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男も女も湘南ライドで恋愛を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
やって来ました湘南の春休み篇
26/29

第25話 決着、春風VS東堂

——春風は折り返しのコーナーの幅を瞬時に判断して、コース取りをアウトへ移動させ、自転車のスピードを下げるどころか更に加速させ、体を極端にイン側へ倒しながら、地面と右足がスレスレの体制で曲がり切った——

 

「なっ、なんてターンだ! あり得ん!」

 東堂は詰めていた距離を空けるのを覚悟で、ユーターンを減速し周りきった。

「おのれ、春風! まだだ、ここから抜き去ってやる!」

 そうだよね、東堂くんここからだよね?

「でも、本当のスパートはこの先だよ!」

「分かってるさ、俺だって! がしかし、この条件ならここから行っても俺の勝ちだ! いっくぞ、やぁーー!」

「すごいね、その気迫。君、強いんだね。関東随一のスプリンターか、参ったね。このスプリント勝負、予定以上に早く仕掛けないと、捕まりそうだね」

「行かせるか! コンニャロ!」

 

——と、その時、空気が一瞬変わると同時に追い風を春風の背中が捉えた——


「今だ、行ける!」

 この風ならアシストになる!

「えーい、行っけぇー」

「なっ、なんだよ、その速さ? こっちだってマックス振り切ってるんだぜ!」

 なんだこれは、追い風? これに乗ったのか? 風の春風、か。

 でも、その速さは、想定外の速さ。どんどん離されていく。

「畜生!」

 

——春風は勝負に勝ち、東堂は勝ちを逃した。東堂の慢心が、いや、それ以上に春風のレースの組み立てに、ここ一番の追い風が味方したからであろう——

 

「……完敗だ。俺の負けだ」

「そうだね。でも、君の慢心と追い風がなかったら、勝敗は結末は分からなかったんじゃないかって、思うんだ」

 クソッ、なんてカッコ付けやがって。でも、こいつやれる奴だ。

「なぁ、お前は俺のライバルだ! 認めてやる」

 東堂くんは本当熱い奴だ。

 けど、ライバルか? いなかったな、そんなこと言う奴。

「そうだね、ライバル」

「勘違いするなよ。ライバルと言っても、俺とお前は敵同士だ! 忘れるなよな!」

「はい、そうですか」

 まったく、お子ちゃまみたいな奴だ!

「じゃあな」

 ん? 何か忘れてませんか?

「ねぇ、浜焼きはゴチになれますか?」

「ああ、次の機会にな」

「ええ?」

「違う、違うぞ。約束を反故にする訳ではないぞ、そう、これは貸しだ。次に対決するためのくさびだ!」

 君、何を言ってんや。

 んー。

 まあ、いいか。

 多分、お金ないのかな?

 見たところ、高校生? いや中学生か? 近くで見るとタッパないしな。

 あれ、フレームになんか書いてあるぞ。

『ユキ マイラブ』ってなんだ?

「あの、ユキって誰?」

「フフッ、よく気がついてくれたな。教えてやるよ! 俺の愛しの彼女の名だ。真田雪。いい名前だろ?」

 まさかのまさか、真田雪?

「あのさ、君ひょっとして小田原から来た、とか?」

「お前、俺ってそんなに知られた男だったのか?」

 間違いない。雪の知り合いか?

 でも、彼女っていったなぁ。

 誰とも付き合ってるはず、ないんだけどな。

「いや、知らないけど」

「まぁ、いいわ。次に会う時は、必ずその借り返してやるからな。じゃあな」

 あいつ、しつこい感じだな。

 また、どこかで声かけられそう。

「さっ、昼飯に浜焼き食って帰るかな?」

 

「ブルブル」

 あっ、ラインか。

 今、七里ヶ浜にあるエスプレッソDワークスにいるのか? 今から来れるって、一人なのか? 美味しいパンケーキ食べましょって、場所は、海岸線沿いの店か。 約束なしに、いつも突然すぎるよ。でも、期待してたら悪いからな。じゃあ、行くとして、そうだな二十分くらいかな。今から向かうよっと。

「ブルブル」

 ハートマークか。

「はいはい、待って下さいな」

 僕は、焼き蛤とサザエを食べた後、江ノ島を後にした。

春風 どうしてそんなに強気なの?

東堂 強いからじゃ、文句あるのか?

春風 別にいいけど、絡まないで欲しいんだけど!

東堂 負け惜しみは、負けてから言ってくれ!

   次回「気になる女の子」

春風 君のことは気にならないから!

東堂 なんだと!

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