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モンスターを鎧にする仕事  作者: タック


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一般人のハズレ異世界転移

新連載開始しました!

今日は少なくとも、追加で昼と夜に投降する予定です。

そこからは毎日夜18:20分に投降……できるように頑張ります!

 異世界転移というものを知っているだろうか?

 さすがに現代オタクなら耳にはしたことがあると思うので、軽くだけ説明しておこう。

 異世界――よくある中世ヨーロッパ的なファンタジー世界から、召喚魔法で現代人が呼び寄せられてしまうというモノなどだ。


 この方式でも、大体は2パターンある。

 嬉しい1パターン目は、最強のチートスキルを持って異世界で無双してウハウハだ。

 そして、嬉しくない2パターン目は、何もチートスキルを持ってなくての転移。


 今、小さな作業小屋の中で落ち込んでいる、25歳のパッとしない中肉中背オタク男性――イストも嬉しくないパターンで転移してきた現代人だ。


「オラこんな異世界いやだ~……!!」


 本名、東源内(あずまげんない)

 模型雑誌ライターで、実益を兼ねた趣味の模型作りをやっていた。

 趣味の模型作りはPCで可動設計とモデリングをする。

 それを3Dプリンターで出力するという本格的なものだ。

 界隈ではそれなりに有名だった。


 そんな現代人として生活していたら――ある日、ハビリスという町に異世界転移させられてしまったのだ。

 最初は彼も男子なのでファンタジー世界にときめいた。

 珍しい転移者ということで、お姫様とトントン拍子で婚約まで進んでいるというではないか。


 しかし、判明したのはチートスキル無しの嬉しくないパターン。

 かろうじて言葉が翻訳されて通じるくらいだ。


 世界情勢的には人間の国が劣勢で、いつ魔物に滅ぼされるかわからないという楽しくない状況。

 そして個人的に一番最悪だったのが、異世界なのにファンタジー感が薄いということだ。

 魔力というものはあるのに、魔術もスキルも弱い。


 活気のない町を歩く冒険者たちの格好は汚れた中世レベルの錆び鎧で、見ていてつまらない。

 華やかな勇者の鎧や、魔女帽子は存在せず、もちろん男子の憧れビキニアーマーはない。

 令和の規制されたタイツバージョンすらない。


 その状況で絶望していると、チートスキルも何もない彼は――。


「この大臣であるカンパネ・ロラ公爵が命じる、役立たずの異世界人をつまみ出せ! もちろん、レイリオン・フォトン・ヒューランド第一王女との婚約も破棄だ!!」


 城から追放された。


 なぜかここだけお約束だ、世知辛い。

 彼も人間なので生きて行くために、気軽に冒険者にでもなろうとしたのだが、現代人の運動不足を舐めていた。

 中世ヨーロッパ風世界のブルーカラーである冒険者たちは、全員がゴリラのような筋力をしていたのだ。


 割と細身の人間でも異常なパワーを持つ人間もいたが、それは魔力というものが身体にあるからだそうだ。

 もちろん、現代人の彼には筋肉も魔力もない。

 しかも、冒険者たちが戦う魔物という存在は、もっと強くて人間の国を滅ぼしかけているというのだ。


 整理すると魔物>冒険者>>>>>>>>>ザコ転移者。


 というわけで彼は今、異世界で一番役立たずの存在と言っても過言ではないだろう。


「オラこんな異世界いやだ~……!!」


 ――そこで話は現在へと戻る。

 東源内は、名前を東から取ってイストとして、悪目立ちしないように町から少し離れた場所で見つけた廃棄小屋に住むことにしたのだ。


「でも、何か仕事をしなきゃ死ぬわけで……。はぁ~……。残りのお金もこんだけかぁ」


 城から追い出されるときに持たされたのは小銀貨数枚だ。

 この国で数日宿屋に泊まって生きられる程度の価値だという。

 ただ放り出すと評判が下がるから持たされたのかもしれないが、このはした金をもらってもどうしようもない。

 そこで思いついたのが、転移前の趣味を活かすことだ。


「雑誌ライターのスキルは、この世界に雑誌がないから無理だし、これしかないよなぁ……模型作りの手先の器用さ」


 手先の器用さは異世界でも重宝されるだろう。

 だが、問題はその器用さを何に使うかだ。

 それを見極めたいがために、材料を用意して、廃棄小屋にあった最低限の工具類で試すことにした。


「さて、持って来た素材は……ゴミのように扱われていたモンスター素材」


 この国は魔物に滅ぼされかけているので、それを討伐すればモンスターの死骸も出る。

 ちなみに魔物とモンスターは区別があるらしいが、モンスターの方が知能が低い個体だとザッと教えてもらった。

 魔物は、魔族といった知能の高い存在と、知能の低いモンスターも含めての大まかな種別らしい。

 人間でたとえるのなら、魔物=哺乳類、魔族=人間、モンスター=チンパンジーの区別的なものだろうか。

 閑話休題。


 モンスターの死骸の可食部は食糧不足で重宝されることが多い。

 逆にそれ以外の素材は捨てられてしまうという。

 理由はよくわからないが、タダ同然でもらえるのなら、今のイストにはぴったりの素材だ。

 色々と試すことができる。


「骨、甲殻、腱、爪、牙――色々あるけど、加工しやすそうな甲殻から削ってみるか」


 大きな袋一杯のモンスター素材から、緑色の甲殻を取り出した。

 サイズはティッシュ箱くらいだろうか、艶やかな表面からして、巨大な昆虫モンスターの甲殻と予想できる。

 これも可食部がなくなっているので――と考えると、人類の負け方は結構悲惨だ。

 虫モンスターなんて食いたくない。


「さて、まずは耐久テストでもしてみるか。この小屋にあったハンマーで叩いてみてっと……」


 カツンッとあまり力を入れずに叩くと、パキンと小気味の良い音を立てて割れてしまった。

 しばらく無言のあと、「は?」という言葉が出てしまう。


「いやいやいや、ちょっと待てよ。冒険者が苦労して倒すくらい強い敵なのに、なんでこんなに脆いんだ? うーん……死ぬと素材も脆くなるとか……?」


 異世界の素材なので前提知識が足りなさすぎる。

 でも、町で誰もモンスター素材の装備を使ってなかったので、頑丈な装備には向かないのだろう。


「耐久性に難あり……ということは、見た目がオシャレだったり、格好良かったりするファッション装備として作るのがいいか」


 何をバカなことを、と思われるかもしれないが、いつの時代、どこの国でもファッションというのは重要だ。

 見た目が良ければ、耐久力がゴミでも買ってくれる人がいるかもしれない。


「さて、方向性も決まってきたし、やるか。ここで素人は全身とか作りたくなるだろうが、まずは小さな物から試して堅実にいこう」


 モンスター素材袋にある多い素材は何かとガサゴソして、作る物を決めた。


「さっきの甲殻は数があるから、まずはカッコイイ籠手でも作ってみるか。靴でも良さげだけど、そっちは負荷がかかって歩いてる最中に壊れると大変だしな」


 耐久力的には、ハンマーやノコギリ、千枚通しなどで簡単に加工出来るような感じだ。

 プラスティックよりは少し弱いくらいのイメージだろうか。


「まずは大雑把に仮組みか。サイズが大体合う甲殻を四枚集めて、前腕部を覆う箱型にする。あとは籠手だと、拳部分も少し欲しいな……小さい甲殻をいくつかナックルガード的にするか。指は……まだそこまで細かいのは難しいな、省略」


 サイズの合う甲殻をさらに切りだして調節して、筋彫りを入れて籠手になるパーツを作ることができた。

 強度がない分、加工はかなりしやすい。


「さて、問題はどうやってパーツをくっつけるかだよなぁ……。溶かしてくっつけるのは……現状だと溶接は手持ちの工具的に無理だ。バーナーとかあったとしても甲殻を溶接ってどうやるんだよ。他の候補は……接着剤……」


 イストは両腕を組んで、眉根を寄せてウ~ンと悩んでしまう。

 そろそろ暗くなるので、ロウソクに火を付けようとして気が付いた。


「これだ! どうせ強度が必要ないオシャレ装備なんだし、ロウソクの蝋で固めるか!!」


 そうして、徹夜でモンスター素材防具の第一号が出来上がった。


「よーし、完成!! モンスター素材防具第一号――その名も〝ヘラクレスの籠手〟だ!!」


 ちなみにヘラクレスとはギリシャ神話の半神英雄なのだが、勝手に名前を使わせてもらった。

 オシャレ装備というのはハッタリをかまさなければいけないし、どうせこちらの人間には意味はわからないだろう。


「語感が格好良ければヨシ!! ウッヒョー!! 最強の防具が出来ちまったなぁ!! オラー!! 試しに岩を殴ったるでぇー!!」


 このとき、イストの脳内に危険信号が走る。

 徹夜テンションで先走ってしまったが、この籠手はプラスティック以下の強度の甲殻で作られたものなのだ。


「あっ、やべっ――」


 ただのオシャレ装備なのでぶち壊れてしまうこと確定だろう。

 もう拳は止まらない。

 だが――。


「……あれ?」


 ぶち壊れていたのは、岩の方だった。

PVがBOT説あるから、人間だったら何か反応してくれると嬉しいいいいいいいですよ!!


面白い!

続きが気になる……。

作者がんばれー。

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<(_ _)>ぺこり

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