精霊眼の魔術師
後書きで重要なお願いがあります。
ご協力をお願い致します。
いきなりこちらを睨み付けてきた少女は魔術師だろうか。
一瞬だけ眼が見えた気がするのだが、フードを目深に被っていて正確な表情が読めない。
ただ、語気が粗めなのであまり好意的ではない可能性が高い。
背はウリエルより少し高いくらいで、声の感じからして十代中盤くらいだろうか。
「人違いでは?」
ウリエルは真顔でしらばっくれた。
世間で知られているのは顔と名前とビキニアーマー姿だけだろうから、マントで身体を隠して名乗ってない今ならいけると思ったのだろうか。
「お姉ちゃんから聞いた……! マントで装備を隠してるって……!!」
少女魔術師は、ウリエルのマントを掴んで一気に引き剥がした。
中に着込んでいたビキニアーマーが衆目に晒されてしまう。
「ぴゃっ!?」
ウリエルは普段聞かない変な声を出して赤面して、両手で身体を隠そうとするもアーマーの面積が少ないために肌を隠しきれていない。
周囲からその装備へ――いや、ほぼ半裸の柔肌へと注目が集まってしまう。
「か、返してください、マントを……」
「あなたがトンボ型モンスターを斃した冒険者だと認めてくれたら返す」
「み、認めます……認めますから……」
少女は無言で「ん」とマントを返してきた。
ウリエルは急いでそれを羽織ってビキニアーマーを隠す。
呆気にとられていたイストだったが、そこで初めて口を開く。
「ウリエル、お前のキャラってこんなのだったか?」
「う、うるさいですね。戦闘時ならともかく、人前でこの格好はそれなりに覚悟を決めてないと恥ずかしいんですよ!」
少女はそれを見て、イストの隣に座ってきた。
位置的にはテーブルを挟んでウリエルの真向かいだ。
「〝実物〟は大したことないわね。しかも、魔力の無い人間と一緒にいるし。この国の危機にそんな引きこもりニートよりも役に立たなそうな男ってことは、恋人か何か?」
「ああ、そうだ。俺はウリエルの恋人のイストだ」
「なっ!?」
どうも、ウリエルの恋人のイストです――という勘違い自認をしたわけではない。
モンスター鎧を作れる制作者だと外でバレたら面倒なので、テキトーに話に乗っただけだ。
ウリエルはビックリした表情で固まり、なぜか質問した少女魔術師の方まで驚いている。
「ところで、そちらはどちらさんで? お姉ちゃんがどうのとか言ってた気がするけど」
「あたしの名前はアルプス。クララの妹よ」
たしかクララというのは、ウリエルが助けた冒険者だったはずだ。
それがなぜ、こんなにも友好的ではない喧嘩腰のような感じなのだろうか?
「クララお姉ちゃんを助けてくれてありがとう、本当に感謝しているわ」
「あ、感謝はするんだ」
「それは人として当たり前。でも……〝鋼鉄の守護者〟のマルコさんと、イザベルさんは死んだ……。なんで助けられなかったの……!! 英雄譚の主人公なら、それくらいやって当然でしょ!?」
ようやく落ち着いたウリエルは、いつものテンションで言った。
それは『今日のお昼ご飯は何?』くらいのテンションだ。
「うーん、私は英雄譚の主人公じゃないですから。そのマルコさんと、イザベルさんという方も存じ上げませんし」
「お、おいウリエル……。いくらお前でも、さすがにその言い方は……」
フードを目深に被った少女――アルプスはポロポロと涙を流し始めた。
「本だったら違うのに!! これだから実物の存在は嫌なんだ!! なんでこんな奴が力を持っていて、私がお姉ちゃんやマルコさんやイザベルさんを救えないんだ!!」
そのとき、アルプスのフードがめくれて眼が見えた。
その眼はこの世界でも初めて見るような虹色の光彩を放っていた。
何だアレはとウリエルに聞こうとするも、向こうも察したのか身を乗り出して耳打ちをしてきた。
「ヒソヒソ……あれは精霊眼という超レアな眼です。何でも普通では見えない大気中の精霊を見ることができるらしく……。ウチの地元でも噂だけはありましたが……実在していたとは……」
「つまり……?」
「魔術とは基本的に精霊に力を貸してもらうもの。魔術のコントロール技術において最強ということです……なんでこんな逸材が今まで隠れていて……」
そこでイストは当然の答えに帰結した。
このアルプスという精霊眼持ちの魔術師に協力してもらえば、モンスター鎧に魔術を転用することも容易いだろう。
さっそく、誘うことにした。
「アルプス、力というモノには覚悟が必要だ」
「え?」
「俺たちと一緒に来い。そうすれば強さの秘密を教えてやる。その覚悟はあるか?」
「か、覚悟って……?」
「ビキニアーマーを着ることだ」
「ひっ、突然何を言っているの……この変態……そんなの嫌に決まっ――うぎゃっ」
無表情のウリエルが、アルプスの首に手刀を叩き込んで気絶させ、荷物のように担いだ。
どうやらウリエルには人の心がないらしい。
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