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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第三章 湘南ライド 激走編
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第85話 売られたケンカ

 箱根は次第に下り坂になり、ふたりは箱根新道へと合流して行く。

「そろそろやな」

 見渡しの良い直線に入り、前を行く箱スパと南大からダウンヒラーが飛び出した。

 後ろには南大付属も確認できた。

 小雨が降り始め、ハイドロプレーニング現象により、タイヤの制動が効かなくなることを恐れて、路面とラインを見極める作業が求められる展開が加わり、このダウンヒルをキャンセルするチームがでていた。

「東堂くん、どうやら五人のバトルになりそうだね」

「こん中から最速王が決まるんだな、燃えてきたわ」

「僕も同じだ、じゃあ行くね!」

「おいこら待て!」

「なんだよ、急に」

「あれ、守れよ」

「何を?」

「あれだアレ」

「……あれって、雪と仲良くすな、か?」

「あからさまにするなよ、士気が下がるじゃねえか」

「ふふふ、じゃあ行くね!」

「絶対守れやー、って、さて俺も集中して行くで、オオオー!」

 

 クライマーを箱根新道に入る前の県道75号で吸収していた各チームは、同時にダウンヒラーを送り出す。

 ダウンヒルは例年落車が起きており、チームにとってその後の展開が不利になる可能性があるため、選手を出さないチームもある。本日は小雨降るコースのスピード勝負は危険と判断したチームが多く、結果、5人の選手がエントリーするに至った。

 後方から南大付属の館山、ERCの東堂と早乙女、南大の平良一路が先頭に着ける箱スパの天野開を追う展開だ。

「春風、ちょっと前見ろ!」

「箱スパが減速して近づいてくるぞ!」


「ダウンヒラーはこれですべてかい? 俺っちは天野開(あまの ひらく)、スパイラルのダウンヒルエースだ」

「わいは南大の平良一路(たいら いちろ)や。そのエースさんがわいらに何の用ですの?」

「この天候でスピード争いなんて自殺行為だと思わないかい? だからさ、始める前にリタイアするよう勧告しにきたよ」

「随分と余裕あることですね」

「君は?」

「ERCの早乙女春風です」

「あゝ弟が言っていた、君が眞露さんのバイクの高校生か?」

「そうです」

 開は春風のバイクをサラッと見て「へー、コルナゴV3RSか、やっぱカッコ良いね」と褒めたあと「そのRSをお釈迦にしないよう、せいぜい気をつけて乗るが良い」と気持ちを逆撫でする言葉を浴びせた。

「天野さんのそのバイクって?」

「これかい? ピナレロF7さ。アルテグラ十二段Di2にレーシング6の28Cを履いたサラブレッドさ。君の型落ちRSとF7で競って見ないか? もちろんドライバーの能力が互角なのが前提ではあるけどね」

 なんて上から目線の嫌味な挑発なんだ。

「そこまで言われちゃ、逃げるわけにはいかないですね」

「逃げない、素晴らしい。じゃあ、雑魚どもを蹴散らして勝負しようか?」

「何だと、さっきから、ごちゃごちゃと言いよってからに」

「君も同じジャージか」

「俺は東堂満や!」

「ほんと元気いいね、学生さんだね」

「うるさいわい! ああだのこうだのと。勝負は道の上でつけたるわ!」

「せっかくの忠告、無駄のようだったね。ではせいぜい気を付けて」

 と天野はF7を急加速させた。

 春風は「兄弟でも何でこんなに性格が違うんだ? ほんと鼻につく」と呟いた。

「そんじゃあ、わいも行くで!」

 と南大の平良も自転車を走らせた。

「春風、あの天野兄とガチやり合うんか?」

「やらない訳にはいかんよ。相手が誰であれ、喧嘩売られてしまったからは」

 春風はシフターをクリックして、雨足が強まるなか急発進をした。

 東堂と南大付属館山もそのあとを追っていった。

 

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