裸の付き合い
爆散したモンスターの血と肉片を浴びたイストとウリエルの二人は、さすがに気持ち悪すぎたので何よりも優先して川で身体を洗うことにした。
「私が先に身体を綺麗にするので、イストさんはあとで!」
「知るか! 俺だってこれは耐えられん!」
イストは血と肉片でベトベトの服を脱ぎ散らかし、川へザブンと入った。
ウリエルは思わず手で顔を覆ってしまう。
「うわわ、いきなり女の子の前で脱ぐ奴がありますか!?」
「川は広いんだから、別の方を向いてればいいだろ。そもそも、お前も着てる物を魔力放出だかで吹き飛ばして同じような状況だ。自分のことを言えんだろ」
「せ、正論パンチはモテませんよ……」
「別にお前にモテたくはないし、そんなもんより快適さを求める」
イストはジャブジャブと身体を洗い始めた。
ボディーソープやシャンプーが欲しいところだが、さすがにそれは贅沢だろう。
水だけでもだいぶマシになる。
「うぅ……こっち向かないでくださいよ……」
「俺はか弱い非戦闘員だからな。お前がその気になれば一瞬でぶっ殺せるだろ」
「いや、さすがにそこまではしませんが……。まぁ、こちらが武力では優位というのは忘れないでくださいよ……拳が勝手に出てしまったらどうなってしまうか……」
「こっわ」
さすがにそんなことで命を懸けたくはない。
そもそも服や鎧に包まれている人体には神聖さすら覚えるが、脱いでしまったらただの動物だ。
動物相手に興奮しろというのだろうか? それがイストの価値観だ。
「あ、何か今すごく失礼なことを考えませんでしたか?」
「さすが動物、野生の勘が凄いな」
「いきなり動物ってなんですか!?」
というやり取りをしている最中も、お互いに背を向けて身体を見てはいない。
べったりと付いた血糊を落として一息吐いたところで、イストは本題に入る。
「なぁ、俺の熊肉ステーキは美味かったか?」
「はい、お腹ペコペコだったし、最近はゲロマズのモンスター肉ばかりだったので最高に美味しかったです!!」
「――で、何でもするから食べさせてくれと言ったな?」
「うっ、覚えて……ましたか……」
「おっと、さすがにこれは拳で解決しようとはするなよ! きっと、お前のお婆ちゃんとやらも悲しむぞ!」
「ぐぬぬ……たしかに『お代を踏み倒す奴は死刑』とお婆ちゃんも言ってました……」
さすがにそこまでは言ってないが、これは都合がいい。
本当に何でも言うことを聞かせられそうだ。
これだけの存在に、何でも言うことを聞かせられるとなれば、それはもう決まっているだろう。
「ぐへへ……ぐへへへへへへ……。まずはお前の身体を隅々まで見せてもらうぞ……」
「ぎゃー!! やっぱりそういうことなんだー!!」
涙目で青ざめた顔のウリエルに、物凄い速度で近付いてくるイスト。
大きく手を広げていて、とても危うい絵面になったのだが――。
「私の身体が弄ばれ――って、何をしてるんです?」
「見て分からんか? 採寸だ」
イストはメジャーを広げて、ウリエルの各部位を計り始めた。
「えーっと……?」
「両手を横に上げろ」
「はーい……ひゃっ!? む、胸って、やっぱりえちえちなことを!?」
「このバストサイズで、あの窮屈な全身鎧。お前、大変だっただろ」
「えっ、なんでそれを……」
「模型デザイン関連で、実物大のコスプレ衣装も少しだけやったことがあってな、って言ってもわからんか」
「わかりませんが、少しわかったことがあります。何か真剣ですね、イストさん」
「そうだな、採寸しつつこれまでの話をしておくか。実は……かくかくしかじか」
「かくかくしかじか?」
「これは伝わらんか! 異世界め!!」
――異世界転移してからのことを普通に話した。
「ということで、お前と出会ったわけだ」
「えぇ……マジですか……。にわかには信じられませんが……」
「俺の〝ヘラクレスの籠手〟が証拠だろ。自分で使っておいて疑うのか?」
「たしかに……この世界でこんな装備は見たことがありません……」
「バカめ! レスバで俺に勝とうと思うなよ! リアルではコミュ障だが、匿名掲示板であおり合って鍛えたからな! はい、お前の負け~!!」
「意味はわかりませんが、何かとても残念な気がしますね……」
そのタイミングでウリエルの採寸が終わった。
「うーむ、この世界も人体の平均サイズはあまり変わらない感じだったから、やっぱりウリエルは防具調達が大変だったんじゃないか?」
「わかってくれますか!? しかも低身長のバストサイズ大きめのオーダーメイドで作ってもらっても、本気を出すとすぐに弾け飛んでしまってお金がなくなり、結局は量産品の全身鎧を無理して着て死にそうになっていましたよ」
そこでイストはニヤリとした。
「うっ、何か嫌な予感が……まだえちえちなことだった方が良いような……」
「ウリエル、俺が作るモンスター鎧の実験体になれ!」
「ヤバすぎる言葉の響きなんですけど!?」
「お前、何でもすると言ったよなぁ……? もしかして、代価を踏み倒す気かぁ……?」
「お、鬼……悪魔……モンスター鎧職人……」
「なんとでも言え! 自分では試せないことが多かったからな!! お前の身体を存分に使い倒してやろう!!」
「イーヤー!!」




