第198話 一気飲み 前編
「やあ、みんな、元気してっかい?……、湘南夏祭りの定番、一気飲み大会がいよいよ始まんよ。ところでみんなは司会進行のこの俺さまが誰か知ってるかい?」
「知らない‼︎」
「知ってる!」
「わからん」
うわぁ、この乗り、この掛け声は、どこかで聞いたような?
「あああっ、あいつだ。サーフライドの時の、確か……」
「おれは源氏光や、よろぴくアモーレ!」
思いだした。
ヤバ目のマイクパフォーマーの源氏だった。
それにもっとヤバい奴らがいた。コイツらだ。
「早乙女春風! お前も一発披露するのか?」
こいつ、羽柴秀一郎。
アルマゲドン。
何を話してるのか掴めん。
「言わずもがなだ」
「我がライバル、風の春よ、俺もおるで、東堂満や」
お前もおったんかい、ちょいヤバくんが。
「何を! 俺以外にライバルがいるだと? おうおう、お前は何もんだ? ははーん、お前も全国模試でベストテンに入れなかった男だろ?」
「何だそれ? 俺は常に関東でトップクラスだ、失敬な!」
「俺は全国で十一位だぞ、どうだ恐れ入ったか?」
「だから俺はトップクラスっつうの!」
「ははは、お前は生粋のバカと見た」
「何だと、トップクラスに入れぬ雑魚に言われたくないわ」
「なあ、お前ら二人とも場をわきまえろよ」
春風は呆れながらも、諌めるように注意した。
「うるせえっつうの!」
と秀一郎は春風にイライラをぶつけた。
東堂は秀一郎にイラつき、
「お前がうるさいんだよ! この鉢巻きハゲ!」
「何だと、このチビ野郎!」
もうなじり合いは尽きません。
「君たち、騒ぎは御法度。するなら、他でやってくれるか?」
と司会の源氏が、見るに見かねて仲裁ではなく、一掃する構えに入った。
さすがのふたりもたまらず黙る。
「それでは改めて、一気飲み大会始めるよ!」
源氏がそう宣言した後、流れを説明した。
参加者二十五名
一回戦 五組に分かれ上位二名勝ち上がり。
二回戦 二組に分かれ上位二名勝ち上がり。
決勝戦 四名で対決し優勝を決める。
一回戦は春風、秀一郎と東堂ともに勝ち上がり、二回戦に駒を進めた。
一組目には春風と秀一郎がエントリーされた。
「これは千載一遇のチャンスと見た! 早乙女よ。ここでお前を倒してやる」
ほんとコイツは、口のへらない野郎だ、まったく。
「いいだろう! その勝負、受けてやる!」
ってまあ、普通に一気飲みするだけなんだけどさ。
付き合ってやるよ。
「セット、ゴウ!」
五人が五人とも、腰に左手を当て、ペットボトルを口につけながら右手を頭上に持ち上げ、炭酸を流し込む。
その間およそ三秒から五秒か、途中吹き出し脱落するものもいる中、秀一郎が一番で飲み切った。
春風も続いて何とかフィニッシュして、二位抜けした。
これは見てて楽しい。
一瞬で決まるところが潔い。
「うえっ、二本はキツイな」
と飲み終えたはいいが、ファイナル進出を素直に喜べない。
壇上から春風は、観覧している中に手を振る紗矢香や雪の姿を確認した。
「春風、やったね!」
やったねって、雪さ、今日日聞かない褒め言葉だな。
こちとら隣にいる秀一郎の視線を合わせないようにするのが精一杯なんだから。
「早乙女よ、その程度の実力でよく二位で抜けられたものだ」
と秀一郎が食いついた。
「何が実力だ!」
ほんといい気になりやがって。 あっ、否、これも実力か?
「訂正する。これは実力だ。だから、ファイナルではその実力とやらを見せてやる」
二組目の東堂も辛くも勝ち上がり、ファイナルはご都合主義と揶揄されても文句の言えない面々が揃ってしまった。
しかも二組目の一位は、昨年のチャンピオンという構成になってしまったのだ。




