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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第二章 よろしく鎌倉学院
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第70話 復讐のガリ勉秀一郎

 4月11日 春風の初授業

「おはよう、春風くん。もう大丈夫なの?」

 雪が病み上がりの春風の目の前の席に座り、うつむいて引き出しに荷物を入れていた彼の顔を覗き込み、顔色を伺った。

 春風は「この間はありがとう。保健室」とシャキンと背筋を伸ばして雪に頭を下げた。

「心配しましたよ。春風くん」

 と笑顔になった雪は、春風の頭を撫でた。

 とそこに見知らぬ男子がやってきて、雪を追い払うように春風の目の前の椅子に座った。

「君があの早乙女春風だね。全国模試10位の。改めてどうも、俺の名は羽柴秀一郎。全国模試11いの。そして、俺は必ずお前を超える。そのために生まれて来た男なんだからな」

 なんだ、なんだ、なんだ?

 いきなり凄いの乱入して来た。

 見るからに秀才のオーラ漂ってるじゃないか?

「早乙女です。よろしく」

「いやだ。朝から女といちゃつく奴は許せねぇ。ここはエリート集う特進クラスだ。異性交友は御法度だ」

 と話している間に、廊下にこれまた見たことのある男子が「雪ちゃん。おはよう。元気かい? 今日も一日頑張ろう」と大声で叫んだ。

 東堂だ。

 東堂の声に「帰って下さい」と言いながら迷惑そうな顔をした雪は、手に持っていた黒板消しを投げつけた。

「またね。雪ちゃん!」と手を振りながら「春風、夕方ちょっと顔出せや」と東堂はもう一声を春風にかけたのだった。

 秀一郎は呆れた顔をして「ああ言う奴が友人にいるなんて、君らも恥ずかしい人たちだ」と春風と雪に上から目線で冷ややかに侮蔑した。

 そして、秀一郎は春風に戦線布告を行った。

「六月の定期考査で、私はお前を倒す。しかも圧倒的な勝利によってねじ伏せてやる。覚悟しとけよ」

 春風の隣で立っていた雪も、秀一郎にイラッとした。

 春風はそれでもグッと堪えて「真田さんに言った、『あんな友人いるから恥ずかしい人』って言葉を取り消せ!」

 と秀一郎に謝罪を求めた。

「何を謝る必要がある」

 と謝罪なし。

「東堂は、まぁ、百歩譲って友と言われても僕は我慢してやるが、真田さんは東堂と友達ではない。だから謝れって言ってんだ」

「……ええよ。誤ったるわ。すいませんでした」

 春風はちょっと風変わりな悪態の秀一郎を、心の中でやじり倒した。

 

 時は過ぎ、一日の授業が終わった。

 春風は、東堂から送られたメッセージの時間と場所をチェックしたあと東堂と落ち合い、鎌倉学院高等部旧自転車競技部屋内練習場に向かった。

 倶楽部ハウスには筋力トレーニング用機材やローラーが用意されており、かつて自転車競技部が存在していた証を知ることになった。

 市川先生が中で我々の到着を待っていた。

 そして、僕らを見つけて近寄ってきた。

「よう、おふたりくん、待ってたよ」

 倶楽部ハウスには、三人程の利用者がいて、先生の話ではOBが来て自由に練習しているらしい。

 ダンベル、ベンチプレス、レッグプレスやラットプルダウンなどトレーニングマシンが設置され、まさにスポーツジムさながらの環境が用意されていた。

 視線を移すとローラーが数台用意されており、そのうちの二台を誰かが使用していた。

 春風はローラーに乗る利用者と目が合って、向こうが手で挨拶されたため、軽く会釈してみた。

 市川が春風に「今君が挨拶したのはクライマーの花山一角はなやま いっかくさんで、僕が一年時に三年で活躍したエースクライマーだよ、その奥で回しているのがOBチームのキャプテンの品川元彦さんだ」と紹介をした。

 春風と東堂に市川から練習時間の案内がなされた。

「この倶楽部ハウスの運営は自転車競技部が廃部になってからは、OBから集めた寄付金を財源に、鎌倉学院自転車競技部OB会と、僕が立ち上げたERCが協力して運営を行っているんだ」

「なるほど、だから僕らも練習がここできるんですね」

「そうなんだよ、春風くん。そして倶楽部ハウスの利用については、大会直前、つまり次はGWの箱根湘南サイクルライド大会直前の期間を除いては、曜日と時間を振り分けて利用することにしているんだ」

「今の期間は、ズバリ直前期間なんすか?」

「そのとおりだよ、東堂くん。大会一ヶ月前になるからね」

「ERCのメンバーさんは、お見えになるんですか?」

「もちろん来るよ。ただし、社会人ばかりだから、十九時になるとメンバーが揃うよ」

「今日僕たちが学生服のまま呼ばれた理由はなんですか? 練習できるなら準備して来たのに」

「今日は大会前の大切なミーティングを十八時から予定しているんだ。あそこのミーティングルームでね」 

「わざわざここでミーティングをする訳あるんすか?」

 市川が手招きでミーティングルームまでふたりを連れて行き「まあ、ドアを開けてくれ」と声をかけた。

 東堂は「俺が開けるわ」と先んじてドアを引くと、驚きの光景にふたりは息を呑んだ。

「なんや、これは?」

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