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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第四章 交錯する恋の行方
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第99話 青とクリーム

 ふたりはホームから改札を抜けて、駅舎を出た。

「うわぁ」

 青い空と海、真っ白な雲が、横須賀に初めて降り立つ春風のワクワクした気持ちを、より一層掻き立てた。

「湘南の青とは違う青だね」

「横須賀の青色はネイビーブルーよ」

 と話しているところに、側にいた駅員さんがニヤリとしながらふたりに声を掛け、こう言った。

「君たちが生まれる前のJRの前身である国鉄に由来する話なんだけどね、湘南色、横須賀色というカラーがあったのはご存じかな?」

「いや、そんな名前の色があるんですか?」

「ええ、ありますよ。当ててみてください」

 と駅員は、謎かけをするかのように尋ねてきた。

「青色の濃さが違うとか?」

「違うわよ。お父さんから昔聞いたことあるけど、横須賀色は確か青色とクリーム色じゃなかったかしら?」

「お嬢さん、横須賀育ちかい?」

「ええ、そうよ」

「横須賀はネイビーブルーって話していましたから、観光客かと思い、つい声をかけてしまいましたね」

「あの、ところで湘南色とはどんなカラーなんですか?」

「湘南色はね……」

「湘南色は?」

「うんうん」

「……緑色にオレンジ色ですよ」

「えええっ。浮かばなかったです」

「みかんの実と葉っぱのイメージらしいですよ」

「他にもあるのですか?」

「そうですね、特急色はクリーム色に赤色のツートンカラーだったり……」

「ありがとうございました。では、急ぎがありますのでこれで」

 と、春風は自然にはるかの手を握り歩き始めた。

「ここからヴェルニー公園だね」

「この先にある噴水あたりに、撮影隊が来ているはずよ」

「じゃあ、その先は仕事だね、いってらっしゃい。離れたところから見てるよ」

「うん」

 と手を振り、天音は撮影現場へと歩いて行った。

 

 春風は海辺を臨むベンチに腰を下ろしたあと、肩の荷を下ろしたように「フー」と息を吐いた、

 次にポケットからスマホを取り出し、着信をパラパラっと確認した。

「あっ、阿良隆さんからだ。何だろ?」

 とメッセージを開いた。

——鎌高前駅で見たで。それはさておき、祝勝会、手伝うことないか?

 

 なるほど。

 今日の祝勝会は、僕もお客様だから聞いてないからな。

 

 ——横須賀来てます。

——一人でか?

 はや!

 非番すか?

 ——友達と来てます。

——女か?

 あれ、あれあれ、阿良隆さん、攻めますね。

 ——ええ、まぁ。

——デートか?

 ——そうなるんですかね?

——サラリと言うね。まあ、また紹介してや。

 ——はい。

 ——そうだ、横須賀色って知ってますか?

——ほう、スカ色か。私を誰だと心得る? 

——江ノ島電鉄の運転手でっせ。

 ——分かってますよ。

 ——お願いします。

——ブルーとクリームのツートンカラーや。

 ——じゃあ湘南色は?

——グリーンにオレンジや。

 ——凄ーい。

 ——流石。

 ——ところで非番すか?

——今さっき終わった。

——でさ、準備いらんの?

 ——いらんと思います。

——これは美鈴さん主催か?

 ——まあ、そんなとこかと。

——了解や。

——じゃ、またな。

——横須賀土産はええからね。

 

 ええからね?

 いらないですいんだよね。

 わざわざ土産話すなや。

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