第197話 サマードリーマー!
紗矢香が調達した昼食を、みなさん覚えてますか?ほら、喫茶〇〇のアレですよ。
答え合わせは本文でね。
「常盤さんお疲れさま。店番どうも……」
「早乙女くん大丈夫? なんか汗だくじゃない?」
「ひやぁー、本当ヤバ過ぎだな、この暑さ。移動販売はもう無理だよ」
「休んでよ、もうすぐ紗矢香さんがお昼持って帰るから」
出店の方はと言うと、お昼近くになり、客足がパタっと止まっていた。
そして紗矢香がお昼の買い出しに出かけたのは、今からちょうど三十分ほど前らしく、僕らが一息ついているところに彼女は荷物を下げて戻って来たのだ。
「ただいま、結奈ちゃん。あっ春風くんお疲れさま」
「あゝお疲れさまでした」
「汗だくじゃない?」
「ん……まあ、ね」
「暑い日に熱いものを、なんて、喫茶ヨシノのカツカレーよ」
「今さっきまでバテてたけど、ジュース飲んで日陰で休んでいたら大分復調してきた。カツカレー、いけそうだ。腹減ったしね」
春風は立ち上がり、パイプ椅子を向き合うように並べ、その中央に空のダンボール箱をおいて、即席テーブルを作った。
「さあ、二人ともお昼にしよう」
と春風は紗矢香からチャッとカツカレーを受け取り、パイプ椅子に腰掛けた。
「いただきます」
といち早く食べ始めたその姿に、
「ふふふ、お腹空いてたんだね、子どもみたい」
と結奈が揶揄うように笑った。
つられて紗矢香も、
「本当、わんぱく少年って感じね、ははは」
と笑って、
「結奈ちゃんもいただきましょ」
と腰掛けた彼女にカツカレーを手渡した。
「いただきまーす」
蓋を開けカレーを一口パクり。
「スパイシーですね……うん、これは!」
「えっ、何々?」
「この味は……喫茶」
「喫茶?」
「……ヨシノ、でしょ? 名物カツカレーの」
「すごーい、結奈ちゃん。よくわかったわね」
「えへん、私、何を隠そうカレーにはちょっとこだわりがありまして……」
「こだわりって?」
「この喫茶ヨシノは、ネットのスパイスランキングベスト20に入ってますから。喫茶の肩書きの割にリピーターの多い店で、オーナー料理人である吉野シェフの理念は、リピーターが毎回唸る究極スパイスの店作りなんですよ。凄くありませんか?」
聞いてるだけでお腹いっぱいになりそう……。
「さあ、結奈ちゃん、食べましょう!」
「はい」
そして、三人は膝を交えながらカツカレーを食し、千葉への旅行について語り出した。
「結奈ちゃん、ドリームランドホテルのキャンセル待ちの件は、その後は進展ないですか?」
「それがまだ……あっ、噂をすればそのホテルからメールが届いてますよ」
結奈は期待しながらメールを開封した。
「読むよ! 当ホテルに頂いたあなた様の予約待ちにつきまして、キャンセルがありましたので、今から一時間以内に添付URLにて予約手続きを行なって下さい。ですって」
「取れたねドリームランドホテル。これで夏休みが盛り上がりそうね」
と紗矢香は春風を見ながらはしゃいで見せた。
本当、紗矢香さんてこんな子でしたっけ?
みんなから不良娘と呼ばれてるのが、不思議でならんわ。
これが素顔なんだね、きっと。
「さあ、食べたら働くよ。春風はこのあと一気飲みがあるから、体調を整えておくこと。みっともないことにならないようにね」
「あーい」




