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方向音痴少女の夏祭り

 

 修くんに電話をして、今いる場所を伝えると、「そこで待ってろ」と言われたので、暫く待つことにした。近くにあったたこ焼き屋さんでたこ焼きを買って、はふはふしながら食べていると、前を昼間見た人、つまり水色ツンツンさんが通り掛かった。少しなら大丈夫かな、と思い、その後をたこ焼きを食べながらついて行き、焼きそば屋さんに着いた時にやっと追いついて隣に立った。


 こうして並んでみると、ツンツンさんが意外に大きな体をしていることが分かった。普段見る時はいつも寝ていたし、昼間すれ違った時も帽子があったからか、正確な身長は分からなかった……ツンツンさんの身長は、私が百六十六㎝(一㎝伸びた)で、頭一つ半くらい差があるから…………百八十くらいだと思う。


(修くんよりも結構大きい……)

「焼きそば一つ。大盛りで」

「あいよ。仲良く食べろよ?」

「は?俺一人だけど?」

「なに言ってんだい。そんな可愛い子連れておいて」

(可愛い子?一人じゃなかったのかな?)


 そう思い、ツンツンさんの隣を見てたけど、そこには誰もいなかった。もしかしてこのおじさんは霊的な何かが見えたりする人なのかも知れない、とそんなことを考えながら視線を戻すと、おじさんと目が合った。


 とりあえず頭を下げておく。


「……誰のこと?」

「とぼけやがって、こいつめ。さっきから隣にいるだろ?」

「隣?」


 そう言って、私がいない方を見るツンツンさん。


(やっぱりこのおじさんは霊的な物が見えるのかな?)


 なんて考えていると、おじさんが「そっちじゃねえよ」と言った。


「「ん?」」


 私も逆方向を見てみる。そこにはたい焼き屋さんがあって、確かに人はいるけど二人とも男の子だ。女の子はいない。焼いているのは女性だけど。


「あんたら面白いね?」

「?」

「おっさん。俺の隣にいるのは確かに女の子だけど、俺とは無関係の子だよ」

「あの……ちょっといいですか?」


 何の話をしているのか分からなかったので、私は聞いてみることにした。


「ん?なんだい?」


 ツンツンさんも私の方を見たのが分かった。


「さっきから、隣にいる人って言ってますけど……もしかして二人は…………霊的な何かが見える人ですか?」

「「……………………」」


 そう聞くと二人は呆けた顔をして、「ガッハッハッハッハッ!」とおじさんが豪快に笑い声を上げた。ツンツンさんはツンツンさんで、笑っているのか顔を背けて肩を震わせていた。


「ハハハハ! 嬢ちゃん面白いね! 分かってないみたいだが、オレ達が言ってるのは嬢ちゃん、あんたのことだぜ?」


 焼きそばを混ぜる――名前分からない――道具で私を示すおじさん。


「……………………はい?」


 私がたっぷり間をおいてやっとそう声を出すと同時に、携帯が鳴った。


「あ」


 そう言えば待っていろと言われていたのを思い出した。出ると、修くんに、「待ってろ、って言ったろ?」と、呆れた様な声で言われた。


「あはは……ごめん」

『はあ……それで? 今どこにいるんだ?』

「焼きそば屋さん。私がそっち、行こうか?」

『それでも良いが、まっすぐ歩いて来いよ?』

「うん」


 通話を切って、ツンツンさんとおじさんに「それでは」と言って、私は来た道を真っ直ぐ戻った。





「離すなよ?」

「分かってるって」


 たこ焼き屋さんに戻っている途中で、修くんの方からも来て合流した所で手を繋いでみんなの所に戻った。事情を説明して、母さん柊さん先生にこっぴどく怒られた後、華ちゃんとさっちゃんが頭を撫でてくれた。モモちゃんも足にすり寄って来た。


「次こんなことがあったら、そん時はマジで切れるからな? 分かったか? 菊!」

「はい。すいま………………ん?」


 返事をして、謝ろうとした所で少し違和感を覚えた。みんなも同じようで、首を傾げている。


「ん? どうした?」

「いや……今……んん?」

「なんだよ?」

「…………あ! 名前! 今、名前で呼んだ!」

「っ!」


 違和感に気付いて言うと、みんなも気付き、柊さんは何故か赤面した。


「そうだそうだ。いつも、『お前』とかだったもんな」

「呼んでも名字だったしな」

「そうだったわね」


 修くん、さっちゃん、先生が言うと、柊さんは益々赤くなった。


(ちょっと可愛いかも)

「べ、別に良いだろうが!」

「姉さん、どこ行くの?」

「どっか!」


 そう言って、歩き出した柊さんを見て、みんなで見合うと自然と笑みが零れた。モモちゃんを抱いて、後を追うと後ろからみんなも着いてきた。柊さんの隣に並び、顔を見てみるとまだ赤くて、目を合わせてくれなかったけど、嫌な気分じゃなかった。


 それから金魚すくいや射的なんかで遊んで、最後に花火が上がると先生から教えて貰ったから、みんなで見に行くことにした。先生について行って、森に入り、そこを抜けると開けた場所に出た。上を見上げると、何の障害物も無く、黒い夜空と煌めく星がハッキリ見える。


「きれい……」

「こんな所があったなんてね」

「ホント、見事なもんだな、これは……」

「偶々歩いてたら見つけたのよ。あなたたい以外、だれにも教えてないわ」


 私と母さんと柊さんが感想を言うと、先生がそう言った。


 それから数分経って、最初の花火が上がり、夜空に花を咲かせた。


「すごい」

「良かったな。来てみて」

「うん」


 花火はどんどん上がり、いくつもの大輪の花を次々と咲かせていき、途中でさっちゃんが、「写真を撮ろう」と言って、ポケットからカメラを取り出した。


(ずっと持ってたのかな?)


 そう思いながら、花火をバックに並んで、都合良く丁度いい高さの岩があったからそこにカメラをタイマー設定して置いてから、さっちゃんも並んだ。と、背後から凄い数の花火の音が聞こえて思わず振り向くと、みんなもつられてしまったのか振り返った。


 


 そこでは、都合十数発の花火が次々と打ち上げられていて、最後に中央で一番大きな花を咲かせた。



 暫くみんな、余韻が残っていて空を見上げていたけど華ちゃんが「写真」と言って、みんなハッとなりカメラを見たけど、とっくにシャッターを切っていた。


 なんだかおかしくて、笑ってしまい、次いでみんなも笑い出した。


「あ~……おかしい。もう一回撮ろうか?」

「ああ。そうだな」


 答えた柊さんがもう一度カメラをセットして、今度はちゃんとみんなカメラを見る。


「ハイ、チーズ!」


 さっちゃんの合図に合わせて、みんな思い思いのポーズを取りシャッターが切られる。





 後日、さっちゃんに見せて貰った写真には、真ん中に私と修くんとモモちゃん。


 右側に、華ちゃんと、華ちゃんの頭に手を乗せている柊さん。


 左側にピースをした母さんとさっちゃんが写っていた。




「今度から、何かある時はこうして残していこうと思うんだ」

「あ、いいね! それ!」

「だろ? だからさ、もっと思い出を増やしていこう?」

「うん!」


 写真を胸に抱えて、私は笑いながら頷いた。



 ちなみに、最初に撮った方の写真は、みんな見事に花火を見ていて、大きな花火の方がメインになっていて、また二人で笑った。



(これから先、もっと楽しいことがあるんだな!)


 

 そう思うと、心が弾んだ。



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