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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第七章 人も羨む夏休み
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第196話 古風な関係?

 次に、春風の幼馴染みでエスハニ代表の一人娘の真田雪と、卓球大会で紗矢香チームの要となった常盤結奈が、湘南夏祭りに現れた。

 さて、紗矢香と雪の反応は如何に?

「うー、やっぱり夏は暑いね……あっ、雪ちゃん、オアシス見つけたよ!」

「えっ? あっ、結奈ちゃん、何だっけ?」

 結奈は雪を振り返りながら、

「もお、なんかキョロキョロしちゃって、何をお探しですか?」

 とお姉さん風を吹かせ、雪の顔を覗き込んだ。

「あのね、春風がビーチで働いているみたいなの」

「早乙女くんが?」

「詩織ちゃんから聞いたんだけどね」

「どんな仕事をしてるの?」

「それが詩織ちゃんも聞いていないって」

 結奈は仕方なしにこう話した。

「彼にラインでもしてみたら?」

「してるよ、でも、なかなか既読つかなくって」

 結奈は何かに気がついたように、

「ちょっと待ってね」

 と言ってスマホを取り出し何かを送信した。

「春風に送ったの?」

「違うよ、彼のバイト先の先輩ってとこかな? 二年の神楽さんなんだ」

 神楽さん?

 あの卓球で同じチームだった?

 雪は結奈への返信を待ちながら、

「結奈ちゃんて、卓球大会終わってからも、あのメンバー同士仲良くしているの?」

 と春風の交友関係を探るように結奈に尋ねた。

「そうだね、紗矢香さんとはまめに連絡を取っているけどね」

「そうなんだね」

「紗矢香さんて、美人でスタイリッシュなんだけどね、熱血で一途なとこあって、そばにいたいなぁって。お姉さんみたいな人なんだよ」

 雪はそれを聞き少し胸を撫で下ろした。

 春風を許嫁と今でも信じている雪にとって、女性にモテる春風の交友関係は気が気じゃないのが本当のところであった。

「あっ、お待たせ、紗矢香さんから返ってきたよ」

 ふたりはスマホを覗き込みメッセージを読み上げた。

「私と春風くんは商工会テントの下で、ジュース売っています。良かったら遊びにおいでよ」

 雪は両手をサンバイザー代わりに遠くを見やり、

「テントって? どこ?」

 と結奈に声をかけた。

「雪ちゃん! ここ!」

「どこ?」

 結奈はすぐ後にテントがあり、紗矢香たちが、飲み物を箱から出している姿を見つけた。

 雪も少し暗くなっているテントの中を、目を凝らし覗き込んだ。

「紗矢香さん、こんにちは」

 と結奈は嬉しそうに両手を振った。

 紗矢香も手を振り、

「暑いから、テントに入りなよ」

 とふたりを中に招き入れた。

「海水浴だね」

 結奈はビキニが透けた白のTシャツを着ており、

「まあ、そのつもりで来ましたよ」

 と話した。

 結奈の後で入って来た雪が、紗矢香に頭をちょこんと下げた。

 紗矢香は人見知りなのか、少し小さめな声で、

「初めまして、二年の神楽紗矢香です。よろしくね」

 と挨拶をしてみた。

 これを受けて雪も、

「はじめまして……一年の真田雪です」

 とまぁ何だか人見知りが写ったかのように、人一倍小さな声で挨拶を交わした。

 結奈が作業をしていた春風に、

「雪ちゃん来たよ!」

 と声をかけると、

「ちょっと待って!」

 と言ったあと、四人が顔を合わせた。

「春風くん、砂だらけよ」

 そう言って紗矢香が春風のシャツについた砂を手で払い除けると、その瞬間に雪の鋭い視線が紗矢香に照準を合わせた。

 そして雪は紗矢香に尋ねた。

「お二人だけなんですか? ここで働いているのは?」

「そうだけど、何か?」

「随分と仲がいいんですね?」

 紗矢香は明らかに雪の声色が変わったことに気づき、

「雪ちゃん、私たちはこの出店に仕事で来ているの。私たちは仕事の相棒だから、誤解しないでね」

 と春風との関係を軽く否定した。

「それは本当ですか?」

 と雪は半信半疑で春風に問いただした。

「あのな、雪、お前のその言葉で雰囲気が台無しだ。僕らは仕事でここへ来てるんだ。それぐらい分かるだろ! それにその言葉や目つき、紗矢香さんに失礼だぞ! 謝れよ」

 結奈が雪と春風の仲裁に入った。

「二人とも、ちょっとよしなよ。早乙女くんは雪の許嫁だから、ちょっと心配になっただけだよね」

「私、そんなつもりじゃないよ」

 こら、たぬきめ。

 だから紗矢香さんに突っかかったんだろが。

 だいたい僕は許嫁じゃないっての。

「雪、一つはっきりしておきたいが、僕は許嫁ではないだろ? あれは僕らが幼い頃に、親が勝手に決めたことじゃないか」

 

 この険悪な雰囲気が続き、紗矢香、結奈、雪、春風の順で、四人は横一直線にパイプ椅子に座り、沖を眺める。

 

「雪ちゃんは、春風の許嫁なのね?」

「親が決めたことですから」

 また突っぱねる感じが可愛いねと、紗矢香は思った。

「紗矢香さん、そんなことは、ちっちゃい頃の話で、実際には何もないんですから」

 と全否定をする春風。

「早乙女くんは、やけに否定するんだね?」

「もちろん、否定しますよ。事実でないですから」

「でもね、なんか良いよね。どこか古風な関係って」

 と紗矢香が一番端から皆に問いかけた。

「運命の人って、どことなく憧れるよね」

 と結奈もしみじみと語った。

「僕には、古風に憧れる気持ちがわからないかも?」

「春風くん、まぁ、いいじゃない。私たち女の子は、いつも運命の人に憧れてるのよ」

 そう紗矢香もしみじみと語った。

 

「紗矢香さん、ごめんなさい。そして、ありがとうございます」

 と雪は頭を下げて、

「私、お昼からの水着コンテストの審査員を、エスハニ社長の代理ですることになってますの。そう言うことで、そろそろ失礼します。見に来て下さいね」

 と言い残し結奈をおいて立ち去っていった。

 

「結奈ちゃんは予定あるの?」

「私、特にないから、みんなのお手伝いをボラでやります」

 と応えた。

 

 かくして、雪は心穏やかに店を去り、結奈は出店でボランティアをはじめた。

 


「コーラにサイダー、烏龍茶はいかがですか!」


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