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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第四章 交錯する恋の行方
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第109話 サイクルジャージに花束を!

祝勝会の始まり

「ダッタッタッタッ」

 春風が階段を駆け上がってきた。

「遅くなりました! 皆さん! ……ん?」

「遅すぎだわ! 春風」

「何やってたんだ?」

 と出迎えに来たチームメイトに春風はわちゃわちゃと取り囲まれた。

 そのあと遅れてやって来た翔子は、手招きした美涼からマイクを渡された。

「ええ、それでは自転車乗りの皆さん、席にお座り下さい」

 と翔子は春風を取り囲む面々に声をかけた。

「はーい」

 とひとりだけ声を挙げた東堂が、いつもは見せないお茶目な返事をしながら、春風の背中を押して高砂席に整列した。

「それでは、ご紹介お願いします」

 ERCの面々は背筋をピシッとしたあと、市川先生がマイクを持った。

「昨日開催されました箱根湘南ライドでは、皆様の応援に応えるべく総合三位を勝ち取ることができ、メンバー一同、心より感謝感激しておるところであります」

 会場は拍手に包まれた。

 そのあと市川が選手紹介を始めた。

「それではメンバー紹介に移ります。まずは天野くん」

「ええ、選手兼メカニック担当の天野寛です……」

 人前で話すのがあまり得意でないのか、天野をフォローするように、翔子は話題を投げかけた。

「……すみません、天野さんは、雫ちゃんのお兄さんでよろしかったですよね?」

 このことにハッとした寛は、

「あっ、雫がお世話になってます……」 

 と照れながら答えた。

 これを見ていた寛の友人らは、

「リラックス、リラックス」

 と笑いながら、苦笑いをする寛に声をかけた。

 このお祝いに駆けつけた出席者はおよそ二十五名、ERCメンバーの仕事仲間や友人、女子寮生に市川先生の同僚である香山先生らが集まっていた。

「ねえ、雫ちゃん、お兄さんて独身? 彼女はいないの?」

 と北山萌が雫にこんなことを聞き始めた。

「お兄ちゃん、彼女はいないよ」

 萌はニンマリして、こう言った。

「私のタイプだわ」

 それを聞いた雫は、言葉を失い、ついでに貝になった。

 

「次は、桜山くん」

「こんばんわ、桜山新一郎です。エースやってます……あと、妹があちらにいます」

 そう新一郎が天野の流れを組んだ話をしたことで、会場の面々は大爆笑の渦に巻き込まれた。

 妹のカオリはどこだ? と面々は、ざわつきながら彼女を探した。

 なんか、黙っていにくくなったカオリは、突然スクッと立ち上がった。

「鎌倉学院高等部モデル科二年の桜山カオリです。兄さんおめでとう」

 そう言ったあとニコッと笑顔を見せて座ったカオリに、会場の一部から「かわいい」とか「しっかりしてる」などの言葉が出ていた。

 またもや北山萌は「桜山先輩のお兄さん、めっちゃイケメンじゃないですか? 彼女いるんですか?」と目をキラキラさせてカオリに聞いた。

「……」

「ええっと桜山さんは、個人でも三位とご健闘されて見えますが、ゴール直前は、どんな感じだったのですか?」

「全力で追いました。そして前行く箱根スパイラルの眞露選手を二十メートルのところまで追い詰めましたが、残念ながら捉えることは出来ませんでした」

「ゴールでの攻防戦、お疲れ様でした」

 と翔子は市川を讃えた。

「続きましては、電車王でもあります最上くん」

「皆さん、祝勝会を開いてくださり、ほんま、ありがとうございます。わたくしは最上阿良隆いいます。江ノ電の運転手してます。見かけたら、声かけて下さい」

「続いて春風くん」

「どうも、鎌学一年の早乙女です。この場を借りてですが、ERCの皆さん、本当にありがとうございました。初めてのロードレース、とても勉強になり、また、楽しく走ることができました。応援いただいた皆さんにも、こうやって顔向けできることをとても嬉しく思います。また、参加できる機会がありましたら、声をかけて下さい」

 すると会場から「次回も頑張って!」「また、帰ってきてや!」などの声が飛び交った。

「続いて、東堂くん」

「鎌学一年の東堂満と言います」

「東堂くんは、早乙女さんとは同級生と言うことになりますね?」

「いや、ライバルですわ。大会が終われば、ライバルなんです」

「そうですか。ライバルなんですね」

「ありがとうございました。それでは、花束贈呈……」

「ちょっちょい! まだ私、何も話してないんですが」

「あー失礼しました。では市川先生、お願いします」

 なんか拍子抜けちゃうよ、まったく。

「ええ、それでは、わたくしの紹介をいたします。ERCで顧問をしております代表の市川と申します。祝勝会を開いていただきありがとございます。わたくしは、このライドでは、悲願である総合三位が取れたこと、とても嬉しく思っています。今回は、秘密兵器であった東堂くんと早乙女くんの貢献がなくては入賞は叶わなかったかもしれません。これからもERCは高みを目指して頑張りますので、応援よろしくお願いします」

「パチパチパチパチ……」

 会場は割れんばかりの拍手に包まれた。

 

「それでは花束贈呈に移ります」

 高砂に立ち上がった六人の選手の前に、花束を抱えた天音とカオリと雫が並び、天音から全選手に花束が送られた。

 選手らは天音らとニコニコな顔をして集合写真を撮った。

「お兄ちゃん、デレデレしてる」

 とカオリも雫も苦笑いをしていた。

 

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