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男も女も湘南ライドで恋を語る勿れ!  作者: 三ツ沢中町
第一章 湘南の春休み
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第1話 待ってなよ湘南!

「この辺りで停めるか……」

「さっき話されてたところですね」

「ああ、そうだ。その道をひたすら南へ走れば、お前さんがお目当ての海岸線だ」

 僕はスマホで、位置とルートを確認した。


「……ほんとですね」

 

「自転車下ろすから、ちょっと待ってな」

「はい」

 僕は、トラックの荷台から下ろされた自転車のフロントフレームに、タイヤを装着した。そしてバックを背負い、メットを被った。

 傍でその様子を見ていたドライバーが、申し訳なさそうに言葉をかけたんや。

「目的地まで送ってやれなく、ほんとすまんな」

「いいえ、ここまで運んでもらえたから、本当に助かりました。ありがとうございました」

 僕は、装着したタイヤのフィーリングを確かめるように、自転車に(またが)った。

「お前さん、名前は?」

早乙女(さおとめ)春風(はるか)です」

「んじゃ早乙女くん、元気でな! もし自転車のことで何か困り事があれば、ここへかけてくれ。これも何かの縁だ」

「はい」

 と返事をした僕は、渡された名刺をとりあえず尻ポケットに突っ込んだ。

「もし自転車のことで何か困り事……」といったドライバーにその訳を問い返すことなく、僕は軽く会釈をした後、一路湘南海岸を目指しペダルを回し始めた。

 しばらく走るうちに、周りの景色が次第に現れ始めた。

 江ノ島駅辺りを通り過ぎると、目の前には片瀬海岸が次第に広がり始め、透き通った冷たい空気を和らげるように、朝陽が地平線から昇り、水面は揺れながら眩しく乱反射していた。

 そして、片瀬海岸に着くと僕は、電柱に自転車をもたれさせ、肩の高さまである防護壁によじ登り、肌で潮風を感じながら、乱反射を手で(さえぎ)ながら目を細めた。

 覆った指の隙間から、見える江ノ島の朝焼けを、僕はしばし眺望した。


 朝陽が登り視界が開けた頃合いには、国道一三四号線の車の行き来は次第に増えていた。

 時計をチラリと見やる。

「もう七時か。では向かうとしますか」

 僕は、鎌倉学院のある七里ヶ浜方面に向かい、再びペダルを回し始めた。

 

 

 鎌倉学院学生寮

 

 

 中高一貫校である鎌倉学院高等部は、地方から学力が突出した学生や、スポーツ・芸能・芸術に秀でた人材を集めるエリートが集う高校として全国に名を()せていた。

 もちろん、僕もそのエリートの中の一人であり、中学時代には全国模試で常に十位以内をキープする秀才と、周りから一目置かれる存在であった。

 大阪から出て来た僕は「学生生活を送るなら鎌倉学院」と決め、高き倍率を潜り抜け入学入寮を勝ち取ったのだ。

  

 入寮開始日に合わせ一昨日、僕は大阪から進学先である鎌倉学院に向け、自転車で五百キロ走破を目指し出発したんだ。

 深夜走行中、静岡の日本平辺りで横殴(よこなぐ)りの大雨に見舞われ、側溝の継ぎ目のグレーチングで、タイヤが横滑りし転倒してしまった。その大転倒を見ていた通りがかりのトラックドライバーに心配をかけた僕は、トラックの目的地である藤沢市まで相乗りさせてもらうことになったのだ。


 春風が自転車で鎌倉学院に辿り着いたのは、片瀬海岸で一人朝陽を眺めていた、午前七時からおよそ一時間経過した午前八時頃であった。


 学校敷地内を通り、到着した男子学生寮を前に僕は唖然とした。

「男子寮建替工事? 竣工(しゅんこう)予定日が、来春の春頃って……」

春風 男子寮が建替えなんて、聞いてないよ?

中町 設定なんだからご理解下さい!

春風 僕はホームレスになるんですか?

中町 それは次回の講釈で!

春風 次回「僕、男なんですけど!」

中町 応援よろしくお願いします!

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