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方向音痴少女の下校

「どうして付いてくるの?」

「暇だから」


 私たちが昇降口で待っていたモモちゃんと一緒に校門から出ると、何故か私の五百円の内四百円を勝手に使った人が柱に寄りかかっていた。その時にリボンが見えて、とりあえず先輩と言うことは分かったけど、敬語は使わないことにした。理由は使いたくないから。


「おい、百合河、そいつに気を取られて手を離すなよ?」

「あ、うん」

「そういや、お前ら、教室戻る時もそんな感じだったな? なんだ、つきあってるのか?」

「違えよ。こいつ、目を離すとすぐにあらぬ方向に行くんだ……昇降口が目の前にあるのに、校門の方に行ったりもしてたからな」

「修くんだって、日付勘違いしてたでしょ?」


 そういうと、修くんは少し言葉に詰まって、結局


「うっせ」


としか言わなかった。

 歩いているのは商店街で、何度か朝のおじさんやおばさんに声を掛けられて、何分か話したりしていた。話している間くらい大丈夫と思うけど、修くんはその間も手を離さず、そのことに付いて色々聞かれたりした。


「菊ちゃんのいい人かい?」


 私が違いますよ、と言おうとすると


「そうなんですよ。学校の中でも手を繋いでて、見せつけてくるんですよ?」


と、えっと、名前の知らない先輩が言った。


「違う。単に彼女が方向音痴だからそれを防止しているだけ」


 でも、それを華ちゃんが短くけど簡潔に否定した。


「なんだい、菊ちゃんにもやっと春が来たかと思ったんだけどねぇ……あ、そういえば、晴ちゃんから何か連絡はあったかい?」

「いえ、まだ何も」

「そうかい…………ま、気を付けて帰りなよ?」

「はい」


 話は終わったので、私たちは手を振っておばさんと別れた。

 そして、また歩いている途中後ろにいる先輩が、さっきの晴ちゃんて誰のことだ、と聞いてきた。


「わたしも気になる」

「にゃ~」


 モモちゃんも気になるのか、単に鳴いただけなのか。修くんは何も言わず手を引いている。


「私の幼馴染み。中学生の時は近くに住んでたんだけど、卒業したあと、なんか、特訓だー、とか言ってジャージでどこかに走って行っちゃったの」

「何も持たずにか?」

「いくら何でもそれは無いと思うぞ?」

「それが…………ホントにジャージを着てただけで、財布とかを持ってる気配も無かったんだよね」

「「馬鹿だろ」」


 修くんと先輩の声がハモった。


「あ、ちゃんて付いてるから分かると思うけど、女の子だよ?」

「「は!?」」

「あの人がそう呼んでいるだけだと思った」


 勢いよく振り返った修くんと先輩の驚きの声。それと華ちゃんの声。なんか賑やかだな~、と思った。

 モモちゃんは偶に舞っている桜の花びらにパンチをしたりしているのか、時々ニャッ!ニャッ!という鳴き声が聞こえる。


「昔から元気な子なんだよね……思い立ったら吉日をそのまま体現しているっていうか、まあ色々巻き込まれたりもしてたけど。後、陸上の大会を総なめしたりとか」


 私が知ってる限りでも、晴ちゃんは風邪を引いたりしたことが無いし、小中の九年間無遅刻無欠席だった。高校は、色んな所から推薦の話が来ていたみたいだけど、それを全部蹴って水蓮高校を受験した。

 結果は、合格だったけど、通う前にどこかに行っちゃった。


「まあ、今もどこかで元気にしてると思うよ?」


 というか、元気な姿しか知らない。

 唯一心配な点は、彼女が寂しがり屋なことなんだけど、とりあえず何かが近くにあればそれで紛らわすことができるから、大丈夫だとは思う。


「あ、そうだ。あたしの名前は海野柊うみのひいらぎ。華はあたしの妹だ」

「「………………は!?」」


 今度は、私と修くんが驚いた。

 だって、似てる所が全然無いし、と思っていると、先輩が話し始めた。


「やっぱり聞いてなかったんだな。まあ、学校で会っても声すら掛けてこないから、無理もないが。それはそうと、学食で見た時と出てきた時は意外だったよ。華が他の奴らと一緒にいる所を、あたしは見たことが無かったからな」


 そう言って、華ちゃんの頭にポンと手を置く先輩。そのまま、少し乱暴に撫でられて、けどどこか嬉しそうな顔をしている華ちゃん。この光景を見ていると、確かに二人は姉妹だってことが分かる。


「お前達、今日が初対面だろ? なのにこいつが懐くなんてのは、相当珍しいぞ? まあ、その猫に興味が沸いたんだと思うが」


 私の頭に乗っているモモちゃんを見ながら、先輩は言って、隣では華ちゃんも、モモちゃんを見ていた。

 それから先輩はスカートのポケットに手を突っ込んで、何かを取り出し私に投げてきた。反射的にそれを取り、見ると百円だった。


「さっきは、悪かったな。それは返す」

「……いいよ、別に」

「それから、敬語を使え」

「それだけは断る」

 

 私は笑顔で拒否した。


「ああ、オレもあんたには敬語は使わいんで、あしからず」

「たく、かわいげのない奴らだな」

「菊は可愛い」

「え? 何かいった?」

「なにも」


 華ちゃんがボソ、と何か言って聞き返すとそう返ってきたから、私はまた前を向いて修くんに手を引かれながら歩いた。

 それから、家までの道なりを説明しながら歩いたけど、先輩が私の道案内で大丈夫なのかと言ったので、修くんの携帯を借りて家に連絡を入れることにした。

 電話に出た母さんに、事情を話そうとすると迷ったことは分かっていたみたいで、道を説明してくれた。それから、電話を修くんに替わると、母さんは少し驚いたのか、その声が離れていても聞こえてきた。

 母さんの言う道順を四人と一匹で進んでいき、十分後、無事家に到着した。


「え? いえ、そんな。あ、はい…………はい、分かりました」


 修くんが何かを母さんと話していて、最初は遠慮していたみたいだけど、最後は頷いて電話を切った。


「どうかしたか?」

「お前のお袋さんが、折角だから寄って行けってさ。いいのか?」

「ん? かまわないけど?」


 別に何がある訳でもないし。

 こうして、三人は母さんに招待され、家に寄ることになった。

 とりあえず、無事に帰ることができて良かった。


(明日からは携帯を忘れないようにしないと)



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