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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第四章 交錯する恋の行方
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第101話 紗矢香の実家ってレストラン?

 気がつくと、ふたりの行くてには、天音のファンが二十人くらいか、立ちはだかっていた。

 どうしたらと立ち止まっていたその時、マネージャーが指差し、

「あのタクシーに乗って、ひとまずこの場を離れて下さい」

 と助け舟を出した。

 ふたりはタクシーに乗り込み難を凌いだ。

「一緒にいた子、あれ? 天音に弟さんいなかったよね」

 

 タクシーで大周りをしながら、ふたりは昼食予定のマリナブルーラウンジに向かった。

「あれ? オタクさんどこかでお見かけしたような?」

 春風はルームミラー越しに、

「湘南第一病院の時の?」

「あー、あの時の?」

「偶然ですね。でもここは横須賀ですがどうして?」

「さっき鎌倉からのお客さんを乗せてここまで来たんですよ」

「そうでしたか」

「お兄さん、それにしても、もの凄いべっぴんさんと一緒だね?」

 あっ、まずい!

 湘南第一病院って言ってしまった。

 墓穴。

 女子寮から病院、しかも、紗矢香さんと一緒の話しされると、彼女の部屋での閉じこもりの一件が、バレてしまうかもしれないじゃないか。

「運転手さん、横須賀色って知っていますか?」

 と前回の乗車内容から遠ざけるため、わざわざどうでもいい質問を投げかけた。

 その意図に反応した人が車内にふたり、質問に質問を被せてきた。

 まず先に天音が被せてきた。

「横須賀色は青とクリームのツートンカラーですけど、湘南第一病院へはどこから誰が乗車したのかしら?」

 鋭い直感!

 意図を汲めるのか?

「お嬢さん、湘南第一病院へ、ではなく、病院からです。彼を確か学生寮へ帰る際に利用されたのです」

「春風があの日行った病院って、湘南第一病院だったんだね」

 なんか適当に話が噛み合ってくれて、思いの外助った。

 運転手さん、意図を汲んでくれてありがとう。

 寮長としての一命は、なんとか取り留めました。

 

 ふたりは到着したマリナブルーラウンジで降りた。

「ここですか? 素敵な外観のお店だね」

「そうでしょ? じゃあ中に入りましょう」

「そうだね」

「いらっしゃいませ」

「予約していた五十嵐です」

「はい、お待ちしていました。天音さま」

「天音さまって?」

「……」

 ふたりは接客係に二階のテーブルまで案内された。

「うわ」

 海と公園が望めるテーブルに案内された春風は、思わず声が溢れた。

 ふたりはお互いが斜め前になるよう着座したあと、顔を見合わせた。

「ははは……」

 と天音は笑ったあと、キョトンとしている春風に対して解説を始めた。

「この店はね……」

 春風は食い入るように天音を見つめた。

「私の実家なの」

「……え?」

「うふふ、驚いたでしょ?」

 驚くも何も、ここレストランでしょ?

「ここが実家って、どう言うことなの?」

「この店、ママが経営しているお店なの」

 彼女がお嬢さんて呼ばれていたのが分かる。

「なるほどね」

「さぁ、お腹も空いてるし、頼みましょう」

「そうね、お腹空いたね」

「では、何になさいますか?」

 と天音はメニューを広げた。

「あの? 海軍カレーってないのかなぁ?」

「海軍カレーね、メニューになくても頼めば出てくるわ、きっと」

「そんなもの?」

「だって私の実家ですもの」

 天音さん。

 そんな理由でですか?

 規格外の発想、参ります。

「でも、カレーがメニューにないのに、お願いするの気が引けるよ」

「確かに他のお店では迷惑な話だけど、ここは私の実家だから」

 ふと横にウェイトレスが立っているのに気がつく。

「ご注文はお決まりですか?」

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