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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第三章 湘南ライド 激走編
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第94話 市川の悲願 

 市川が現在、転倒して怪我をしながらもゴールに向かって走行していることを、審判係から聞いた天野は、周りにこれを伝えて、ゴールラインで彼を迎え入れられるよう準備に入った。

「市川さん、鉄人や!」

 と東堂は市川をリスペクトするようかのようにはしゃいでいる姿を周りは見て、市川が無事走り切れるよう祈りながら、到着を待ち侘びていたのだ。

 落車後に何某かの怪我をしていることが想定されていたため、天野はサポートメンバーに救急対応ができるように、救急箱の用意や大会救護スタッフとの連携がうまくできるよう指示して、ゴール後の対応に備えさせた。

「市川さんだ!」

 と江ノ島大橋に入る手前の国道をゆっくりと進む市川を遠目で見つけた。

 初めは分からなかったその怪我は、次第に近づくにつれ、サイクルジャージの破れ具合から察することができた。

 市川を待っていたメンバーは拍手で出迎えた。

「完走、お疲れ様です」

「市川さん、無理しすぎですよ」

「感動しました」

「熱いものいただきました」

「遊くん、頑張りましたね」

「ね、姉ちゃん」

「怪我の処置しんと、さあ、こちらへ」

「結果は?」

 とひと呼吸おきながら市川は、桜山に尋ねた。

「取りましたよ、総合三位」

「よっしゃ!」

 市川はこれを聞き、小さくガッツポーズを取った。

 

 場内アナウンスで各賞の表彰案内がなされた。

 そして、ERC代表の市川が念願の表彰台に立つことができた。

 個人総合についても桜山が表彰台に上がった。

 表彰式が終わり、大会の片付けが始まるなか、市川は全員に声をかけて、大きな円陣を組んだ。

「皆んなお疲れ様! ERCは念願の総合三位の座を獲得することができました……」

 市川は涙が溢れて来て、言葉に詰まりながら、

「短い期間……十分とは言えない環境で、よくやってくれた……ありがとう」

「泣くなよ、先生」

 と東堂が言って言葉に、皆が、

「そうだ、入賞できたわけだから、泣くことないぜ」

 と最上が声を挙げた。

 と言いながら天野が円陣のまま「お疲れ様でした」と号令し、皆も「お疲れ様でした」と呼応し本日の活躍を讃えあった。

 その後東堂は「今日の友は明日の敵や」と言って、春風に明日からはまたライバルだと宣言した。

 そしてERC全員で記念写真を撮った。

 

 春風は、主催の川崎を見つけ駆け寄り挨拶をした。

 ちょうどそこに、箱根スパイラルの眞露がやってきて川崎さんと言葉を交わした後、春風に声をかけた。

「君がダウンヒルの早乙女くんか。天野開から聞いたが、RSに乗ってくれているんだって?。ほんと、感謝するよ」

 と言って春風の肩をパンと叩き、去って行った。

 眞露さん、吉野さんの弟が亡くなったことを、自転車と重ね合わせて心を痛めていたんだ、と春風は胸の内を察したのだ。

 

 チームが現地解散により、各々が身支度をするなか、春風と東堂何かガチャガチャやっているところに真田雪やってきた。

「お二人とも本当に頑張ったね、感動をありがとう」

 と言って、ふたりにスポーツドリンクを手渡した。

「じゃあ、またね」

 と言い残し、雪はサポートカーに乗り込み、駅まで送ってもらうことになった。

 桜山カオリや天野雫らも、サポートカーで帰っていった。

「感動をありがとう、やってさ。チョー感激や! おまけにドリンクくれたし、これ飾っとこ」

「そんなたいそうな」

「おまえは飲まんのか? いらんなら、俺がもろうたるで」 

「おい、勘弁しろよ。飾るもんやのうて飲むもんや」

「ええから、俺にチョー。雪ちゃんの思いを独り占めや!」

 ほんと、雪が好きで好きでたまらんのやな?

 僕もそんなふうにできたら、いんだけどなぁ。 

 

『第三章 湘南ライド 激走編』のご愛読ありがとうございました。

次回から『第四章 交錯する恋の行方』が始まりまりますが、春風、紗矢香、天音や雪の恋の行方が交錯し始めるドキドキ、ハラハラする場面を多く盛り込んでいく所存でありますので、楽しみにしていてくださいね。

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