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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第四章 交錯する恋の行方
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第102話 早乙女天音って?

「では、横須賀海軍カレーをお願いします」

「じゃあ、あたしもお願い」

「お嬢様?」

「いいの、いいの、気にしないで」

「それより、海軍カレーなんて頼んでも大丈夫なの?」

「そちらは心配ないのですが……」

「ママのことは心配しないでいいわ。あたしから話しておくから」

「それであれば仰せのとおり」

「じゃあ、よろしくね、吹雪さん」

「承りました」

 と接客していた吹雪はオーダーを伺ったあと、厨房へと消えていった。

「ねぇ? ママのことって?」

「あのね、いや、たいしたことではないの」

 と顔を赤らめた。

「ただ、ママが彼氏を連れてくるなら、お店の看板メニューを食べてもらいなさいって言ってたの」

 彼氏か……そこは微妙だけどね……。

 でも天音さんの言ってることも充分わかるし。

「それ聞いてたら、カレーは頼まなかったのに」

「あらあら、仲のおよろしいこと」

 とテーブルに近づく女性がいた。

「ママ?」

「こちらの男の子が、天音の意中の人ね。初めまして、天音の母の五十嵐こよりです。お話は聞いていますわ、なかなかのイケメンね?」

「ママ!」

「あなたのパパの若い頃に似てるわね」

「初めまして、早乙女春風と申します」

「へーっ、可愛らしい名前ね?」

「そうですか?」

「五十嵐って言うのはちょっと荒々しい感じするから、天音が早乙女天音になったら、いい感じになるね」

「ねえ、からかうなら来ないでよ」

 と天音は母親を牽制した。

「五十嵐天音より早乙女天音の方が、より素敵に聞こえるね」

「春風くんまで、もう!」

 と三人は笑いあった。

「春風さん、これからも天音と仲良くしてやってくださいね。私がこう言うのはなんだけど、こんなに気立ても良くて、可愛い女の子はなかなかいないわよ」

「……そう、ですね」

「構えない、構えない。もっと楽な気持ちで、天音を見てあげて欲しいの」

「は、はい」

「この辺りじゃ、カレーもチーズケーキも有名だから、食べなきゃね」

 と春風にグーサインを出しながら、テーブルを離れた。

 

 しばらくして海軍カレーが出てきて、ふたりはこれを食べながらカレーを語る。

「海軍カレーとは何なのですか?」

「それはね、海軍割烹術参考書のレシピで作ったカレーのことを言うのよ」

「へえ、レシがあるんだ」

「サラダと牛乳が付いてくるのも特徴なの」

「だから、ついてるのね」

 と春風は牛乳をゴクッと二口飲んだ。

「横須賀で提供されていることも、横須賀海軍カレーの定義なのよ」

 と言いながら、天音はカレーを頬張って「うん、これよ」と頷いた。

「まろやかなコクの中に懐かしさがあって、甘口と中辛の間くらいの辛さだわ。 じゃがいものホクホク感、ごろっとしたにんじんや牛肉は旨味が出ていて、私はこれをレトロカレーと呼んでいるわ。とっても美味しいわ」

「天音さん、生粋の横須賀娘だね」 とカレーに感激しながら春風は彼女を讃えた。

 

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