表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第一章 湘南の春休み
4/264

第4話 その規定、どうなのさ?

 男子学生でありながら、女子寮の寮長に推薦されることになった春風であった。

 果たして、寮長になって生活基盤を勝ち取ることができるのか?

 市川先生が僕の自転車をバイクと言ったのは、種類がロードバイクであったからであり、そのバイクを見ながら、

「このジオスブルーは映えるね」

 と僕の自転車を褒めたんや。そして、

(ちな)みに私の愛車はビアンキさ!」

 と何気にバイク好きをじ込んできた。

 自転車、好きなんやと聞くのもあれやったが、

「先生はロードやってるんですか?」

 と振ってみた。

「まあね……良かったら早乙女くんもやってみないか? ロードレース」

「実はですね、僕、高校生以下の関西自転車競技会で中二の時に、五位入賞したことあるんですよ」

「えっ、きみガチ勢なの?」

「まあ、ガチと言われればガチでしたね」

 ほー、良い話聞いたぞ。市川は我慢できずに、

「経験者大歓迎。僕のチームに入らない?」

 と勧誘を始めた。

 そう来ましたね。でも、よく分からへんし。

「まぁ、考えときます」

「心配ないから、大丈夫、大丈夫」

 押売り勧誘じゃないか。

 まあ、なぜか悪い気はしなかったが、とりあえずサラリと流した。


 春風は自転車を引きながら、パーラー七里ヶ浜に向かった。

 そして、市川は重たい足取りで職員室に戻った。

 

 市川は職員室に戻ると、

「市川先生、ちょっとよろしいかな?」

 と山科学長から声がかかり、応接室へと手招きされた。

「バタン」

 市川が扉を閉めて、ソファーに座る山科学長の前に腰けた。

「市川先生! また問題を起こしたそうじゃありませんか」

「もう、お耳に入ってましたか?」

「先生たちがお前のことを呆れてたぞ」

「いやぁ、おじさんに心配かけてすみません」

「頼むぞ! まぁ、お前さんが私の姉の子であることは伏せてあるから、お互いに迷惑はかかりはしないが、こないだみたいに美涼みすずの店のただ券を、お前が学内で配布したああ言う不祥事は、もう二度と御免だからな。次はかばい切れんぞ!」

「分かってますって。反省してますから」

 と扉のスリットに人影が映り込んだ。

「コンコン、学長、お茶が入りました」

 市川は扉を開けた。

「ありがとう、香山先生」

「いえいえ」

 香山は二人のやりとりを気にしながら、応接室から退室して行った。

「市川先生、で、今日は何のトラブルだったのかね?」

「ええまあ、それがお恥ずかしい話なんですが……」

「さっさと話しなさい」

「はい。実は男子新入生の性別を女性と勘違いしまして、学生寮の入寮許可を出してしまいました」

「……」

「男子寮は来春から入寮を開始しますので、当然、今年は寮には入れません」

「ところで、その新入生から、高額寄付金を受け付けていたかどうか、調べはついておるのかね?」

「寄付はありません」

「そうかね。まぁいずれにせよ、学校側の手落ちな訳だから、なんとかせねばなるまい。しかし……今からじゃ、アパート探しは厳しかろう?」

「ええ。そこで私に一つ妙案がありまして……」

「何だね? 女子寮に住まわせるってのはダメだぞ。お前なら言いかねないからな」

「学長、それです。女子寮に入ってもらうんですよ」

「またとんでもないことを! お前の頭ん中は一体どうなっとるんじゃ?」

「よく聞いてください。実は、女子寮の秋田寮長が急遽退職したいと言われておりまして、四月から次の寮長を雇うまで、私が寮長をする予定だったのです。そこで、この学生を寮長として雇いいれたらどうかと思いまして」

「学生に寮長? しかも女子寮に男性寮長なんて、問題あるんじゃないか?」

「いいえ、問題はないかと」

「何? ないのか?」

「はい、問題はありません。あくまで規定上の話ではありますが。運営規定には、寮長の年齢や性別、学生が兼ねられないなどの制約は一切ございません」

「異性の学生が寮長を兼ねるなんて発想自体、想定外なことだから、規定されてないと解釈するのは、(いささ)か無理があるんじゃないかね」

「この規定は私が作りました故、その想定は当然ありましたからご安心を」

「本当に意味がわからんことを言ってくれるなぁ、市川先生。それと随分と緩い規定をつくったもんだ。まっ、それはそれだな」

「学長、ありがとうございます。」

「ところでその学生、氏名はなんて言うんだ?」

早乙女春風さおとめ はるかです」

()()()()()、確かに名前の響きは女性だな」

「学生カードの個人情報欄には男に○が付いていましたから、こちら側が、いえ、私が錯誤して入寮許可証を出したことになります」

「ふん、それならばやむを得ない。そうだ! 今後のPTA対策として、早乙女春風を私の身内とでもしておくかね」

「流石、山科学長。素晴らしい対策ですよ。いやー素晴らしい」

 

 この応接室の密談では、誰にも聞かせられない程、教師にあるまじき隠蔽工作が図られていた。

 

「ところで市川先生、秋田寮長の契約終了まで後三日程あることになると思うが、それまでの間、その学生をどうするつもりか?」

学長 いつになったら盛り上がるのかね?

市川 まあ、慌てないで下さい。

学長 前置き長いんじゃないか?

市川 次に期待しましょうよ!

学長 次回「ようこそ、パーラー七里ヶ浜へ!」

市川 見逃さないでね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ