1/2
00
私には父親がいない。
いや、私が生まれてるからには生物学上の父親はいるんだろうけど。
物心ついたときから自分の父親という存在を感じたことがない。
ついでに言えば、祖父母もいない。
こっちは絶縁しているらしい。
親戚の中で私と母と交流があるのは母の姉である美琴さんくらいだ。
でも、私はこの生活に不満なんてない。
だって、ママは私を愛してくれている。
パパの分も、おじいちゃんおばあちゃんの分もママは私を愛してくれているんだ。
私もそんなママが大好き。
本当は、小さい頃に一度だけママに尋ねたことがある。
『みどりのぱぱはどこにいるの?』
台所で料理をしていたママに訊くと、ママはこっちを振り向いて微笑んだ。
今でも覚えている。
昔はわからなかったけれど、あれは悲しみを堪えた微笑みだ。
『美鳥のパパはね、遠くにいるの。今は会えないの』
ごめんね、そう小さく呟いてママは私を抱きしめた。
そしてそのまま頭を撫でてくれた。
それ以来私はパパの話をママにしないようになった。
そんな私ももう高校二年生だ。
そして明日は私の誕生日。
ママは有給をとってお祝いをしてくれるんだって。
楽しみだな。