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作者: 邑楽

この物語では、付き合っていた二人の、彼女の方が死んでしまいます。苦手な人は読まない方がいいかと思われます。




「あ。」


ポキッ、と小さな音をたてて、シャーペンの芯が折れた。残った芯ではとてもではないがまともに使えるとは思えない。そういえば、消しゴムも小さくなってきているな、と京香は思い出した。


「はあ…。」


外には雪が降っており、とても寒いだろうと思われる。できれば外出なんてしたくはないのだが、どのみち後で買いに行かなければならなくなるのであろう。


「仕方がない…」


嫌なことははやめに済ませて後でゆっくりと温まろうと、京香は厚手のコートをはおり、しぶしぶ外へと買い物に出かけていったのであった。





プロローグ





「うー寒い!」


外の寒さは京香の想像をはるかに越えていた。もっと厚着をしてくればよかった、と既に後悔をはじめる京香であったが、今更家に戻るのもなんだと思い、吹きつける雪と風に体を震わせながら近所の文房具店へといつもより少しはやめに歩みを進めるのであった。

雪は一向に止む気配がない。それどころか、ますますひどくなってきているようなのだ。そのせいで視界が悪く、三十センチメートル先さえまともに見えやしない。こんなときにもしも車でもきたらと京香が考えた、丁度その時であった。


「京香!」


聞き慣れた声が、京香の耳に飛び込んできた。その声が誰のものかなど、京香には考える必要もない。その声の主は、京香の恋人である輝であった。


「輝…どうしたの?」

「それはこっちの台詞だ。こんな時間に一人で外ほっつき歩いてんじゃねーよ。」

「なっ!それは輝も同じでしょーが!」

「俺はいいんだよ、男だから。」

そう言って京香の腕を掴み、ぐいっ、と自分の方へと引き寄せると、手袋もせずに寒そうに赤くなっている京香の手をそっと包んだ。


「…手袋くらいして来い。」


少し照れた風に言う輝の優しさが伝わってくる。京香は、輝のそんなところが好きだった。ただ、誰にでも同じように優しいと京香は思っているので、そこが少し妬けるのだけれど。しかし、実際はそうではない。京香の思っているとおり、輝は誰にでも優しい。しかし、その何倍も京香に優しい事を、京香自身が気づいていないだけなのだ。


「ありがと。こうしてると、手袋なんていらないね。すごい、温かいよ。」


そう言ってにっこりと微笑む京香に、輝は少しだけ下を向いて、顔を赤らめたのであった。





そうして輝は京香の手を温めたまま、京香は輝に手を温めてもらいながら、二人はしばらく歩いていた。

京香は目的の文房具店に向かって、輝はどこへ行くかわからないけれど、とりあえず京香と一緒に歩いてゆく。


「そういえば、輝がなんであんな寒いのにあそこにいたか、まだ聞いてないんだけど。」


京香が輝に問う。残念ながら輝は、そんな質問に答えることができなかった。


朝起きた瞬間から、その胸騒ぎは始まっており、最初は気のせいだ、しばらくしたらなくなるだろうとあまり気にとめていなかったのだが、それは時間が経つにつれてひどくなっていった。ざわざわと自分が侵食していく嫌な感じに、やがては自分のなにかを奪われていってしまうのではないだろうかと、輝はそれに嫌悪感さえも感じたのである。

だからこの寒い中、何時間も京香の家の前で待っていたのだ。何故京香の身に災いが降りかかるのではないか、と思ったのかはわからない。ただ、輝にはそれしか思いあたることがなかったのだ。

しかし、輝の胸騒ぎは京香に会った途端、まるで最初から無かったかのように消えてなくなり、この輝の数時間も無駄ではなかったことが証明された。

しかし、そんな輝の安心もつかの間。京香の目的とする文房具店まで数十メートル、再び輝の胸騒ぎが始まった。

それは朝起きてから…いや、生まれてこのかた経験がしたことのないようなひどいものであり、輝はあまりの苦しさに足をとめ、その場にうずくまってしまった。そんな輝に、京香も足をとめて屈みこみ、苦しそうにしている輝の顔を心配そうに覗き込んで声をかけた。


「輝…どうかした?」


心配そうに覗き込んでくる京香を、少しでも安心させよう、と輝は無理矢理に笑顔をつくる。


「いや、どうもない。」


しかし、そんな輝の言葉と笑顔は、京香のたった一言で崩されてしまった。


「嘘。」

「い、いや…」

「嘘。ねえ、どうしたの…?」


心配そうに、眉をひそめて京香は問うが、輝にはどうしても本当のことが答えられなかった。

京香の身になにかがおこりそうで、それが不安で仕方がないなどと言ったら、京香は傷ついてしまうのではないだろうかと輝は思ったのである。

本当は言ってもよかったのかもしれない。言ったほうがよかったのかもしれない。しかし、輝は言わなかった。そのかわりに輝は、絶対に京香を守ってやろうと心に誓ったのであった。


「行こう。」


京香の問いには一切答えず、輝はただ一言そう言って京香の手をひいた。





文房具店へ行った、その帰り道。先刻きと違うのは、歩いている方向と、京香が輝とつないでいない方の手に消しゴムとシャーペンの芯が入った袋を持っているだけであった。


「京香。」


意味もなく名前を呼んでみる。


「ん?」


返事が返ってくる。ただそれだけの事が、輝には嬉しかった。しかし…、


「―――!」


まただ。輝は足をとめる。

また、身体全体にあの嫌な感じがよみがえる。


「輝…やっぱり、おかしいよ。」


再び輝の心配をする京香。その表情は、いつになくきびしいものであった。


「ねえ…」


力なく呟くその表情が、しだいに不安そうなものへと変わってゆく。そうさせているのが自分自身だということに、輝は妙な罪悪感を感じてしまう。しかしその反面、京香の表情を見て、可愛いと思っている自分がいるのも事実だ。輝はそんな自分に苦笑をして、気をひきしめようとぎゅ、とこぶしを握り、勢いよく立ちあがった。


「いたっ!」


京香の痛そうな声。なんと、輝の頭が京香のあごにあたってしまったのだ。痛そうにあごをさする京香に、輝は苦笑をしながら謝る。


「悪い悪い。」


しばらくの間、不満そうに輝を睨んでいた京香であったが、輝がいつもの調子に戻ったのを感じ取ったのであろう、ただなにも言わずに、自分の目の前にある輝の手を強く握りしめた。


パッパー!


丁度、京香が輝の手を握った瞬間であっただろうか。

一台のトラックが耳をつんざくような音を立てて、輝と京香のすぐ傍を通り過ぎていった。


「あー!」


途端、京香の叫び声。

何事かと思い道路を見ると、そこには先刻買った文房具が、袋とともに無残な姿で残っていた。


「折角買ったのに…。」


とりあえず京香に怪我はないようだ。

輝はほっ、と胸をなでおろす。


「また買えばいいだろ。」


朝からの胸騒ぎの原因は、これであったのだろうか。そう考えると、あまりに馬鹿らしくて笑いがこみあげてきた。


「くっくっくっ…。」


急に笑い出した輝に、京香は怪訝そうな顔をする。


「輝…ふざけてる?」

「いや…安心したんだ。」


本当に心から安心した。だから、できた笑顔。

それが、今の輝にはあった。


「安心…。」


京香は、輝に聞こえないよう、小さく呟いた。

ということは、今まで輝はなにかに対して不安を抱いていた、ということになる。その不安の対象とは、いったいなんだったのであろうか。

そして、こんな寒い日に輝はひとりでなにをしていたのだろう。

ふと、京香は気づく。

自分が輝の不安の対象になっていたのであれば、すべて説明がつく、と。


「じゃ、行くか。」

「あ…うん!」


じわじわと広がってくる嫌な感じを振り払うかのように、明るい返事をひとつして、いつの間にか離れてしまっていた手を京香はもう一度強く握りなおす。そして、先刻の文房具店へと、向きをかえるのであった。





そうして二人は京香の家の前で別れた。

京香はそのまま家の中へ、まだ不安をすてきれていないのだろう、輝はしばらく京香の家の前に立っていた。しかし、部屋のひとつにあかりが灯ったことで電気がついて安心したのであろう。くるりと京香の家に背を向けると、ここからはさほど遠くもない自身の家へと帰っていったのである。





でも、これはもう何年も前の話で。

これがただのはじまりにすぎなかったなんて、京香も俺も、まったく思ってなんかいやしなかったんだ――…。





予兆、再び





あれから何年かが経過し、京香と輝は無事、成人を迎えた。いつしか二人は一緒に住むようになり、とくになにかがあったわけではないが、平凡で幸せな生活を送っていた。

二人が一緒にいることができる。

それだけで、二人は満足だったのだから。


「輝ー。今日、早く帰ってこられる?」

「あぁ。…今日はなにかあるのか?」

「ううん、別になにも。」

「そっか、わかった。」


笑いながら、優しく京香の頭をなでる輝。

何故、こんなにもささやかな幸せが奪われてしまわなければならなかったのだろうか。欲を持ち、他のなにかを欲したというわけでもない。もし、輝と京香のどちらかひとりでもそう望んだのなら、まだ自業自得ともいえだであろうに。でも、二人は違う。どちらも、そんなことを望んだりなどしなかった。

だとしたら、これから二人の身に降りかかる惨事は、なんといいあらわせばよいのだろうか。

このうえないほどの、大惨事は。





「ふぅ…。」


洗濯も掃除も済ませたし、使用済みの食器だって洗った。さて、今からなにをしようか。

いつもが忙しいものだから、たまにこうして暇ができると、なんだか少し淋しくなってしまう。

少し大きめの椅子に腰掛けた京香は、そんなことを考えていた。しかし、日ごろの疲れからか、だんだんと意識がまどろんでゆく。そんなまどろんでゆく意識の中で、京香は夢とも現実ともつかぬ、奇妙な感じにつつまれていったのであった。





ここは、どこだろう。

はじめてきたような、それでいてどこか懐かしい。…だけど、この全身にまとわりつくようなねっとりとした嫌な感じはいったいなんなのだろう。

やわらかい闇の中で、京香はひとり佇んでいた。けしてこの闇が嫌なわけではない。むしろ、心地よいくらいの闇だ。それなのに、京香はどこか不安を感じずにはいられなかったのだ。

どうしたらよいのだろう、と京香はあたりを見渡した。ふと、京香の瞳に、今まではなかったと思われるあるものが映った。


「あれは…、ひかり?」


そう、ひかりなのだ。

しろいぼんやりとしたひかりがだんだん大きくなってゆき、京香の見ている前で、まるでスクリーンのように映像を映しだしてゆく。

男女と思われる二人組が仲良く手をつないで、二人で歩くには少しばかり狭い歩道を歩いている。どこかで見たような景色だ。

しだいにはっきりとしてくる映像に、京香はあることに気づく。


あれは、私達…?


そう、スクリーンのようなひかりに映る男女の二人組は、京香と輝だったのだ。

場所に大体の見当はついている。じゃあ、次に考えるのは時だ。これは、いったいいつのことなのだろうか。

ゆっくりと目をとじ、記憶をさかのぼってみると、京香にはひとつだけ思いあたることがあった。

ぱっと目をあけると、より記憶を鮮明にさせるため、聞く人のいない心地よい闇の中で、京香はひとりその日のことを呟き始めた。


「朝起きて…そしたらすごい寒くて、外を見たら雪が降ってた。お湯で顔洗って、歯を磨いて…、アリス…あ、えっと…これは私が飼ってるインコなんだけど…、挨拶して、エサあげて…」


誰に説明するわけでもなく京香はその日のことを語り続ける。言葉を発するごとにより鮮明な情景が心に浮かんでゆくことに京香は満足し、ただ闇に吸い込まれるだけとはわかっていながらも、京香は語り続けた。


「朝ごはん…ってなんだっけ。うーん…ま、いいか。とりあえずなんか食べて、テスト近くてやばいから勉強したの。確か国語だったと思う。でも、すぐにあきちゃったからなんか雑誌読んだりいろいろしてて、そしたらもうお昼の時間になったから…なんかてきとうに食べた。」


人の記憶ほど不確かなものはない。自分の都合のよい風にいつの間にかつくりえられていたりするものだから、たまったものじゃない。特に、これはもう何年も前の話なのだから、これだけ覚えていればたいしたものだといえるであろう。だが、この日のことを京香がこんなにも覚えているということは、それだけ京香にとって印象深い一日のことであったと考えられる。


「すこしゴロゴロして、そしたらまた勉強をしたの。今度はすっかり集中しちゃって、気がついたら五時だった。あまりにも眠くて、もう集中できそうになかったから、おとなしく眠った。それで起きたら7時くらいだったかな…。やばいと思って、急いで夕飯食べて勉強したら、九時くらいに、シャーペンの芯がきれちゃって、消しゴムも買いに行かなきゃって思ったら、輝にあったの。」


ふと京香が顔をあげると、スクリーンの中の二人は、あの輝に異変が起こった辺りにさしかかっていた。


「で、あんな寒い夜遅くになにしてるのかなって思ったんだけど、結局輝は教えてくれなくて、うまくはぐらかされちゃった。…とりあえず手を温めてもらいながら、今ちょうどスクリーンみたいなのに映ってる場所辺りで輝がおかしくなって…。って、あれ?」


スクリーンのようなひかりの中の輝は、京香の記憶のようにおかしくなどなったりしなかった。ただ、先刻と同じように、何事もなく京香と手をつなぎ、歩いている。

自分の記憶が間違っていたのか。それとも、自分が考えている日とはまた、違う日であるのか。

京香は考えてみる。その結果、京香が出した答えはどちらも違う、というものであった。どちらにしても明確な理由や証拠などはまったくない。京香は、自分の勘を信じたのだ。

間違っている筈がない、と京香はしっかりと自分に言い聞かせると、もう一度スクリーンをしっかと見据えた。

相変わらず二人は手をつなぎ、歩いている。しばらく見ていると二人は京香の家の近所である文房具店へ入っていた。

そして場面は変わり、文房具店の中。

輝になにかを買う様子は見られず、ただ静かに京香の背中へと視線をそそいでいる。京香がレジで買い物を済ませると、二人は店を後にした。

場面は再び外へと戻り、京香の記憶どうりに二人は手をつなぎ、京香自身はそのつないでいないほうの手に先刻買ったものが入っている袋を提げている。

やっぱりこれはあの日の映像だ、と京香は確信した。

だとしたら何故、輝はおかしくならないのだろうか。

京香は訝しむが、依然としてひかりはスクリーンのように、あの時であり、あの時でない映像を映し続けている。そして、その映像の中の二人は、再びあの地点へとやってきた。今度もまた、輝にはなんの異常もおこらないまま、平穏に過ぎ去ってゆくのだろうか。

京香は、何故かいつもよりはやくうっている心臓を手でつよくおさえると、すべての集中力を映像へと向けた。

映像の中の二人が一歩踏み出すごとに、京香の心臓はうつはやさを増してゆく。

絶対にここだ、という正確な位置はわからない。しかし、確実に映像の中の二人は輝に異変が起こる筈であったその場所を、何事もなく通過していったのだ。

たかが夢の中の映像ではないか。

そういう風にも考えられるかもしれない。

輝に異変が起こらなかったからなんなのだ。

確かに、そうであろう。

しかし、あの輝の異変があったからこそ、今の京香たちがあるということを忘れてはならないと考えると、とてつもなく恐ろしいのだ。

もし輝に異変が起こらなかったら、私たちの未来は、また少し違ったものになっていたのであろうか。

これからなにがおこるのかを見るのが恐ろしくてたまらない。だけど、何故かその映像はとても京香の興味をそそるのだ。自分にあったかもしれない、今とは違うの未来はなんなのかと。

それに対する興味は、恐ろしいと思う気持ちよりもつよく、スクリーンの方へと視線を向けてしまう自分の身体に、京香は逆らうことができなかった。


輝に異変が起こる筈の地点から、さらに進んだ辺りのところで、その事件は起きた。

正面からものすごい勢いでやってきたトラックが、あっという間に京香の目の前まで来た。手が強くひかれる感触。耳をつんざくようなクラクションの音。明るすぎるライトに真っ白になる目の前――。

それを最後に、京香の意識はぷつりと途切れた。





目の前がぼやける。あれから、どれだけの時間が経ったのかはわからないけれど、未だに目の前が真っ白だ。これは、いつになったらなおるのだろう。

はやくなおってくれないものか、と京香は何度も何度も瞬きをするが、それはまったくもって意味を成さなかった。まあそれもあたりまえだろう。今、京香が見ているものは真っ白な天井であり、いくら瞬きをしようはが、その景色が変わる筈がない。


「痛…。」


首が痛い、と京香は身体の向きをかえる。すると、突然飛び込んできたものに、京香は自分の目がおかしくなんからっていないことを知らされた。

じゃあ、今まで見てたのは天井か…。

窓の外には、いつのまにか降っていた雪による辺り一面の銀世界が広がっていた。

ゆっくりと身体を起こすと、こんなにも寒い日だというのにもかかわらず、じっとりとした汗で服が身体に張り付いていて、気持ちが悪い。

嫌な夢でも見たのだろう、と京香は汗ですっかり湿ってしまった服を脱ぎながら考えた。

なにかの夢を見たということは覚えているのだが、どうにもその夢が思い出せない。

しかし、その夢はとても不吉な夢であった気がする。思い出そうとすると身体の震えが自然と止まらなくなり、心臓のうつはやさがぐんと増すのだ。

なにがなんだかわからなくて、とりあえず輝に会いたかった。


「輝…。」


京香は、汗が冷えてすっかり冷たくなってしまった自身をつよくつよく抱きしめると、悲痛な叫びをもらした。


「はやく…、はやく帰ってきてよ、輝っ…」





なんの前触れも無く、京香はいきなり目を開いた。身じろぎ一つせずにただ目を開き、ぱち、ぱちと何度か瞬きをする。今まで眠っていたとはとても思えない目の覚ました方だった。


「うーん…」


起き上がって、大きく一つのびをする。

まだ外は暗く、音からして雨が降っているようだ。

なにか、とてつもなく嫌な夢をみたような気がする。…いや、違う。正確には、とてつもなく嫌な夢をみた夢をみたんだ。


しかし、どうしても京香にはその「夢の中でみたとてつもなく嫌な夢」が思い出せない。

思い出せないくらいだったら、そう大した夢ではなかったのだろう。

きっとそうだ、と京香は半ば強制的に自分に思い込ませた。

なんだかんだといっても、本当はあの夢を思い出してしまうのが、京香にはたまらなく恐かったのだ。

しかし、この時京香がこの夢を思い出さなかったのは幸いだった。

もしこの時、京香が夢を思い出してしまっていたら、きっと気づいてしまっていたであろうから。

いくらそのことがおきる瞬間ときがかわろうとも、それからは逃れることができないということを。

たとえそれが、どんな運命だったとしても――…。





別れ





それは、突然のことだった。

関係などまったくないくせに、蝿のようにむらがってくる野次馬が鬱陶しい。野次馬があんなに鬱陶しいものだったなんて、と輝はあらためて思いしらされた。

なにやら必死に叫んでいる救急隊員も五月蝿くてしかたがない。自分は呼んだおぼえなどないのに、何故来ているのだろうか。

…ああ、そうか。きっと、どこかの優しくて鬱陶しいほどにおっせかいな偽善者さんが呼んでくださったのだろう。どうでもいいからほうっておいてくれ。

それに、あのパトカーと救急車は何故あんなにも五月蝿いのだろうか。「なにか」が起こったのだと知らせ、野次馬を群がらせるだけなのに。ああ、もしかしたらそれが本当の目的なのかもしれない。だとすると、俺たちはとんだ見せ物だ。…なあ、京香?

なにもかもが五月蝿くて。なにもかもが鬱陶しくて。

ただひとりになりたい。

たったそれだけのことを、輝は薄れゆく意識の中でずっと願っていた。





まずはじめに目にとびこんできたのは、真っ白な「なにか」だった。しばらくすると、だんだん目のぼやけもとれてきて、それがどこかの天井であるということがわかった。

身体のあちこちがぎしぎしと悲鳴をあげている。いったいなにがあったのだろうか。

輝は本当にそのことを知らないわけではなかった。ただ、知りたくなかっただけなのである。

だから、知っているのに知らないふりをして。覚えているのに、うっかり忘れてしまったふりをして。

輝は必死に自分を誤魔化そうとするのだが、あの時の記憶は薄れるどころか、あの時のままの姿で、輝の中に残っていた。


「あ、起きられたんですね。あの、古屋さんのお知り合いの方ですよね…?」


あきらかに営業用と思われる笑顔をつくって、看護婦さんが輝に話しかける。あの笑顔の裏ではどんなことを考えているのだろうかと輝は思ったが、そこは自分の立ち入るべきところではない、と考えるのをやめた。


「はい、そうです。」


看護婦さんの笑みが妙に強張っていることに、輝は妙に不安を感じる。


「ついてきて、下さい。」


そして、とうとう看護婦さんの顔から、完全に笑みが消えた。





輝は、いったいなにがあったのかということを、京香の病室に着くまでに、再び顔に笑みがもどった看護婦さんに話したもらった。そのおかげで、輝は自分の、そして京香の身になにがあったのかをようやく理解したのであった。

ところが、この看護婦さん。今の京香の状態といういちばん肝心なところで口をつぐみ、話してくれない。

あまり問い詰めるのも(こく)かと思い、そんなに病室までかかるとも思えないので、輝はなにも言わずに看護婦さんの後へとついく。

ある一室の前で、看護婦さんは足を止めた。どうやら、ここが京香の病室らしい。

看護婦さんは小さく「ここです」と呟くと、やけに神妙そうな顔をしてゆっくりと扉を開けた。

音も何も聞こえず、一瞬時間が止まったように思えた。


「京香…。」


輝が思わず声をもらす。

この部屋には、見覚えがあった。確か、昔死んでしまった祖父に別れを告げる時に、この部屋に入ったのだ。当然、その時祖父に意識はなかったのだが。

だけど、今度は違うかもしれない。京香は、生きているかもしれない。

そんな儚い希望を胸に、輝は京香のいる部屋へと一歩踏みだした。

入った瞬間、そんな輝の儚い希望はやすやすと打ち砕かれてしまった。

真っ白なシーツ。そして、同様に白い、京香の顔にかけられた布。かけられたシーツの下にある、通常ではありえない方向に曲がってしまった四肢。しかし、布の下にある顔は、まるで皮肉であるかのように、傷一つなく綺麗なままであった。

あの事故で顔に傷がついていないということは、奇跡に近い、不幸中の幸いだったと輝は聞かされたが、そんな些細な幸せなど、輝にはいらなかった。

いっそこの目など見えなくなってしまえばよい。

いっそこの耳など聞こえなくなってしまえばよい。

輝はすべてのことから 逃げ出したかった。今、この現実からも、すべて。

輝は目を瞑り、耳をふさいで、肉体だけになってしまった京香のいる部屋から飛び出した。どんなことををしても、この現実から逃げることなどできない。そんなことは輝自身もわかっていたのだが、どうしてもそのままではいられなかったのだ。

いや、本当に現実から逃げ出す方法はひとつだけある。それは、死ぬことだ。今の、京香のように。


「京香…」


綺麗なままに残ったあの顔。それが、もう二度と表情をつくることがかなわないのだと考えると、輝はひどく罪悪感に苛まれてしまう。

走るうちにだんだんと火照ってゆく身体とは裏腹に、輝の頭は冷えてゆき、ようやく状況をまともに理解することができるようになった。

あの、京香の顔を思い出すたびに、輝の胸は、つよくつよくしめつけられる。

すぐ傍に――、隣にいたのに、なにもできなかった。

その事実が、輝をいちばん苦しめることとなった。

もしその場にいなければ、何故自分はあの場にいなかったのだろう、と悔やむことになるであろう。しかし、その場にいたのになにもできなかった、ということが輝にとっては悔しくて悔しくてたまらないのだ。

いつだっただろうか。俺は、確かに京香を守ると誓ったんだ。なのに、なんなんだこのざまは。情けないったらありゃあしない。たった一人の愛する人を守ることもできずに、ただただ悲しみに明け暮れて、のうのうと生きている。

ああ、なんて情けない…。


パッパ――!


突然のクラクションに、輝が必死で忘れようとしていた記憶がすべてよみがえってしまった。





あの事故のクラクションと、現実で鳴らされたクラクションとが重なる。


パッパ――!


その日は、京香と輝は手をつないで歩いていた。

そのクラクションが鳴らされたのは、あの文房具店から数十mの場所であった。

ものすごい風を感じたと思った瞬間、京香の身体がつよく引っ張られた。意地でも手を放すまい、と輝は京香の手をいっそうつよく握り締める。そのために輝までもがひっぱられ、一瞬身体が浮いたかと思うと、激しく地面に叩きつけられた。

ガシャァン、と大きな音がして、辺りは今までのことがすべて嘘だったかのようにひっそりとしている。

手に感触があることを確かめ、輝は恐る恐る目をあけ、京香の無事を確かめようとした。


「おい、京香。大丈夫か?」


返事はない。

前方の電柱にぶつかったトラックの前はぺしゃんこにつぶれていた。あんなのに巻き込まれたら、ひとたまりもないであろう。

京香の手は確かに輝と繋がっていたが、その身体は今輝が繋いでいる手とは遠くはなれ、路上に無残な姿となって転がっていた。


「京香…?」


あまりにも急なことすぎて状況が理解できず、ただただ輝は京香の身体から離れてしまった手を握りしめているだけであった。

輝がしばらくそのままでいると、事故の音を聞きつけてか、野次馬やらなんやらが集まってきて五月蝿くなり、気がついたらベッドの上にいた。


「京香は、死んだ…。あのトラックに轢かれて死んでいった…。」


そうだ、京香は俺のすぐ横で死んでいったんだ。ただ一本の細く頼りない腕を残して。

その、なにもかもが鮮明な記憶として、輝の頭に残っている。

京香を轢いたトラックのナンバー。

そのトラックがぶつかった電柱に張ってあった張り紙。

京香の、細くて頼りのない腕。

透きとおった、冷たい空気。

雲ひとつない空には、数多くの星がまたたいていた。

ぼんやりとした月明かりと電灯に照らされて、白く浮かびあがる無残な京香の身体。

そして、苦しみというものをまったく知らないかのようなやすらかな死顔。

京香の身体から溢れ出て、道路を濡らす生暖かい血。それは、輝が今まで見たどんなものよりも美しかった。

すべてのことを思い出すと、急に京香に会いたくなった。会うといっても、こちらが一方的に見るだけしかできない。それでも、輝は京香に会いたかった。

病院の方へと走りだそうとする輝の背に、ある人の声がかかった。


「輝くん…。」


京香の母、静江であった。しかし、彼女からはいつものような活気は感じられず、まるで別人のようにも見える。

ああ、なんで京香が死ななければいけなかったんだ。

静江を見て、再びその思いと罪悪感が輝を支配しはじめた。静江は、そんな輝の気持ちを察したらしく、静かに涙を流しながら、いつのまにか血が出るほどにつよく握り締めていた拳に手をそっとおいて囁いた。その手はどんなものよりも暖かく、その囁きはどんな音よりも耳に心地よかった。


「あなたは悪くない。だから、そんなにひとりですべてを抱え込まないで…」


今までの感情が、せきをきって飛び出した。京香がいなくなってから、はじめて涙が輝の頬を伝い、このとめどなく流れてゆく涙は、まるでとどまることを知らないかのようだった。

誰にもいうことができなかったひどい罪悪感。

自分が殺したも同然なのに、静江は輝を責めることなく、ただただ輝の背中をさすっていた。

涙とともにすべてを吐き出してしまった輝は、ただ静江の腕の中で子供のように泣きじゃくっていた。





いくらすべてを吐き出してしまっても、さすがに一日で立ち直ることはできない。

静江と話をしなければならないと、頭ではわかっているのだが、身体がそれを拒否しているのだ。

その後も何日かただ身体だけが生きているような生活をすごしていた輝であったが、ある日、不思議な夢をみた。

それが、これからの輝の人生を左右する、大事なカギとなるのである。









重い身体を脱ぎ捨てて、輝は京香のいるところまで、風のように軽やかに走った。

どこまでも走っていけそうで、いつまでも走っていれそうで。

しかし、輝はどんなに走っても京香に会うことができなかった。

こんな場所に来たのは初めてで、京香がどこにいるかだなんてわからないけれど、なぜか京香はこっち側にいる、と感じられるのだ。

まるでなにかに引き寄せられるように走っていると、まったく疲れることのないと思っていた足に異変がおきた。

まるで足がなにかにひっぱられるかのように、重く、その場から動かなくなってしまったのだ。

はっとして輝は足元を見るが、そこに、輝の足をおさえているようなものはまったく見当たらない。

しかし、いつのまにか輝の足元には綺麗な花がたくさん咲いており、その前方には、美しく澄んだ水が流れている、とてつもなく幅の広い川が流れていた。

しかし、その澄んだ水を通してその川底が見えるわけではない。その奥には、ただ真っ暗な闇が待ち受けているだけであり、それが輝にはとてつもなく恐ろしいと思えた。

身の毛もよだつようなその恐ろしさに、輝はその川から顔をあげ、その向こう岸に目をやった。

すると、輝の目にあるひとりのよく見慣れた人が映った。


「京香…?」


見間違えるはずもない。あれは、絶対に京香だ。


「京香…!」


ようやく会えたと顔をほころばせ、嬉々として叫ぶ輝だが、京香の表情は哀しみにあふれていた。よく見れば、その瞳からは涙もながれている。

なぜ、泣いているのだろう。あきらにはどうしてもその理由が知りたくなり、まるで鉛のように重い足を必死に前に出そうとした。

ところが、輝の足は依然として動かないままであった。


「なんで…なんでなんだよ…」


自分はただ京香の傍にいたいだけなのに、と輝は嘆く。

だが、その望みはけして叶うことはなかった。


「…いで。」


京香の声がかすかに聞こえた。


「なんだ、京香。ちょっと待ってろ、すぐそっちにいってや…」


京香を励まそうとする輝の声は、京香自信の声によって遮られた。


「こないで!輝はまだこっちにきちゃいけないのよ…!だから、だから…」


その後は、もうくぐもってしまってなにを言っているかわからなかった。

輝はただ呆然としてその場に立ちすくし、京香の言葉の意味を考えていた。


「まだ 、こちらにきてはいけない…。」


はっと輝は気がついた。

京香は死んで、まわりは一面の花畑。そして、この二人を遮る恐ろしく大きく長い川。

「京香…。」


ここがどこだかわかってしまった輝は、もうなにも言うことができなかった。

京香はまだ自分に生きていてほしいのだ。いくら一緒にいられるからといって、死んでほしくなんかないのだ。

ひとすじの涙が輝の頬を伝う。

いつのまにか、先刻までは綺麗な花畑をつくっていた花がすべて枯れていた。川の中を覗いてみると、その底にはたくさんの骨が転がっている。

なによりも、誰よりも大切な人。

そんな人が、自分をなによりも大切に思ってくれている。

輝には、京香の思いがひしひしと伝わってきた。

まだ、死んではいけない。いや、死ねない。まだ、自分にはやるべきことが残されている。

京香が死んでから、輝のなかにはじめて前向きな考えがうまれた。

そして、輝はくるりと京香に背を向けると、つよく前向きな考えを胸に、死の世界から走り遠ざかっていったのであった。





目覚めた輝の頬は涙でぬれていた。

もう輝に迷いなどなかった。

自分はなにを今まで迷っていたのだろうかと呆れてしまうくらいにつよい信念が今の輝にはある。

京香の思いを無駄にしてはいけない。

自分は、誰よりも京香のことを思って、つよく生きていかなければいけない。

そう、この命の炎が燃え尽きるまで、永遠に。

挫折などしてはいけない。そんな弱い人間であってはいけない。

もう、この命は自分だけのものではないのだから。古屋京香と鍵本輝、その二つの命を背負って自分は生きているのだ。

ようやく支度を終えた輝は、今までにない生き生きとした表情で家をとびだした。





その輝の変化に静江は最初はとても驚いた様子をみせたが、だんだんと輝と話していくうちに、その顔には京香がいた時の笑顔が戻っていた。


「俺は、京香と生きていきます。」


ただ、輝がそう言ったときにだけ、静江は少しだけ顔をしかめた。


「その気持ちは私にとってはすごく嬉しい。もちろん京香も嬉しいだろうけど、本当に京香が心から望むことはそれではないと思うの。京香は、あなたに自分の影なんて背負わないで、自由に生きることを望んでいると思うのよ。」

「…はい。」


話が終わった輝は、静江に案内されて輝は京香の部屋へと入った。

今まで京香が恥ずかしがって、なかなかいれてくれなかったこの部屋。そこは、実に京香らしい空間であった。

そして、そのなかに自分と撮った写真や、自分が贈ったものがあることに輝は気づき、どうしようもなく嬉しくなってしまう。

まだ部屋に残る京香の匂いに、輝はこらえ切れず涙を流す。京香がそれを望んでいないことなど輝には百も承知だったが、それでもこらえることができなかったのだ。

京香、おまえは俺が涙を流すことを望みはしないだろう。だけど…、今だけは許してくれ。今だけは…。

床に座り込んでただ涙を流す輝を静江はしばらく複雑な表情で見ていたが、輝の気持ちを考えてか、そっと京香の部屋を出て行った。





さよなら





誰よりもつよく愛し続けていた人。

もう生きた姿を目にすることは二度とない。だからこそ、輝は京香との思い出を風化させたくなんかなかった。そして、京香をまだ知らない人々に、京香という素晴らしい人がいたことを知らせてあげたかったのだ。

輝はさんざん考えに考え抜いて、とうとう京香のいなくなった日から三年もが経過してしまった。

そして、方法を思いついたその日、突然京香の家を訪れた輝は静江に、その気持ちと今自分が実行しようとしていることを正直に伝えた。

そんなことを言っても、静江はけして喜ばないということを、そして思い出したくない辛い過去を思い出させてしまい、哀しませてしまうだろうことも輝は知っている。そして、その日が京香の誕生日であったことも。


「京香はいなくてしまった。だからこそ、京香がいたという紛れもない事実を風化させてしまいたくないんです。」


はじめは反対していた静江だったが、その輝の言葉を聞いて、決心したようだった。

「ありがとう…。あなたみたいに思ってくれている人がいて、京香は本当に幸せね。」


それは、自分と同じ人生を歩ませたくなかった静江の、本当に心から出た言葉であった。





京香が生まれてからすぐ、父親の一哉は二人をおいてどこかへ行ってしまった。

静江をもう妻でないといったまではまだよかったが、京香までと親子の縁をきると一哉はいいきったのだ。

幸い、京香はまだ幼くて意味などわからない。ただ、そんな険悪なムードに、ただひたすら泣いていたそうだ。誰も泣き止ませようとあやしてくれる人もおらず、ただひとりで。

だから、京香はその父親のことをまったく覚えていなかったらしい。

いや、京香が気づかないところで、そのことを自然と思い出さないようにしていたのかもしれない。


「もしできあがったら、いちばん最初に見せます。」


それには絶対に京香の父親のことは書かないでおこうと輝は心に決めた。

いくらそのことを書く許可をえたとしても、本当は静江は書かないでいてほしいだろうと思ったから。


「ありがとう…輝くん、本当にありがとう。」


静江には、京香には輝のような人がいることが、そして、もし京香が生きていたとしても自分と同じ道を歩まないであろうということが、本当に嬉しかったのであろう。

瞳から涙はこぼれ落ちていても、その顔は本当に嬉しそうであった。





その日から、輝は自分の中に残る京香との思い出を、そして京香を書き続けた。

書きあがり、誤字脱字などのチェックがすべて済み、出版されたのは、もしあのまま生きていたら二十二歳となっていた京香の誕生日であった。

そう、輝があの日からずっと書き続けていたもの、それは京香を主人公としたノンフィクションの話であった。

自費出版というかたちでだされたその十五冊は、なんの注目も集めることはなく終わってしまった。しかし、たとえどんなに人気が出たとしても、輝はそれ以上ださなかったであろう。

この本は、京香の生きた年の分だけ出されたのだ。

そして、今もどこかにあるかもしれない。

誰かの家や本屋、そして、あなたの心のどこか深いところに…。





エピローグ





なによりも、誰よりも大切な人。

その人はずっと心の中にいて、自分を思ってくれている。

自分よりも、だけど、その人にとらわれることなく、胸を張って前進してゆこう。

ひとりでは進めないけれど、ずっと二人で同じ道を歩むこともできないから。





この本に輝は題名をつけなかった。

それは、この本を読み、京香のことを知った人たちに題名をつけてもらうことが望んだ輝なりの考えであったのではないだろうか。






この本に題名などない。

だから、どんな題名をつけようが、それはけして間違いではないのである。

あなたがそう思うならきっとそう。

あなたがどんな京香を思い描こうが、それはあなたにとっては間違いではないのである。

しかし、その言葉を口にしたとたん、あなたの題名、あなたの京香はとたんに間違ったものになってしまう。

だれにも言ってはいけない。

それは、あなただけの物語なのだから。



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