圧倒的な性能差
後書きで重要なお願いがあります。
ご協力をお願い致します。
「え、あ……なにがどうなったの……。にん……げん……?」
まだショック状態のクララを見て、ウリエルはタハハと笑った。
「すぐ動ける状況じゃないみたいですね。なるべくこちらには攻撃がこないようにしますが、あのモンスターがどう動くかもわからないので……まぁ、あとは頑張ってください」
「た、助けてくれるんじゃ……」
「私は人類という種を愛していても、その一粒一粒にはあんまり興味がありませんから」
ウリエルは普段と変わらない様子でそう丁寧に言った。
クララからの視線は、同じ人類を見るモノとは違う。
異世界人か何かだと思われているのだろう。
ウリエルは特に気にせず、クララが射線上に入らないように〝音速斬翅のリブレイド〟へ弧を描くように走って行く。
『ブブブブブブブブ!!』
敵だと認識したため〝音速斬翅のリブレイド〟は本気の斬撃を複数飛ばす。
一撃で鎧だけでなく、建物まで切断するような威力をたった一人の少女に向けて連射だ。
それらがウリエルに次々と命中していく。
あまりの威力に砂ぼこりが舞い上がり、周囲が見えなくなるほどだ。
「や、やっぱり誰も勝てない……」
クララがそう呟いてしまう。
だが、砂ぼこりの向こうから返事が聞こえてきた。
「ご安心あれ、この特注の鎧……えーっと、なんて言いましたっけ……。そうそう、〝アポロンの太陽鎧〟があれば! ご覧の通り!!」
砂ぼこりが晴れていくと、そこにはボロボロのマントの下に赤いビキニアーマーを着込むウリエルの姿があった。
「……ご覧の通りと言ったけど、あんまり見ないで欲しい感じもしますね。まぁ、見た目はともかく、このように頑丈ですよ。お買い上げの場合は私へ――」
再び斬撃の嵐が飛んできた。
きっと〝音速斬翅のリブレイド〟も焦っているのだろう。
人間相手にここまで攻撃が通じないことなどあり得なかったのだから。
「もう、宣伝してるのに五月蠅いですね……」
ウリエルはムッとした表情になり、そろそろ攻撃方面のアピールを考えた。
「えーっと、何か武器は……あ、この斧借りますね」
「あっ、それは……」
「それじゃっ、よく見ておいてくださいね!」
勝負は一瞬だった。
クララの目からは、ウリエルが消えたように見えた。
いきなり〝音速斬翅のリブレイド〟の眼前に出現していたのだ。
それは素早いと思っていた〝音速斬翅のリブレイド〟以上の素早さ。
「せいっ!」
ウリエルは魔力強化した斧で、〝音速斬翅のリブレイド〟の眉間部分を思い切り叩く。
斧と頭部の両方が粉砕され、地面に叩き付けられた。
「うーん、防具は良いけど、武器方面に問題がありますね……」
ウリエルは砕けて柄だけになった斧を手に、やれやれという表情をしていた。
***
――その頃、まだ何も知らないカンパネは上機嫌で現場へ護衛と共に向かっていた。
「くそっ、モンスターがここまで入り込んでくるとは……!!」
……という人間の国の大臣演技をしつつ、『なーんてね』と内心ほくそ笑む。
本当はどれくらいの被害が出ているか楽しみで仕方がない。
あの〝音速斬翅のリブレイド〟が相手だ。
この国の上位パーティーがいても相打ちかそこら、今回はそこが出払っているので全滅は必至だろう。
自分が追い払ったことにして、この国での地位をさらに上げてスパイとしての役目をしやすくしたりするのもいいだろう――とカンパネは思っていた。
しかし――。
「は?」
「ですから、報告によるとトンボ型のモンスターは倒されたとのことです」
現場に先に来ていた兵士から信じられないことを聞かされたのだ。
カンパネとしては内心、生きた心地がしない。
(うわああああ!! 蟲魔王様になんて報告すればいいんだあぁぁぁぁああああ!! 対抗できそうなSランクの冒険者もいないはずだろおおおおおッ!?)
それでもスパイとしての役割を果たさなければならない。
「じょ、状況を説明しろ……」
「本日未明、蟲魔国の方角から高速で飛翔するモンスターの報告があり、少し前に町へ到達。アイゼンシルトを含む上位の冒険者たちが不在で対処不能となっていて、かなりの死者が出たそうです」
「う、うむ……」
それは想定内だった。
むしろ、情報を流してそうさせたのだ。
そこから先、どうやって〝音速斬翅のリブレイド〟が倒されるのかが繋がらない。
かなりの実力者がいてやっと相打ちくらいの強さで、そのような者は町にはいなかったはずだ。
「そこへ現れた冒険者がトンボ型のモンスターを倒したとの目撃情報があります」
「何人の冒険者がやってきたのだ?」
「一人とのことです」
「……は? それなら冒険者ランクがA辺りか?」
「Dランクらしいです」
「誤情報か……?」
一人で倒したということも信じがたいが、冒険者ランクも気になった。
冒険者ランクというのは、それぞれの実績などが評価されたものだ。
大体の目安は入りたてがEで、少し慣れたらD、中堅どころがC、ベテランがB、なかなか到達できない腕利きがA、かなり特殊な部類がSというところだ。
つまり、冒険者になって少し慣れた程度のDランクが〝音速斬翅のリブレイド〟を倒したと報告しているのだ。
「私もあり得ないと思いますが……目撃情報があるので……」
「本人と話はできるか?」
「え、ええ……討伐した者の名前はウリエル。そこにいる女性冒険者です」
「どれどれ……えっ?」
兵士が指差したのは、赤いビキニアーマーを着た少女だった。
カンパネは魔族でも、スパイとして人間の文化はよく理解しているので思わず口に出してしまう。
「な、何だあの格好は……ハレンチじゃないか……? あんな装備で戦いに来るとか頭大丈夫か……?」
「シーッ! 本人にそれを言ってはダメですよ! 私も同じようなリアクションを本人の前でしてしまいましたが、装備の見た目のことは気にしているようでしたから……」
「本人が嫌がっているのに着ているのか? 意味不明なんだが……」
まだまだ人間には理解できないところがあるな、と思いつつも、カンパネはウリエルと話すことにした。
「ちょっといいか、そこのウリエルという冒険者よ」
「わっ、貴族みたいな服ですね。もしかして、偉い人ですか?」
「まだ若いお前は自国の大臣の顔も知らぬか……」
「大臣さんですか~。偉い人の顔を覚えるのは苦手なんですよね」
「わたくしの名前はカンパネ・ロラ、公爵家の人間でもある。まぁ、肩の力を抜きたまえ。話を聞きたいだけだ」
ウリエルは肩の力を抜きすぎたのか、ふわぁ~とアクビをしてしまっている。
カンパネとしては、本当にこの小娘が? と疑ってしまう。
「時にウリエルよ、トンボ型のモンスターをどうやって倒したのだ?」
「えーっと、何か飛ぶ斬撃みたいなのをいーーっぱい放ってきましたが、全部防いで、ピョンッて飛んで、ガンッと叩き落としました」
「……は? そんなので無傷で彼を倒してしまったのか?」
「彼? 倒してしまった? ええと、はい。倒しましたよ。想定より弱かったので、こちらの防御性能を試しつつ、トンボ野郎の醜い昆虫ヅラをかち割ってやりました。断末魔すら上げられずに滑稽でしたね」
「……」
カンパネは思わず黙ってしまった。
同胞への侮辱もだが、あまりに人の心がない戦闘特化の恐ろしい人間だ。
それらの感情がつい表情に出て、強張ってしまう。
「おや、どうしましたか。カンパネ大臣サマ?」
「い、いや……戦場というものはあまり慣れないからな……あまりに血なまぐさい話で……」
「偉い人は庶民の死とは程遠いですからね~、どこも一緒で」
場の空気を読んで、間に兵士が入ってきた。
「こら、冒険者! 高貴なるカンパネ様が気分を悪くしていらっしゃる! ああ、そうだ。血なまぐさい話ではなく、先ほど宣伝していた装備販売の話をするのはどうだ? カンパネ様なら大口の買い付けもしてくださるだろう」
実は先ほど、兵士に対してウリエルはビキニアーマーの性能と商品説明で宣伝をしたところだったのだ。
ウリエルとしては商品を売りたい気持ちがあったはずだが、なぜか気乗りしない表情だ。
「あー、うん。そうですね~……。この装備はさっきも言ったように販売予定なんですよ。付けると凄く強くなる、モンスター素材で作った装備」
「ひぃっ!? モンスター素材で作った装備だと!? そんな低強度の物が強いはず……いや、今回はトンボ型モンスターの攻撃を受けきったのだったな……どういうことだ……」
カンパネとしては同胞の身体で作られた装備など、おぞましい物でしかない。
しかし、強いモンスターでも死骸となれば強度が落ちるというのは常識で、それを覆して実践してみせた者が目の前にいるのだ。
信憑性は高い。
この装備を量産されて冒険者に供給されたら危険なことになるし、だったら全部買い取って魔族に装備させた方がいいだろう。
敵を利用する、スパイらしい逆転の発想という奴だ。
「よし!! いくらでもその装備を買おう!!」
面白い!
続きが気になる……。
作者がんばれー。
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<(_ _)>ぺこり




