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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第四章 交錯する恋の行方
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第95話 私はとっても不愉快なんです!

「春風、聞いたわよ。湘南ライドで三位入賞なんだってね。やったね」 

 と大会が終わったその夜、姉としたう葉山翔子から電話が入った。

「あゝどうも」

 春風はベッドに疲れ果てた身体を横たえながらスマホを手探りで見つけ応えた。

「情報早いですね?」

「まぁ、ライドでサポートしてた美涼さんからの連絡だったからね」

「なる、そうか」

「今日さ、詩織ちゃんとも話したんだけどね、春風の祝勝会やろって話になってね」

「それ、うれしいかも」

「そうだ、五十嵐天音さんも誘いましょうよ」

「うん、それがいいね」

「萌ちゃんや、ほら、サポートしてくれた桜山カオリさんや天野雫ちゃんたちも誘ってみようよ」

「姉さん、それって女の子だらけの祝勝会になりかねんよね? だったらさ、ERCのメンバーに声かけてもいいかな?」

「うん、そうね……パーラー七里ヶ浜で考えているから、市川先生も呼んであげた方がベターだね。よし、早乙女春風の祝勝会改め、ERCの入賞祝賀会にして、やっちゃいますか? ねっ」

「それ、いいね」

「じゃあ、参加者が確認できたら教えてね」

「了解です。連絡入れておきます」

 

 そうだ、紗矢香さんはどうかな?

 なんて期待薄いけど、かけちゃえ!

「トゥルルル、トゥルルル」

「はい、紗矢香です」

「あっ、昼間はどうも。見に来てくれてたんだね」

「うん、最後のカーブを駆け抜けた時の横顔……真剣でカッコ良かったよ」

「それ、嬉しい限りですね……あのね?」

「なぁに?」

「明日、ERCの祝勝会することになったんだ」

「そうなの? 良かったね」

「実は紗矢香さんに来て欲しくてさ……」

「……ごめん、春風くん。そう言うところ、なんか苦手なんだ……」

「君が来ない祝勝会は、なんか寂しいな……」

「……じゃあ、ふたりっきりでお祝いしちゃおっか?」

「ええ、本当に……いいの?」

「いいに決まって流じゃない。祝い事ってね、いつも一緒にいて欲しいなって思える人と、喜びを分かち合えることが一番素敵なことだと思うから……その相手が私ならうれしいな」

 あーっ、なんか身体(ほて)ってきたよ。

 こんなハッピーな気持ちになったこと、今までにない!

 春風は仰向けのまま、静かにガッツポーズをして見せた。

 

 お兄……ちゃん? 

 

「じゃあ、明日十九時に、メルキャンティで待ってるね」

「あゝ楽しみにしているよ、じゃあ」

 

 お兄ちゃん?

 明日って、翔子さん主催の祝勝会なんじゃ?

 

「カタン」

「あっ」

「だれ? ……なんだ詩織か、脅かすなよ」

「ごめんなさい。盗み聴くつもりなかったんだけど、でもさ明日って……」

「ああ、そのことね、大丈夫だよ、ちゃんと祝勝会には行くからさ」

 詩織は春風をジーッと見たあと、

「紗矢香さん、なの?」

「あっ、いや……うん、そうさ、紗矢香さんとの約束なんだ」

「……それって」

「だ、大丈夫だから、今回の祝勝会はメンバー全員のためのものだし、ほら、時間だって十八時から始まるから、その、途中抜けてもいいだろ?」

「……兄ちゃん、元は兄ちゃんのお祝い会なのに、なんでそうなるの? それは皆んな拍子抜けだよ」

「大丈夫だから、上手くやるから、そんな風に言わないでくれよ」

「私は、正直言って不愉快!」

「え?」

「だってさ、紗矢香さんとはいつだって会ってるんでしょ? なのになぜ、明日なのよ」

 

 紗矢香?

 いつでも会ってる?

 春風と詩織ちゃん、何を話してるの?

 

「とにかく、周りを困らせないで下さい」

 と言って寮長室を出ようとする瞬間、傍耳を立てていた彼女はそっと暗闇に身を潜めた。

 

 えっと、皆さんにメッセージ送らなきゃね。

 

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