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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第一章 湘南の春休み
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第32話 タンデム許可?

休憩

 

 二時間が経過し、吉野さんから休憩を取るよう言われ、僕は事務所に入った。

 そこには不良娘の紗矢香が、ぼんやりとスマホを見ている光景が目に飛び込んできた。

 さっきは優しくレジのこと教えてくれた彼女はどこへやら、「お疲れ様」と声をかけた僕のことに、一瞬気づいたようだが、なんの反応もなく、急に気まずい雰囲気に包まれた。

 なぜ?

 関心がないにしても、同僚なんだから、挨拶くらいあってもいいだろ?

 空気が重く感じる!

 けど、このままでは胸が痛すぎる!

 こんなままは嫌だ!

 もう、やってやるしかない!

 しれっといくぞ、春風!

「さっきは、助かりました。ありがとう」

 とどんな反応があるのか、ドキドキしながら思い切り、彼女の隣に座ってみた。

 彼女は「早く覚えなきゃね!」とだけ口にして、スッと立ち上がり、スマホをお尻のポケットに入れた。ほんと、こちらの表情がみえてないのか?

 君と話したそうにしている僕の顔が!

 そそくさと店に戻ろうとした不良娘に、破れかぶれに僕は問いかけた。

「あの! 一つだけ聞かせてもらえないかな?」

 紗矢香は背を向けたままピタッと立ち止まり、春風の質問に備えた。

「この店に、神楽って名の店員さんがいるはずなんだけど、ご存知ないですか?」

「……知ってるけど」

「そう、ですか」

「それが、どうか?」

「いや、いろいろと人生のアドバイスをもらってたから、ただ、お礼がいいたくて」

「……彼女のこと、勘違いしないで。そんないい人なんかじゃないから」

 え? どうしてあなたがそんなこと言う?

 天のじゃくな人だ。 

 分かったよ。もう、神楽さんの話題は租界しちまおう。

「僕の勘違いなんですね……すみません」

「じゃあ失礼」

「あ、あと、もう一つ、聴きたいことがあるんです!」

「質問は一つじゃなくて?」

 紗矢香は春風に釘を刺すかの如く、質問を跳ねつけた。

「どうしてもだめ、ですか?」

 春風はせつないきもちでそう聞き返した。

「……どうぞ」

「どうも、ありがとう……」

「それで……何?」

「バイクのことです」

 紗矢香は、先程までの無機質な態度から一転、質問に耳を傾けるつもりらしい。

「バイクって、やっぱり自転車より速いんですよね?」

 春風は固まり、咄嗟に切り返した。

「えっ、それどう言う意味?」

 紗矢香は、突拍子もない質問をした春風に呆れ顔をして見せた。

「だから、僕を後ろに乗せてもらえませんか?」

 この子、何言ってるの?

 まったく!

 女の子の後ろよ! 

 まだ誰も乗せたことないのに!

 紗矢香の顔が今度は歪み出した。

 えっ、僕、何言っちゃってる?

 調子に乗って言っちまった。訂正、訂正!

 女の子を後ろから捕まえてタンデムなんて、変態だと思われたじゃないか!

「本当にごめん……今のはつい言い……」

「仕方ないんだから——んじゃまあ、一時にバイト終わったら、その足で行きたいところあるから、付き合ってよね」

「……いいの?」

「ええ、ただし、後ろから変なことしたら、振り落としちゃうからね!」

 しません、しません。

「じゃあ、仕事戻るから」

「はい」

 ……やった!

  

紗矢香 私のバイクは速いから。

春風  僕の自転車も速いよ。

紗矢香 じゃあ、どっちが早いと思うのよ?

春風  それは答えが分かってるひとの偏見だ!      次回「バイト上がりの不思議な関係」

紗矢香 どうしたものか? 

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