て、狂ってしまったあの場所へ。


その後、その騎士の姿を見た者はいない。

共に戦った聖女とともに、姿を消したとされている。



「貴方は永遠を求めますか?

完全なる生を求めますか?

求めるのならば……永久という悲しみを、貴方は耐えられますか?

私は不死の女神。

貴方達に夢を魅せ、不死の幻想を見せるモノ。

けれど忘れないで。

異端とは苦痛。痛みを伴う物。

花は散るモノであり、何時か枯れるモノ。

花が散らない世界は――異端なのです。


私は……不死の女神。

死を肯定し、否定し、貴方達に選択を迫るモノ」


どこかの森でフィルフィーの花が咲いて、やがて散るのだろう。

何時もと同じように何度も繰り返すのだろう。

永遠が夢物語であることを否定するように(・・・・・・・)



The world was saved by this.




光が少年を照らした。

その背には、少女が背負われている。

その手は力なく垂れ下がり、瞳は閉じられていた。

背負った時よりも重くなった少女を、少年は無言で近くにあった地面に下ろした。


周囲は、酷く殺風景だった。

所々に見える大きな紅の花の周りには、残された胴体が転がっている。中には、それすら無くなっている者もいたが。

少年は、無表情であたりを見回した。

生きている者は誰もいない。死に、彩られた世界が広がっているだけ。


「どうして」


行き場のない怒りは、近くの瓦礫に当たり散らされる。

赤くなった拳からは血が落ちるが、それでも少年は殴り続けた。


「どうして、どうしてどうして……なんでっ。なんでみんな死ななきゃいけなかったんだっ!!」


それはすべて、『彼』のせいである。


「これが、幸せだって? こんな終わりで、幸せだったって?!」


少女は幸せだと言った。

少年の背中で、幸せだったと笑った。

それを、彼は肯定出来ない。


「こんなの、間違ってる!」


それは、『彼』も同じ。

『彼』も、間違っている。


「こんなの、こんなの幸せなんかじゃないっ」


だから、世界を変革しよう。


これは、『彼』らの変革の物語。



Who is "He"?




後に言われる、アルカディアの侵略。日本襲撃事件。

その日、最高の空操師の名を継ぐ空操師『三重世界』白野梓月、空操師の研究の権威桐原空人、アルカディア対策本部の総司令館石廉也、当時最強と言われた柄創師斑目一騎、故人矢野冬真と肩を並べた柄創師左近堂陸、クロム・グリセルダ他、数百人の柄創師、空操師、魔法師が死亡した。一般人はさらに増え、今でもその正確な人数は解っていない。おそらく、数万を越える人間が殺されたと言われている。


これにて、彼等の物語は終わりを告げる。



しかし――その後の事を話そう。


突如、ゲートの出現、およびエネミーの襲撃は納まり、自らを『サンテラアナノツカイ』と呼ぶ者たちが現れ、世界は真実を知ることとなった。

しかし、柄創師、空操師、そして魔法師は依然、世界に存在している。

節理の壊れた世界で、彼等はエネミーという共通の敵を失い、ひどく悲惨な戦いを始めた――。





それを、存在しえぬ『アルカディアの使い』はじっと見ていた。

ただ、ひたすらに見ていた。

自分の起こしてしまった現実を、受け止めて……そして、過去へと舞い戻る。

自分の起こしてしまった現実を、受け止める為に。




新しく連載始めました。

詳しいことは活動報告にいろいろと設定とかを書いてます。

とにかく、完結目指して頑張るぞー!!

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