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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第七章 人も羨む夏休み
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第199話 一気飲み 後編

 始まった一気飲み対決。しかし展開は思わぬ事態へと進んでゆくよ。

 

 さすがに炭酸二本を飲んだ後の三本目には「勝負」と言う大義がなかったら、ただの拷問と思えるその行為に、観客は湧き、笑い、なぜかついでに感動すら覚えるのだ。

 だからこそ、早食い、大食いは注目してしまうのだろう。

 

「ついに決着をつける時が来たな、と言いたいが、お前らも気づいたか? 昨年チャンピオンがファイナルにいることを。司会のおっちゃんがさっき勝負前に言うとったわ。ヤバいぜまったく」

 と東堂が春風や秀一郎に声をかけた。

「何を言うかと思ったら、東堂よ、ピンぼけしてんじゃねぇよ。これは俺らの実力を試すチャンスじゃねえか? ひよってんじゃねえ!」

 と秀一郎は東堂を一括した。

「どちらにしても、彼を倒さなければ真の実力者にはなれないんだ。もはや、我々の争いは不毛と化してしまったのだよ」

 と春風がふたりに声をかけた。

 そして、勝負の刻を迎えた。

 舞台に用意されたテーブルに、衝撃の事実を突き付けられたのだ。 

 なんと、ファイナルは炭酸を三本一気飲みする設定であったのだ。

 この事実に、東堂が意見した。

「ちょい、源氏さん、これ何ですの? 炭酸一本をスカッといち早く飲みあげるのが、一気飲みの美学やなんの?」

「君は……東堂くんだったね? 気に入らなければ、辞退してもらってもいいんだよ」

「あくまで俺らがアタフタするお笑い要素を込みにした、一気飲み大会にしたいんやな?」

 そこに、前チャンピオンの男がしゃしゃり出た。

「すまない。私が昨年の覇者、野辺(のんべ)一気(かずき)とだが、私がこの三本並べを提案した張本人だ」

「野辺さん、あんたは何で三本の戦いを望んだんだよ? 美学がないのか?」

「東堂くんと言ったね、君の言う美学は君の中の価値観である美学じゃないのかね? 普遍的な美学とは言い切れないんじゃないのか?」

 うあ、なんか炭酸巡ってどうでもいい話が、無意味に深掘りされていく。

 そこに沈黙を決め込んでいた秀一郎が口を開いた。

「東堂、黙って聞いてりゃガタガタと抜かしよって。俺たち一気飲みファイターは、与えられた戦場でしか戦う意義を持たないことを、お前はわかっていない。三本だろうが百本、いや千本だろうが、それと向き合うのが真のファイターだろよ! クズめ!」

 秀一郎さん、一喝するなら百本、千本は言い過ぎじゃないの?

 クズな言い方してんのはあなたですよ、秀一郎さん。

「失礼! 男東堂、失言になってしまい申し訳ない! この三本一気飲み、受けてやる」

 

「では、みなさん、この三本を飲み干したものが勝者となるのです」

 と司会がまとめると、野辺が物言いたげに、司会者のマイクを奪った。

「みなさん、三本をテーブルおいた理由だけ聞いて下さい。ファイナルに上がる選手は皆強者であり、一本では勝負がつかないから、実はこれらは勝負がつくまで飲み続けるための三本なんです」

 え、続けて飲むんじゃないんだ。

 完全に勘違いじゃないか、俺、カッコ悪! 東堂一生の不覚。

 

 野辺からマイクを渡された源氏は後出しのようにこう言った。

「ルールでは、一本対決ですから、勝負の判定がつかない想定での三本でしたね。まあ、そう言うことなので、よろしく」

 そこに秀一郎がまた物申す。

「お前らふざけんな、三本一気飲みだ! 酷なほど本質に辿り着……」

 と言いかけたところに、舞台袖にいた警備員が秀一郎をつまみ出そうとガッチリ腕を掴み、連れて行こうとした。

「俺は勝たなくてはならないんだ……」

 と秀一郎は言い残し、舞台袖に連れて行かれてしまった。

 そして、前チャンピオン、春風と東堂の三スクネは、炭酸片手にその合図を待つ。

「ピー」

 とスタート合図の笛が鳴る。

 選手は一斉に炭酸を日に流し込む……。

 

「決まった……勝者は東堂か?」

 えっ、僕じゃないの?

 俺が勝ったのか?

 チャンピオンのオイラじゃないの? 

「ん? 同着ですかね? 仕方ない、二本目行きますか?」

 と司会は軽く言い退けた。

「もう一本行きましょうか」

 と野辺はふたりに言葉をかけた。

「もう一本、ですか?」

 と消極的な春風に、

「当たり前やろ、勝負がつくまでじゃ」

 と東堂は言って聞かせた。

 

「では二本目、よーい、ピー」

 と笛が吹かれた。

 

「ゴク、ゴク、ゴク」

 と野辺は二本目を飲み切る。

 この時点で春風は飲むのを中断してしまう。

「もうダメ」

 しかし、悲劇はその二本目に起こってしまった。

「ゴホ、ゲホ……」

 東堂は炭酸を宙に吹き散らしてしまった。

 皮肉なことに、その吹き出した炭酸に虹がかかり、なぜか負けた東堂に惜しみない拍手が向けられた。

「東堂選手、マーベラス!」

 と司会があろうことか絶賛したのだ。


「あの、優勝したのは、オイラなんだけどさ……」


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