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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第一章 湘南の春休み
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第19話 頑張れ翔子!

 会場の視線ははテイクオフを待つ翔子に集まった。

「……さあ、来るわよ!」

「パドリングからテイクオフ、アップスダウンからリップレールまで登って、と降りると見せかけてリップオフ、決まった。まだ行ける、そっ、ボトムターンから、勢い付けてエアリアル、いいわ、ワイドにエアー決まった、よし!」

「翔子さん、クールすぎましたね」

 岩下コーチの拍手に周りも大きな拍手を送った。

「二人とも、やるわね」

「そんなに凄いんですか?」

「そうよ。一波一発勝負で難易度が高い技を成功させたのよ」

「で、ですよね」

 あっ、風間選手と抱き合ってる。

「讃えあってるんですね」

「そうよ。二人はライバルだけど鎌倉学院の仲間であり、私の教え子なのよ。讃え合えるって、素晴らしいわ」

 

「さぁ、葉山選手、素晴らしかったですね」

「ありがとうございます」

「最後のエアーが対空時間と言うより、対空距離が素晴らしかったですね」

「はい、うまく飛べましたね。最高でした」

「葉山選手はこの後、九州で行われる大会へ招待されていると聞いてますが、活躍を期待してます。

 それでは、葉山選手にもう一度、盛大な拍手をお願いします。……ありがとうございました」

 

「春風くんはこの後はどうするの?」

「翔子さんと帰ります。」

「そうね、彼女のそばにいてあげてね」

「どうも、ありがとうございました。失礼します」

 そう言って、一旦席を立った。

 爽やかな青年だこと。私も、独り身。あー、誰か素敵な王子様、現れないかしら……。

 

「姉さん!」

「あっ、春風、見てくれた?」

「凄くカッコ良かった」

「ありがとう」

「じゃ今からシャワーして着替えてくるから、十五分後にあそこのりんご飴の店の前で」

「あそこのりんご飴の店で」

 りんご飴か? 

 懐かしいな。

 夏祭りか。

 昔、姉さんとりんご飴を代わりにばんこに舐めたりしてたな。

 翔子さんの父さんてどんな人なんだろう?

 うちの父さんより優しいんだろな? きっと。

 お母さんはいるのかな?

 きっと優しい母さんなんだろうな。

「ただいまから、第一回戦を開始します。選手の方は待機上でエントリーを行ってください!」

 大会も本番が始まるか……

 

「待たせたね。春風」

「お疲れ様」

「ありがと」

「サングラスなの?」

「今日は有名人だから、髪を下ろしてサングラスして、まぁ、バレても仕方ない程度の変装だけどね」

「そんな感じだね」

「やっぱ、そうだね」

「ねえ、りんご飴食べようか?」

「そうだね」

 春風は店のおじさんにりんご飴をニ本頼んだ。

「兄ちゃん、こちらのお嬢さんの分はサービスしとくよ。なかなかカッコいいライディングだったぜ!

 翔子はサングラスをカチューシャのように髪に挿し、ニコッと笑いながら「ありがとう、おじさん」と言ってりんご飴を受け取った

 翔子は「変装やっぱバレてたか」と呟きながら、またサングラスをかけた。

「サーフボードのこと聞いたよ」

「パイセルのこと?」

「そう、有名な人が作ったショートボードなんだね」

「パイセルね。今は日本でもお店があるわ」

「へー」 

「ねえ、コーチと何話したの?」

「波とサーフィンについてかな?」

「聡子コーチって、詳しいでしょう?」

「そうだった。姉さんの動きをよく分かってるみたいだった。なんか湘南のアイドルサーファーだったみたいだよ」

「謙遜だよ、それは。コーチは二年前までプロサーファーだったんだから。しかも引退する前までは、日本代表だったのよ」

「あの方はルックスもスタイルも美しくて、憧れのスポーツ女子の部門で三年連続一位だったんだから」

 過去をひけらかすこともなく、聡明かつ美しくか、それで憧れの的か。

「恋人はいないの?」

「多分ね」

 そんなコーチネタで盛り上がり、二人は海岸を後にした。

翔子 りんご飴って、甘くて美味しいね。

春風 りんごが程い甘さになるから良いんじゃ?

翔子 じゃあ、飴は私が舐めるから、待ってて!

春風 それじゃあ味気ないよ!

翔子 次回「真実」、よろしくね!

春風 真実は飴にコーティングされたりんごのよう。

翔子 気になるわね、真実が!


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