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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第二章 よろしく鎌倉学院
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第51話 名物カツカレー

 4月8日のアルバイト

 前日の箱根湘南サイクルライドの下見走行の疲れもなかったかのように、春風は早朝からニコニコマートで働いていた。

 頑張れる理由はただ一つ、紗矢香も出勤しているからであった。

「春風くん、昨日はどうだった? 下見走行は」

「それがね、本番さながらの本気走行になってしまったんだ」

「どう言うこと?」

「箱根の強豪チームが勝負を仕掛けて来たのさ」

「仕掛けてきた?」

「正確にはこちらがやり過ごせば、起こらなかったガチンコレースだったけど、自転車乗りとして箱スカにだけは道を譲りたくなかった、そんなメンバーの気持ちが戦いへと発展したんだ」

「まさに、自転車乗りの意地って感じね」

「紗矢香さんいい表現だね、意地がさせた勝負だった。結果は僅差で負けはしたけど、本番に繋がるいい勝負だったよ」

 そこに吉野さんがやって来て、口を挟む。

「あなたたち、おしゃべりが過ぎるわよ、って言いたいけど、なにか楽しそうね?」

「昨日の自転車の話なんですが……」

「自転車?」

「そうです。ロードバイクで箱根を登っている途中に、箱スカ、あっ箱根スパイラルってチームが、僕らERCに仕掛けできたんです。それで、勝負になって盛り上がったんです」

「なるほどね。箱スカね、確か隣に住んでる子、名前、眞露って言うんだけど、珍しいよね、知ってる?」

「知ってるも何も、その眞露さんですよね? 箱根スパイラルのエースですよ」

「へーそうなの、要くん、そんなに有名なの?」

「超絶スーパースターですよ」

「そう言えば、自宅に眞露くんからもらった自転車があったな」

「えー、そうなんですか? それロードですか?」

「そう言うのは分からないけど、高校時代に使ってた自転車を要くんのお母さんから譲ってもらったの」

「そんなことあるんですか?」

「実は弟が要くんの自転車カッコいい! って言ってたら、高校上がる時にお祝い代わりにいただけたの」

「吉野さん、その自転車見れますか? めちゃ興味があるんですが」  

「いいわよ、弟の部屋にあるはず。私の家この近くだから、仕事お昼あがりでしょ? 紗矢香もあがりでしょ?」

「ええ、まあ」

「紗矢香さんもついて来て下さいよ」

「私、ですか? まあ、いいですけど」

「じゃあ決まり。残り三十分よ、ふたりとも頑張るよ」

「はい」

「あーい」

 

 ニコニコマートから歩いて五分くらいか、片瀬商店街の中に吉野さん宅はあった。

 ちょっと、これ吉野さん宅?

「喫茶ヨシノ、ここが私の家よ。驚いた?」

「驚きました」

「私も」

「んで、ここが眞露くんよ」

「ここは……」

「そう、自転車店よ」

「眞露さんは自転車の申し子だったんだ……」

「カラン、カラン、ただいま!」「カオルちゃん、お店から入っちゃダメじゃないか」 

「ごめん、ごめん」

「で、そちらは?」

「バイトでお世話になっています、神楽紗矢香です、で彼は早乙女春風です」

「君たちは高校生かい?」

「はい、鎌倉学院です」

「なら君たちは、おじさんの後輩だ! まあ、お昼でも食べていきなさい」

「お父さん! 私のお客なんだからね」

「まあ、そう言うなよ、ささぁ、こちらへ。喫茶ヨシノの看板メニュー、カツカレーを食べてってよ」

「紗矢香、春風くん、パパのカツカレー、喫茶店で出てくるようなのとは全然違うから、お世辞抜きに至福の美味しいわよ」

 喫茶店で出てくるカレーってのをよく知らないからな、まあ、何はともあれ食べてみますか?

「ではカツカレーをお願いします」

「ではお待ち下さい、カオルも食べるんだろ?」

「そうする」

 三人は四人がけのテーブルに移り、カオルは眞露について、覚えていることを再び話し始めた。

「眞露要は今は競技自転車を作っているゲルニカに勤めていて、社員寮で生活しているわ」

「ゲルニカ? 僕は聞いたことないけど」

「そう、でもアラカワ自転車は知ってるよね?」

「それは有名ですからね」

「ゲルニカは、そのアラカワの子会社で『箱根スパイラル』はゲルニカで編成された特別チームなの」

 カオルさん、さっきは箱根スパイラルを知らなさそうな素振りしてたけど、実は知ってたんだな。

「そうだ、要はいつも試合の日は、ここで朝からカツカレー食べてたよ」

「そのカツカレーだよ、お待たせ」

「見た目はイメージしていたのと比べて、黄色くない、なぜ?」

「早乙女くんだったね。その答えはあそこを見てごらん」

「あれは、香辛料ですか?」

「そのとおり、うちではカレーの具材と香辛料を駆使して、最高のカレーを開発したんだよ」

まずは、一口、

「ウマい!」

 なんだこれ、ヤバカレーだ。

「美味しいです」

「ふたりともしっかり食べてね」

 

「ご馳走さま!」

「マスター、美味しかったです」

「じゃあ、弟の部屋に行きましょうか」

 カオルの後をふたりは追うように階段を登った。

 そして扉を開け中へ入った。

 どうしたことか? 

 

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