表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第四章 交錯する恋の行方
101/136

第100話 ズキューンと突き刺さる天使の矢

 あっ、もう一つあった。

 真田、あゝ雪か。

——今、寮にはいないよね?

 

 むむ、こちらも、僕の行動を目撃したってことかな?

 着信は二十分前か?

 

 ——寮にはいないけど?

——今ね、ママのエスハニの新作シリーズの打ち合わせに参加することになって、原宿まで来てるんだけど。

 

 ん?

 目撃した訳ではないのか。

 わざわざ僕に何を?

 

 ——僕の居場所に関係あるの?

——出かけたって詩織ちゃんから聞いたから。歩いてと。

 ——それで?

——イメキャラを鎌倉学院から選ぶ話が出てね。

 ——なぜ鎌倉学院なのさ?

——実は今回の新作はハワイのブランドとのコラボ商品で、高校生をターゲットにしているからなの。

 ——なるほど。じゃあ、モデル科の女の子か? 

 ——或いは、サーフィン部の女の子か? 

——今回は、学校に了解のもと、来週開催される鎌倉学院選手権にスカウトマンが入って、イメキャラにする子を選ぶらしいの。

 ——選手権で見つけるんだね。

——このことは、学校職員と選手権実行委員には知らされているみたいなんだ。

 

 じゃあ、天音さんは当然知っていることになるのか。

 

 ——今日の夜の祝勝会は、参加するの?

——詩織ちゃんから聞いてるけど、今日は行けないんだ。

——ゴメン。

 ——いやいや。

——春風くんのお祝い、また考えておくよ。

——じゃあね。

 

 しかし、目の前に軍港がある風景は、ちょっとだけ緊張しちゃうね。

 アメリカ海軍と共にある街か……確か、空軍の厚木基地も近くにあったよね。

 初めての僕にとっては社会科で学んだ知識だけの世界なんだけど、どうしても有刺鉄線腰に見える現実は、天音さんはどうなのか分からないけれど、リアルな日本の現実を思い知らされる気分になってしまう。

 

「まあ、気を取り直して、天音さんの撮影現場が見やすい場所へと移動するとしよう」

 

「良いね、AMANEちゃん、もう少しこっち向いて!」

「カシャカシャカシャ、カシャカシャ」

「ちょっと顔が硬いよ、笑って笑って」

 

 私、作り笑いは苦手なのよね。

「笑って」と言われても、上手く笑えてる気がしていないしね。

 春風? 

 こっち見てくれてるの?

 手を振ってくれてるの?

 なんか、ドキドキしてきたよ。

 視線を感じるだけでも、なんだろう、ドーパミン? セロトニン? オキシトシン? もう気持ちの高揚と幸福感が半端ないの。

 もう、とろけてなくなりそう。

 

「いい、いい顔してるよ! AMANEちゃん。エクセレント、エクセレント。頭を傾げたあと視線を上目でこっちにちょうだい! あゝ色っぽいよ、最高だね」

 カメラマンは、天音の顔付が急に変わったのを見逃すことなく、表情の変化に寄り添うように、注文をつけていった。

「おい、マネージャーさん。驚いたね。AMANEちゃんって、こんなに豊かな表情を見せる子でしたっけ?」 

「もちろんですよ。汐入デレクターさん。あの子はうちの一推しですから。化けますよ」

「その見込みは正しいと思うよ。見てごらん?」

「ええ」

「あのカメラマン、ちょっと変わっててね、ああやって気に入られた子たちは、みな超売れっ子になっているんだ」

「オタクに、あんないい素材がいたとはね」

「ありがとうございます。また、お仕事いただけると助かります」

「今度はとびっきり大きな仕事を頼むから、しっかりと頼むよ!」

「よろしくお願いします!」

 

 なんか、驚いたのはぼくの方かも。

 天音さん、凄いんだね。

 また、高校生なのに、もう、社会で認められているなんてね。

 

 それから三十分後、天音は撮影を終えた。

 少し離れたベンチで天音を見ていた僕は、ボーっと眺めていて、はたから見れば、まるでお姉さんについてきた年端の行かない弟みたいかもね。

 そんな僕のところに天音さんはやってきて、

「今日ね、たくさん褒めてもらえたの。春風が見ていてくれたから、いい感じで仕事ができたと思うの。本当にありがとう」

「天音さんの写真が雑誌に載ったら教えてね。見てみたいから」

 ズキューン!

 私のハートに天使の矢が突き刺さって外れない、どうしよう? 

 胸が苦しいよ。

 私、恋して頭がおかしくなってしまったよ。

「ねえ?」

「え?」

「そろそろお腹すかないかな?」

「お腹すいたね、じゃあ、予約しておいたマリナブルーラウンジに行きましょう」

「そうしよう」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ