第18話 流石ね、風間選手!
「私が二人の動きを解説してあげましょうか?」
「はい、お願いします」
と翔子の動きを見ながら僕は返事をした。
「まずね、波と向きうには、波の性質をよく理解する必要があるわ」
「性格?」
「そう性格よ」
岩下コーチは波打ち際を指差しこう言った。
「うち寄せた波は砂浜に到着すると、横方向に丸みを帯びて広がり、その波は離岸流に乗って沖に戻って行くわ。この離岸流に乗りながらバドリングで沖に向かうの。後は狙ったポイントに辿り着くようパドリングで横方向に逃げながら離岸流を離れ、波乗りポイントに辿り着くのよ」
「あの、素朴な質問なんですが?」
「ええ、いいわよ」
「波の起こるポイントが分かるものなんですか?」
「そうよね。じゃあ、風と海底の地形の話が必要ね」
と言って岩下コーチは出場選手一覧の裏側に絵を描き説明を始めた。
「波は風が吹くと起こります。風の吹き付ける長さや強さなどで変わる風浪が、風の影響が弱くなり、または無くなった時にうねりと呼ばれる柔らかく穏やかなリップの長い波に変わるの。そして、サーフポイントと呼ばれるところから岸に向かう辺りは、足はつかないけれど、比較的水深は浅いの。波は水面だけでなく水面下の流れと地形の影響で、波が起こる位置や壊れる位置が変わるの。こんな感じね」
岩下コーチの説明わかりやすいな。
「つまり、海流と波は海底の地形よることになるわよね?」
「そ、そうですね」
「この鎌高前辺りはリーフブレイクと言って、サンゴ礁や岩場になっているの」
「と言うことは、そうか、海底の形状が変わらないから、海流や波の発生や壊れる場所が掴みやすくなる」
「その通りよ。海底が砂地のビーチブレイクでは、海底形状が常に変わっているし、凹凸が少ないから波は弱く、波乗りポイントが定まらないのよ」
「つまり上級者はリーフブレイクに集まり、初心者はビーチブレイクって感じですね」
「そうよ。もう一つ話しておくと、リーフブレイクは波が崩れるあたりの海底が硬い岩場だから足などを怪我しやすいの。だから、見えるかな? 翔子の足のあたり」
「あっ、なんか黒いの履いてますね」
「リーフブーツよ。中には夏場でも長袖丈のウェットスーツを着ている人も多いわ、さあこれから風間選手から順番に始まるわよ」
「はい」
「さあ、ボードエンドが浮き上がりパドリング開始、いい感じに乗れたね。ボードに低く、そう低くね、さぁ立ち上テイクオフ成功! 続いて一気に滑り降りながらボトムターンから駆け上がりリッピング……ああ、なんとか成功、体制を立てながらアップスダウンでスピードに乗って、よし、再度ボトムから渾身のエアー、体の下にボード、よし成功したわ」
「凄い! 凄いですよ!」
会場は歓声に包まれた。
「得点はでるんですか?」
「エキシビションだから、点数はないけど、最後のエアーのスピードと高さと、リッピングのバランスを考えれば、一本しか乗ってないけど、なかなかだわ」
「さーこちらへ、風間選手、お疲れ様でした。最後のエアリアルがスピードに乗って高さが出て、力強いライディングでしたね」
「ありがとうございます。そうですね、気持ちよく行けましたね。最後のエアーが高くなってエッジを少し掴んだんですが、うまく体をボードに乗せれて、良かったです」
「風間選手、ありがとうございました!」
次は翔子さんだ!
岩下 春風くんは波乗りしたことはあるの?
春風 日常が荒波で、いつも転覆すれすれでした。
岩下 まだ若いのに、大変ね。
春風 若い頃の苦労は買ってでもしろと誰かが……。
岩下 次回「頑張れ翔子さん!」
春風 人生山あり谷ありです。お楽しみに!
岩下 君は、昭和の人ですか?