第204話 箱根スパイラルへの道
夏祭りの出店が終わりホッとする春風に、またワクワクする話が舞い込んできたよ。
それではお見逃しなく!
ここはランチタイム時のパーラー七里ヶ浜です。
「春風くん! 下膳と洗い物頼める?」
「は〜い、行きますから!」
ランチタイムはピンチタイム、なんてね。
ふーっ、あと一息だ。
「お疲れ春風、なんか辛そうね?」
あっ翔子さん。
よく見てるな。
「ちょっと疲れが溜まってるのかな?」
「そうだね、春風はちょっと頑張りすぎる傾向があるよね、力を加減できたら良いのにね」
さすが我が姉さま、僕のこと良く知ってるね。
僕の取説みたいだ!
なんてね。
「姉さんは、何事にものめり込まないタイプでしたっけ?」
「知ってるくせに! 何にでも力が入ったちゃうタイプだよ」
まあ、血は繋がらねど、なんでも全力投球の似たもの姉弟だから、ウマが合ってるんだな、きっとね。
「はいありがとう、各自休憩に入ってもらって良いよ」
と店長美涼が声をかけた。
そして春風に対しては、
「今日はありがとう。おかげで助かりました」
と頭を下げた。
「いやいや、またいつでも声をかけてくださいね、ピンチの時には駆けつけますから」
と頼もしい、春風らしい返事をして見せた。
とそこに割り込んできた教師市川が、
「それは良い心がけと見た。私の困りごとにも積極的に協力をお願いしたいものだ」
と口を挟んできたのだ。
「困りごと……ですか?」
「聞く耳あるみたいね?」
と市川は聞き返したあと、
「実はさ、箱根スパイラルからお誘いがあってね」
「ええ、眞露さんからですか?」
「まあ、そうなんだけどね」
「どんなお誘いなんですか?」
と春風は少し興奮気味に市川に迫った。
「知っての通り箱根スパイラルは世界で戦うために作られたチームで、優秀な選手が集まる、日本でもトップクラスのチームなんだ」
「はい、知ってます」
「先月、箱スパが参加した大会でのことなんだが、レース中に自転車事故に巻き込まれ怪我をした選手が二名、チームを離脱することになったらしいんだ」
「それで?」
「今回、レギュラー選手又はレギュラー候補選手として三名のメンバー募集をするらしいんだ」
「募集なんですか?」
「いや、我がチームERCには、えへん、推薦枠を一名分用意すると打診があったんだ」
「じゃあ、ERCの誰か一人は箱スパのメンバーになれるんですね……あゝそれはERCからメンバーがいなくなると言うことですね」
「ご察しのとおりさ。仲間内で話したんだが、選手としてやっていけるかと言う問題もあるし、今の勤めを辞めないといけないしね。嬉しいような困ったような、そんな感じなんだ」
「なるほど、僕が学生だからと……」
「まあ、そんなとこ。推薦辞退は容易いが、こんなワクワクするチャンスも人生でそうはないしね、メンバーは悩み中なんだよ」
「わかります。あー、でもあのチーム力は別格だからなぁ」
「まぁ、そんなところだ。推薦枠以外に個人トライアルもあるから、そこで優勝できなかったら推薦枠を返すのも良いかと思ってね」
「で、いつですかトライアル」
「九月中旬に、箱根で個人タイムトライアルが開かれるよ」
「参加一択ですね」
「やる気だね」
「はい、気合い入れます」
こうして、市川はERCのメンバーを箱スパに渡すことになる道を辞退することなく、むしろ積極的に送り出してあげようと気持ちを持ち直して話を終えた。
九月に箱根スパイラルのトライアルに参加する意向を示した春風であったが、ERCにとっては死活問題にもなりかねない状況下で、市川はチームより選手の気持ちを汲んだようだ。
少し先になりますが、トライアルレースをお楽しみに!




