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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第四章 交錯する恋の行方
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第108話 仲直り

 六時二十分前 鎌高前海岸

 受信した春風からのメッセージを頼りに、翔子は彼が待つ鎌高前海岸へと一人向かった。

「春風なの?」

 とゆっくりと砂浜を歩み、視線の先に映った男の子に近づいた。

 そして砂浜に腰を下ろしていた彼の隣に、視線を合わすことなく翔子は腰を下ろした。

 寄せて返す波の音を聴きながら、ふたりはしばらく言葉を交わすこともなく、遠く沖を走るタンカーを眺めていた。

「あのさ、さっきさは……ごめん」

 と春風が先に切り出した。

 それを聴いて翔子は「バカね」と笑って、春風の肩をギュッと抱き寄せた。

「春風……姉さんのありがたい忠告は、しっかりと聞くように!」

「そう……だね」

「パーラーにはあなたを祝うため、みんな時間作って集まってくれていること、忘れないように!」

「あいよ!」

「わかれば良しよ。けどね、一体、誰と約束をしてたの?」

「……その相手、言わなきゃダメなんかな?」

「まぁ言いたくないなら、いいよ……話さなくても。ただ……」

「ただ、何?」

「ただね、何のために祝勝会をわざわざ途中下車しようと企んだかくらいは、聞かせてくれても、いいんじゃないかって……」

 春風はそう言われて、一つ話す気になった。

「実は、とある女の子も、姉さんと同じように僕を祝ってくれるってことになってさ」

「そう、だったのね。それで、彼女とはどうするつもり?」

「彼女と会うのを、遅い時間帯にするのもどうかと思い……少し前に連絡を入れたんだ」


 

「もしもし、紗矢香さん」

「春風くんか、どうかしたの?」

「急な話で申し訳ないけど、今日のふたりぼっちのお祝い会を、明日に変更できないかな?」

「どうしてなの?」

「どうしてかって? 姉に叱られたんだ。今日の祝勝会を中抜けするなんて言語道断! ってね」

 まって、あなたシスコンなの?

「……そう、なんだね」

「ギリギリになってから、こんなことを言うなんて、呆れるよね?」

 まあ、呆れない方がおかしいよ。

「呆れる。けどね、お姉さんの言ってることもよく分かるよ」

「え?」

「お姉さんは、春風くんのことをちゃんと思ってくれてるよね」

「そう……なのかな?」

「そうに決まってるわ。祝勝会はたくさんの人が集まって、春風くんたちERCを祝うんだから」

「なるほど」

「私がお姉さんなら、同じようにしたと思うよ」

「そう言うものなんだね?」

「そう言うものよ」

「じゃあ、姉さんに感謝だね」

「ふふふっ」

「何?」

「春風くんはシスコンなんだね?」

「シスコン?」

「そうよ、シスコン。けちゃうわ」

「からかわないでよ!」

「からかってなんかないわ。ただ……」

「ただ、なんですか?」

「お姉さんの存在が大きいんだなぁと思ったんだ。ただ、それだけよ」

 なんか引っかかる物言いだな?

 まあ、でもいいか。

 分かってもらえたから。

「じゃあ、明日に変更してもいいですか?」

「仕方ないね」

「ありがとう」

「じゃあ明日、メルキァンティーの午前十一時の開店にあわせてランチしましょう。祝勝会の埋め合わせ会ということでね」

「今度は僕が主催者側になるんだね」

「お見込みのとおりよ、ハハハ」

 と笑ってくれた紗矢香さんに、ほんと救われたよ。

 

 

「付き合ってるの?」

「……そう言えたらいいんだけど、ちょっと仲の良いガールフレンドかな? 今のところ」

「五十嵐天音さんのことはどうなってるの?」

「天音さんから、告られたんだ」

「えっ? いつ?」

「今日、横須賀で」

「で、どうなったの?」

「天音さんのお母さんとも会って、天音をよろしくって言われたよ」

 天音さん、随分と力入れて来てるのね。

 でも、春風は告白されてどう思ってるのかしら?

「それで?」

「どうしたものかと……」

「あっ、時間過ぎてしまってるわ、祝勝会に行かなきゃ」

「そ、そうですね」

 ふたりは以前の関係を取り戻したかのように、「競争よ」と笑いながら、パーラーまで駆けていった。

 

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