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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第一章 湘南の春休み
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第5話 ようこそ、パーラー七里ヶ浜へ!

 春風の寮長就任に向けた問題は、どうやら市川と学長との間でクリアしたようであった。

 残るは就任日までの宿の確保だが、果たして、上手く行くのやら?

「パーラーで(よろ)しいのではないでしょうか?」

「美涼のとこか?」

「ええ、姉の店の三階が宿泊所になってますから、三日間、何とか頼めるんじゃないかと」

「大丈夫か?」

「大丈夫ですよ。なぜなら早乙女くんはイケメンで、入学試験もトップ合格した秀才ですから、姉が断る理由なんてないですから」

「そ、そう言う問題なのか? お前のその物事の捉え方、打算的過ぎないか?」

「えっ? 何か間違っていますか?」

「まぁ、とにかく美涼に事情を話し、しっかりと早乙女くんの面倒を見てもらうんだぞ」

「もちろんですとも、お任せあれ!」

 

 

 パーラー七里ヶ浜

 

 

「カランカラン」

「いらっしゃいませ! お一人様ですか?」

「はい、一人です」

「じゃあ、二階にご案内します、ではこちらからどうぞ」

 小麦色の美少女か、学生さんなのかな? そんなこと思いながら、僕は彼女について階段を上がった。

「うわぁ」

 僕はいきなり不意打ちをくらった。

「驚きでしょう?」

「はい」

 柄にもなく、店の雰囲気に息を呑んだ。

 フロア一面は無垢張り床で、サーフボードやウェットスーツなどでコーディネートされた、それはまさに「湘南」をイメージした空間であった。

 続け様、店員に連れられてフロアの奥にある通路から屋外に出たところに広いオープンデッキがあり、湘南が一望できる絶景スポットとなっていた。

「うわぁ、なんて素晴らしい景色なんだ!」

「そうでしょ!」

「ねえ、あれが江ノ島ですよね」

「その通りよ……あなた鎌学の新入生でしょ?」

「分かるのですか?」

「ええ」

「一年生になります」

「じゃあ、私の後輩ね、よろしく」

「早乙女春風です。未熟者故に、よろしくお願いします」

「よろしい。その爽やかに加え、へりくだるところ気に入ったわ」

 この美少女店員は自己紹介を始めた。

「私は葉山翔子。翔子と呼んでいいわ。女子サーフィン部に所属する新二年生よ。分からないことがあれば気軽に聞いてよね」

「心強いお言葉、ありがとうございます。では早速一つ」

「このチケット使えますか?」

「ん? あれ? このパフェの無料券、市川先生?」

「はい、これを頂きまして」

「ちょっと待っててね」

 と言い残してこの場を離れた。

 それからまもなくして、翔子が店主らしき女性を引き連れて戻ってきた。

「こんにちは、店長の市川よ」

 店長は春風を下から舐めるように品定めしてから、

「よし、問題なしよ。うちのパフェ食べていって。地元じゃ知らない人はいないわ、美味しいから」

 これ、ひょっとして、無料券そのものの有効かどうかの話ではなくて、無料券に相応ふさわしい人物かどうかが判断基準なの? 一体どんな基準さ?

「あの、市川店長って……」

「ええ、ゆうの姉よ」

「え、遊って?」

「そう、聞いてないのね。市川遊、鎌校で教師をしているの。私の弟なの。私は市川美涼よ。よろしくね」

 まさかの姉弟とは……

「トゥルルルル、トゥルルルル……」

「えっ、ちょっと待って」と言いながら、ジーンズのお尻ポケットからスマホを取り出し、美涼は電話を受けた。

「あっ、ゆうちゃん。どうしたの?」

「姉さんにお願いがあって……」

「また、面倒なことに巻き込まれたの?」

「凄いや姉さん、お見通しですね」

「何十年、遊の姉ちゃんやっていると思ってるの? ちゃっちゃと話しなさい」

「あのさ、新入生を三日くらい泊めてあげてもらいたいをだけどさ」

「ははーん。早乙女くんのことだね」

 僕のこと? 何々?

「やはり分かっちゃったか」

「いいわよ……その代わり宿代分、店手伝わせるからね」

「ちょっとさ、早乙女くんに代わってくれないかな?」

 美涼が春風にスマホを差しだし、「市川先生からよ」と電話を代わった。

「あ、代わりました、早乙女です」

「やあ、お待たせしたね、早乙女くん。パフェはどう?」

 何? この人? 

 いやいや、落ち着け春風!

「あの、寮長の件、どうでしたか?」

 って、なぜそちらから話さない、市川先生!

「上手く話がまとまったから、四月一日から君は寮長として、女子寮で住み込み就労してもらいます」

「あの?」

「何?」

「三月はあと三日ありますが?」

「ああ、そうそう。そのことなんだが、君も薄々勘付いてると思うけど、その店でも住み込み就労でお願いしたい」

美涼 春風くんに惚れちゃダメよ!

翔子 えっ、どうしてですか?

美涼 だって私が脇役になっちゃうじゃない!

翔子 えっ、ヒロインになるつもりだったのですか?

美涼 次回「よろしくね、新入りくん!」

翔子 この思いよ、届いて!

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