第195話 水着になるのも仕事なの?
ビーチもある種、目移りするような賑わいをまして来て、春風たちの出店も繁盛してますね。
またお客様見えましたよ。
それでは。
「この時間から人も増えて、気温も上がるし、そろそろバンド合戦の頃合いかしら? 忙し忙し!」
夏祭りのチラシからスケジュールを見た紗矢香は、ビーチが賑わう時間帯になることを何気に春風に伝えて来た。
「ダンス大会じゃないんだね?」
「……確か。今どきはバントよりダンスだもんね」
「話変えちゃうけど、紗矢香さんはダンスとかできるの?」
「ダンスか……苦手かなぁ」
「そのチラシに、午後のスケジュールって載ってるよね?」
「ええ、載ってるわよ。十三時から一気飲み、十五時から水着美少女コンテスト、十九時半から大花火大会となってるわ」
「ねぇ、水着のあとなんて言ったっけ?」
「美少女よ」
「美少女ね〜」
「何よ、何か言いたげよね」
「あのさ、水着姿の女の子の品評会なんて、今どきセクハラとしか言いようがないんじゃないの? しかも美少女の見定めなんて、主催者の川崎さん、セクハラオヤジの極みなんじゃない?」
「あら、春風くんは女の子の水着姿をどう思っているのかしら?」
「僕はあまり興味ないからわからないよ。下着じゃないことくらいはわかってるけどね」
「本当かな? 下着じゃないにしても、男の子って女の子の水着姿は嫌いじゃないんじゃないの?」
「ん、まあ、嫌いではないかも……」
「ねえ、私の水着姿、見たい?」
え? 何、突然。
見たい、見たい、見たい!
けど見たいって言ったら、一つ返事で言ったらなんて言われるか怖いわ。
そこだけが心配だ。
「紗矢香さんの水着姿、見れるんですか?」
「残念、水着持ってないから」
ちょっと、おちょくってませんか?
紗矢香さん。
「あの」
店先の声に気づいた春風が振り向いた。
「こんにちは。先日、女子寮にお邪魔した岩間と申しますが、覚えて見えるかな?」
紗矢香もその声に聞き覚えがあったのか振り向いた。
あっ、あの時の……エスハニの。
「こんにちは……」
「唐突なんだけど、実はね、水着コンテストに参加してもらう女の子を、あちらこちらで探しているんだ」
「そう……何ですね」
「楽しそうに話している神楽さんを見かけましてね、声をかけた訳なんです」
水着コンテストにスカウトされるのって、あまり嬉しい気がしないな……。
「あの……私、水着持っていませんから、ごめんなさい!」
と体よく断ろうとした紗矢香ではあったが、岩間が笑みを溢しながらこう切り返しできた。
「心配いりませんよ。このコンテストにはエスハニがスポンサーについていて、水着はサイズも含めたくさんあるようですから」
「そう……なんですね」
ここで春風は口を挟んだ。
「紗矢香さん、これは出てみたらどうですか?」
「えっ? 私が?」
正直言ってあまり気が乗らないな。
最近水着なんて着てないから、大丈夫かな?
しかし、まあ、そうだね、お祭りだもんね。
「そうだね、春風くんがそう言ってくれたから、出てみようかな……」
岩間はホッとした顔つきで紗矢香に、
「じゃあ、交渉成立だね。受付は済ませておくから、二時半にあそこに見える特設舞台の裏にある控室に来て下さい」
と岩間は指で指し示したあと、笑顔で、
「楽しみにしているよ」
と言いながら店先から去っていった。
「ところで水着コンテストなんて、仕事中に良いのかしらね?」
「店長がダメだと言っても、僕が許す。なんてね」
ええ?
何言ってるの?
「まぁ、つまりね、ニコニコマートが夏祭りに協賛している訳だから、その店員の紗矢香さんがイベントに協力することって、当然仕事の延長だから問題ないってことにならない?」
……なるほど。
頭いいね、春風くんは。
物は言いようってことかな。
「わかったわ。じゃあ、今回は仕事として参加するね。だからしっかり応援よろしくね」
なんか紗矢香さんて、可愛い物言いするんだね。
もちろん応援しますよ。
心から。
「そうだ、僕も一気飲みの仕事があるんでした」
「春風くんは、飲んだ炭酸、鼻から垂らさないでね」
なんか紗矢香さんて、可愛くない物言いするよね。




