表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/18

方向音痴少女の入浴

「どうして、一緒に入るかな?」

「広いんだから良いだろう? ケチケチすんな」

「だからって浴槽に三人で入ることはないと思う」

「「………………」」


 私がお風呂に入ろうとしたら、何故か先に柊さんと、柊さんに引っ張ってこられたであろう華ちゃんがいた。流石に修くんはいなかったけど。

 まあ、結局流れで一緒に入ることになり、順に体を洗ったのは良いけど、その後、何故か三人一緒に浴槽に入った。


(いくら広いって言ってもね?限度はあるんだよ)

「三人は、狭い」


 全く以て華ちゃんの言うとおり。


「だいたい、柊さんは考えが単純なんだよ……普通に考えれば三人は狭いこと位分かるじゃん」

「ハッ。学校にもまともに辿り着けないお子ちゃまに言われたくないね」

「それはすいませんね? なにぶん、そちらより少しばかり子供な物で」

「ホントに子供だな? 出るとこは出てないし」

「なによ!」

「なんだ!」

「二人とも、わたしを挟んで怒鳴らないで。うるさい」

「「あ、すいません」」


 立ち上がってすぐ華ちゃんに言われて、私と柊さんはゆっくりと、また湯船につかった。学校でもそうだったけど、華ちゃんってハッキリスッパリ言うから、反論の余地がないんだよね。と、考えていると視線を感じ、見ると柊さん私を睨んでいた。

 その目は、お前の所為で怒られただろ、と言っており、その目にお互い様でしょ、と返すと先に吹っかけてきたのはお前だろ、と返ってきたから、また、乗ったのはそっち、と返す。


「(て、なんでこんな目で会話してるんだ私たちは……)あ、華ちゃん、私たちのクラスの先生ってどんな人?」


 職員室に行った時も離したのは教頭先生だけだったから、担任どころか他の先生すら分からないんだけど。


「黒いスーツを着た女の人。自己紹介で、友達がいないから仲良くしてください、と言っていた」

(……どうなんだろう、それは。先生として、というかそんなことを自己紹介で言うのは)

「貴女と千同くんがいつまで経ってもこないから、何かあったのかと終始心配していて、最後は半泣きだった」

「うん、来週はまず謝りに行こう」


 修くんに引っ張って貰って。


「全く、なにやってんだかな?」

「そういえば、柊さんの担任はどんな人なの?」


 挑発っぽいことを言われたけど、乗るとまた華ちゃんに怒られるから話しを変えた。華ちゃんがいない時ならいつでも受けて立つけど。


「ん? まあ、普通の奴なんじゃないか?」

「知らないの?」

「興味もないからな…………それに、教師だろうと何だろうとあたしに近づく奴なんて、物好きはいないよ」

「そうかな?」


 確かに言い合ってばかりだけど、この人は一緒にいても嫌な気分になる人じゃない。出会いはあんなだったけど……うん、それはおいておこう。思い出すと少しむかつくから。


「私は柊さん、別に嫌いじゃないけど?」


 気を遣う必要がないし、華ちゃんのお姉さんで先輩ということしか知らないけど、なんかそんなのどうでも良いとも思うし。


「あたしのことを知ったら、すぐに嫌いになるさ」

「ならないよ」

「どうして言い切れる?」

「勘」


 なんだよそれ、と柊さんは吐き捨てる様に言って立ち上がった。続いて私と華ちゃんも立ち上がる。蓋をして、脱衣所でまた少し話しながら、体を拭いてパジャマを着る。柊さんは私のパジャマを着て貰って、華ちゃんは母さんの服を着て貰った。

 脱衣所から出ると、そこではモモちゃんが座って待っていた。私を見て、すぐさま頭に飛び乗る。まさか一足飛びとは……流石猫。でも、すぐに降りた。


「にゃ~」

「濡れているから」

「あ、成る程」


 納得して、抱きかかえると、すっぽりと腕に収まった。リビングに入ると、母さんと修くんが楽しそうにおしゃべりをしていた。


「母さん、上がったよ?」

「あ、ええ。修輔くん、先に入る?」

「いえ、オレは最後で良いッス」

「そう? じゃ、先に頂くわね?」

「はい」


 それから、母さんはリビングを出て行った。テーブルに座り、何を話していたのか聞くと、私の小さい時の話しなんかを聞いていたらしい。そんなの聞いても、なんの得にもならないと思うけど。


「中学ん時に、二駅離れた隣街まで行ったんだって?」

「そうなんだよね……晴ちゃんがいたから良かったけど、一時はどうなるかと思ったよ」

「ある意味すげえな。あ、そういやさっき、お袋さんにこの髪が地毛かどうか聞かれたんだけど」


 急に話しを変えて、修くんはそう言った。多分、準備をしていた時だろう。何か母さんが修くんに聞いていたし。


「あ、それ私も気になってた。地毛なの?」


 修くんは頷いた。


「オレの一家は、どういう訳か親父もお袋も白髪なんだよな」


 家とは反対だ。


「最初は、染めてんのかと思ったぞ?」

「その所為で、小中は面倒なことが結構あったんだよ。だから、喧嘩も少しくらいならできるが、人を殴るってのは余りいい気分じゃねえな」

「それは至って普通の感情」

「…………だな。なあ、トランプかなんかねえのか? ずっとおしゃべりってのは、疲れるんだが」

「私はそれでも良いけど」


 別に色々話すのは苦じゃないし。まあ、お友達のリクエストには答えましょう。

 ちょっと待ってて、と言って、私はトランプを取りに自室に向かった。流石に家の中では迷子にならないから、数分でリビングに戻ってくることができた。


「なんだよ、また迷うかと思ってたのに」

「ご期待添えなくてすいませんね」

「全くだ」

「まあ、来週からは、絶対迷うからもし遭遇したら案内してくださいね~」

「会わないことを祈るよ」


 それからトランプをして、華ちゃんが無双した。


「こいつにカードゲームとか、させたら絶対に勝つんだよ」


 華ちゃんの意外な一面を知った瞬間だった。



 その後、上がった母さんと入れ替わりで修くんがお風呂に入り、上がって来た所で五人でトランプをした。うん、まあ…………強いね、華ちゃん。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ