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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第七章 人も羨む夏休み
207/214

第205話 ライバルになりたかった憧れの選手

 箱根スパイラルに憧れても、その選手に簡単になれるものでもない。

 そんなスーパーチャンスが目の前に来たんだから、狙うのが猛者もさ宿命サガなんですよ。

「市川先生の話は終わったの?」

 着替え終えた翔子は、嬉しそうに戻って来た春風に声をかけた。

「まあ、そうね」

「なーんか嬉しそうな顔してるじゃない? さては何か良いことがあったんでしょ。話してみなさいよ!」

 と翔子に押し切られた。

「実は、憧れのロードレースチーム・箱根スパイラルのメンバー募集があってさ、そのチャレンジレースに出られるみたいなんだ! 凄い話でしょ?」

 無邪気にはしゃぐ春風に翔子は、

「凄いね、けどね、市川先生のチームはどうなってしまうの?」

 と苦言を呈すと言うより、ERCの戦力ダウンになることを見透かしたように問いかけた。

「戦力のことを言えば、身も蓋もないが……ERCに集まるメンバーだって自転車好きの仲良しの集まりではないんだ。中には強いチームで腕を磨き、更なる高みを目指したいと考える選手だっているはずだよ」

「高みを目指すか……確かに、選手にとって、それが本質には違いない。わかるよ」

 翔子は春風の身を置く自転車の世界にも、自身が身を委ねるサーフィンの世界と同等の本質を垣間見た気がしたのだ。

「翔子さん、もうこの話はやめにしませんか?」

「ええ?」

「だって、この話には結末が見えていて、ERCは僕にとっては大事なチームだけど、ステップ(踏み台)にして行かなければならないチームでもあるんだ。まぁ、こんな言い方シュールかもしれないけど」

 と話の腰を折った。

「そうね……春風がそう思うなら、チームのことはひとまず置いておいて、了解!」

「そうだ、翔子さんのサーフィンの展望なんかを聞きたいな」

「ん? どうしたの急に? サーフィンのことなんて聞いちゃったりして?」

 と目を丸くして、翔子は聞き返した。

「いやぁ、サーフィン動画を結構見て来たからか、やって見たいなぁと思えるくらい身近に感じているところで」

「なるほどね。じゃあ、教えてあげよう。私はCTシーティー選手になりたいのよ。CTチャンピオンシップ・ツアーはね、WSLワールド・サーフ・リーグが主催する世界のトップサーファーたちが参戦する最高峰のステージのことなのよ。最高の波場を転戦するCT選手は憧れなの」

「へー、凄いね、でも翔子さんなら実現できるんじゃないのかな?」

「まさか、そんな甘くはないけどね、でもね、希望だけは持っているよ」

「そうなの?」

「そうね、春風が知っている人でそれに近い選手は、フィリス女学院のララHバイス選手じゃないかな?」

「この間のダービーの選手か……確かに別格だったね」

「あとは春風は知らないけれど、かつて私が超えたいと思っていた同世代の選手がいたの……試合前の練習中に事故を起こして、いや、巻き込まれたのかもしれないけれど、その後、突如この世界から消えてしまった天才サーファー如月(きさらぎ)紗矢香」

「如月紗矢香?」

 とかくサヤカって名前をよく聞くものだ。

「ライバルになりたくて、いつも熱く波に喰らいついたこと、覚えてるわ」

「でも、もういないんだよね」

「ええ」

「なんか良いね、そう言うのってさ。ほんとサーフィンやりたくなるね」

「……いいよ、やりたいのなら教えてあげようか?」  

「えっ、本当に? 時間作れるの?」

「そんなの訳ないよ。ただ、やるなら朝から始めたいから、明後日はどう?」

「えっ、そこはゴメン、無理なんだ。自分から切り出しといてあれだけど、明後日から友達と泊まりの旅行に出かけるんだ」

「あれ? そんな仲良しな男の子、いたのかしら?」

 姉さん鋭いな。

 待て。

 不用意に「女子とお泊まり」なんて言ったらどうなる?

 でも女子がふたりだもんな。

 まあ、いいか?

「実は女子ふたりと僕の三人で行くんだ」

「ちょっと、まさか……女の子とお泊まりなの?」

 あゝやっぱそうなるのか?

「まあ、女子はふたりで僕はオマケみたいな感じだから。ほら、高等部選手権で優勝したメンバーだよ」

「えっ……ゴメン、そうなんだね。メンバーのことは知らないけど、まぁ、戦友ってとこだね?」

 あれ? 意外とあっさり。

「まぁ、そんなとこ」

「どこ行くの?」

「東京ドリームランドに行くんだ」

「ドリームランドか、良いね、私も一度、行ってみたいな」

「あれ、翔子さんて、遊びに行ったことないんですか?」

「そうだね……連れて行ってくれる親も、一緒に行ける友達もいなかったからね」

 なんか、しんみりしちゃったな。

「じゃあさ、今度、翔子さんを僕が連れて行ってあげるよ」

「それは嬉しい話だね、家族旅行みたいでワクワクするよ」

 やっぱりデートの感覚ではないんだね。

 家族旅行でワクワクか。

 どこまでも姉弟なんだ。

 まあ、僕も同じ感覚なんだけど、成立しちゃうとこが凄いわ。

「ねえ、ところで姉さんには彼氏はいないの?」

「私? 私はね、サーフボードが彼氏みたいなものかな?」

 なんともスポ女的発想。

 こんなに見た目も中身も申し分ない素敵な女性なのにね。

 ボードが彼氏……。

 ふふふ、自転車が彼女の僕とまったく同じ発想だね。よく似てること。

 百々のつまり、お互い乗ってて気持ちいい間柄って訳だね。

「その感じ、よーくわかりますよ」

 

 如月紗矢香って誰なんでしょうね?

 みなさんは気づいて見えますよね?

 気づいていない方は、この先の話で答え合わせをして見て下さいな。

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