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第一話「No matter how hard you boil the iron, it will never taste good.」

※某ロボットアニメに触発されて、一周回って人間とロボットの絆の熱い展開のあるストーリーを作ってみたくなって書きました。


このストーリーを元にして自分で場面ごとのBGMを作って公開して文章中に[トラックnを再生]みたいに再生トラックを指定すれば、目だけでなく耳でも楽しむこともできそうなので後のバージョンアップで検討してみたいです。

[1]


ジリリリリリ・・・。ジリリリリリ・・・。


アンティークな目覚まし時計が暗い部屋の中でけたたましく鳴り響く。

ベルが鳴るたびに、男がベッドの中で呻きながらモゾモゾ動いてる。


バターン!

部屋の扉が勢い良く開いた。その風圧で目覚まし時計が吹っ飛んでしまい、ベルが鳴り止んだ。


『オーイ、朝だぞーぅ。はやく起きろってんだよ!』


「ううーん、うるせぇなー、休みの日くらい静かに寝させてくれよ・・・」


『な~に言ってんだ。今日はさいっこうに良い天気だぞ。出来立てのコーヒーもトーストもあるし、こんなに清々しい気分で朝食を迎えりゃアンタの二日酔いだって一瞬で直らァ』


「わーったよ、ふあああぁぁぁ・・・」


ザァァァー・・・・・・


「オイこれのどこが、『今日は()()()()()に良い天気だぞ』だ。外は曇天で雨降ってるじゃねぇかよー。休みの朝に叩き起こされた俺は()()()()()の気分だぜ・・・」


フラフラとした足取りでダイニングに向かい、食卓の椅子にどっかと座る。


「というか相棒、いつも思うんだがよーぉ?」


目の前のテーブルには、2人分の食事がある。しかし、その量には自分のと相棒のとで偏りがある。比で言えば、1:10ほど。


「お前さんの燃費悪いの、どうにかなんないの?」


『ムッ、これでもダイエットのために食事制限しているほうなんだぜ』


そう言いつつも、トーストにマーマレードジャムをたっぷり塗りたくる。


「へっ、お前さんがダイエットするタマかよ。まったく、ここの家賃が他んとこより格安だっていうから飛びついたってのに、お前さんの食費がかさむせいでウチの家計は火の車だぜ・・・」


『そんなことオレに言ったって始まらないぜ。文句ならオレを造った博士に言ってくれよ』


「やれやれ、とんでもないオンボロが俺のデュオになったもんだ・・・」


『あん?なんか言ったか?』


「いや、何も言ってねぇよ。いただきます」


相棒が美味そうにトーストにかじりついてるのを横目に冷めかけたトーストをモソモソと口に入れ、ぬるくなったコーヒーをあおって無理やり喉奥へ流し込んだ。


「おっと、そういえば今日はこの前の報酬の振込日じゃねえか!こうしちゃいられない!」


昨夜の二日酔いが吹き飛んだかのように、軽い足取りで端末へ向かう。


「えーっと、IDは、3 5 2 0 8 2 - 3 7 0 8 1 4 と、パスワードは、ポチポチポチポチっとな。んで、プリント、と。さてと、いくら振り込まれたかな、ンッフフフ・・・」


カタカタカタカタ・・・

報酬明細が音を立ててプリントアウトされていく様を上機嫌で見つつも、印字された数字を見て肩を落とした。


「あちゃー、もろもろ税金が引かれて、こんだけしか入らねぇのか。世の中、世知辛いぜ・・・」


『どれどれ。ありゃーホント、世の中世知辛いですなぁ!』


「けッ、エンゲル係数の9割を占めてるてめェが言うなぃ!」


カタカタ・・・ストン。玄関ドアの郵便受けから軽いものが落ちてきた。相棒がそれを拾い上げる。


『あーらら、家賃払えって督促状が来ちまった。おい、どうすんのよこれ。また大家さんにどやされるぜ』


「はあ・・・こりゃ、今月やりくり厳しいわなぁ・・・嗚呼、常夏の岩盤浴で高音質のクラシックでも聴きながら優雅にのんびりと上物のスコッチを飲んで過ごすという俺の夢が、また遠のくぜ・・・」


『なんでも良いけど、さっさと朝飯すましちまえよー』




[2]


ピピピピ・・・ピピピピ・・・。


【アロー、アロー。こちら本部オペレーター。コールサインデュオアルファ、応答願います!】


『おーい、本部から通信が来てるぞ。早く取らないと』


「いやだね。俺ふて寝してるから取りたくないね」


『しょうがねえなぁ・・・、ハイハイ、こちらデュオアルファ。いやーオペレーターのお嬢さん!今日も良い声してるね!まるでウグイスがみりんを舐めたようでウットリするよー。君とこうしてお話できるのはオレ運命を感じちゃうんだよねー。ねえ今度一緒にオレと夜景でも観に行かない?いい場所知ってるんだーなんだったらオレの電力で光らせちゃうよ?』


【あらあらご挨拶ね。また私を口説こうっての?デュオロイドにいくら口説かれても私なびかないわよ、お生憎様】


『はっはー、ダヨネー・・・またフラレちった』


【それよりも2人とも、緊急事態よ!ポイントエコー85にて巨大モンスターが暴れているわ!本部は当該モンスターを「アヴァリティア・クラス」と断定および呼称とします!】


『なんだって!?おい、急いで行かないと!』


「いやだね。今日は俺休みだもんね」


【アヴァリティアは現在進路を北上中!進路上には政府の主要施設があるから全力で撃破して!これは最重要案件よ、お願い、現場に急行して!】


「ネガティブ!家で優雅にチープなクラシックを聴いてゆっくり過ごすのが今日の俺の()()()()()だ!」


【んもう、そんなこと言わないで。ところでねえアンタ、今月カツカツなんでしょ?】


「知ってるんだったら話が早い。もっとマシなサラリーを寄越してくれって本部に伝えてくれよ。寄越してくれるんなら現場に行ってやる。」


【ハァ・・・。んじゃあアンタがアヴァリティアを撃破してくれたら、最重要案件対応手当も休暇出動手当も上乗せしてもらうよう本部に掛け合うから、ね、出て頂戴。良いわね? ドゥーユーコピー?】


「はいはい。ったく、わかったよ・・・。コピー!」


【それから、今回は対アヴァリティア・クラス用人型兵器「カリタス」の使用許可が降りたからアンタの家に届けるわ。いつも通り、デュオロイドを火器管制システムおよびジェネレーターとして接続、アンタは操縦者として乗り込むのよ。デュオロイドと上手く連携すればするほどカリタスの攻撃力が増強されるから、被害が広がらないうちに短時間で決着つけるのよ!それじゃ頼むわね、オーバー!】


「はー、しょうがない。お金のため、もといお国のためにひとっぱたらきしてきますか。行くぜ、相棒!」


『アイアイサー!』




[3]


所変わって、ポイントEcho85―――。


こちら、現場上空です!たった今入った情報によりますと、政府は緊急会見を開きこの巨大なモンスターを「アヴァリティア・クラス」と断定しました!アヴァリティアは現在ポイントエコー85を雨に濡れながらも北上し続けています!


アッ、今アヴァリティアが身体を震わせました!身体についた水滴を犬のように震えて吹き飛ばしているようです!

ああっと、危ない!今我々が乗ってるヘリコプターを掠めましたが、水滴がまるで大きな岩のように飛び出してきました!

このままでは我々も危険です!周辺の被害も甚大です!このままおめおめと、アヴァリティアの蹂躙を許してしまってよいのでしょうか!?


おや?あそこに見えるのは大きなロボットのようでしょうか?水煙を上げながら一直線にアヴァリティアに高速で向かってきています!


ズシィイイイイイン!


「こいつがアヴァリティアってヤツか。うへーっ、破壊の限りを尽くしているって感じだな」


『なあ、早いとこ済ませようぜ。オレ雨晒しだから濡れててどうにも気分悪ィんだ・・・』


「それもそうだな。オオオイ!デカブツゥー!俺達のカリタス様が相手になってやるぜ!さっさとこっちかかってこいよ!」


"・・・グモ? グゥ・・・?・・・(プイッ)"


あららら?突如現れたカリタスと名乗った大型ロボットにアヴァリティアが煽られてましたが、そっぽを向いて相手にしませんでした・・・。案外可愛い顔をしてるもんですねぇ。ああいや、じゃなくて。可愛い顔していようがしていまいが、巨大で危険なことには変わりません!テレビをご覧の皆さんは今すぐ現場付近から避難してください!


「カーッ、俺達は相手にならんってか!?おい相棒、意地でもアイツが相手にするよう気を引くぞ!」


『おうよ!喰らえっ、カリタスタァーックル!』


ズドォオオオオン!


おお、これは良い当たりです!これなら然しものアヴァリティアでも、カリタスの相手をせざるを得ないでしょう!


「よーっし!手応えありだ!」


『はっ、気をつけろ!何か仕掛けてくる気だぞ!防御態勢!』


"グゥ、グ、グ・・・グモオオオオオオオオ!!!"


ややっ、カリタスのタックルが気に障ったのか、アヴァリティアが怒り出しました!そして周囲の雨を吸い込み始めました!いったい何が起こるのでしょうか・・・!?


"グモオオオオオオオオォォォ・・・ぶしゃああああああああああ!!!"


おおっと、アヴァリティアの口から水が吹き出しました!さながら水鉄砲のようです!


『うわあああ!なんだコイツ!?水鉄砲かと思ったら熱湯鉄砲を吹き付けてきた!熱っつ、熱っつ!これじゃあハードボイルドなデュオロイドができちまう!そんなのゴメンだぜ!』


「あっちちちち、何バカなこと言ってんだ相棒!鉄を固茹でしたって別に美味くなりゃしねえよ!ほらほら、さっさと反撃すっぞ!」


カリタスがアヴァリティアの水鉄砲攻撃を見事防ぎ切りました。湯気みたいなのが立ち昇っていますが、どうやらこれは水では無く熱湯だったようです!

さあ、今度はカリタスの反撃です!一体どんな技が出てくるのか!?


おおっと、カリタスが連続パンチを繰り出しました!これにはアヴァリティア怯んだ!

アヴァリティア、パンチ攻撃を避けると同時に尻尾で足払いをしてきましたが、それをカリタスが飛び上がって避けた!

そしてすかさず飛び蹴りィィィィ!これまた見事に当たりました!


・・・被害状況をお伝えするはずがなんだかプロレスの実況をしてるような気になってきましたが、もうそんなのどうでもいいです!やっちゃえー!


激しい攻防が続いております!

おっと、ここで一旦距離を取ったカリタス。なにやらポーズのような構えを取り始めました!

大技を決めるのでしょうか!?


「これでトドメだ!行くぜ、相棒!」


「『うおおおおおおお!カリタス、ビィイイイイイイム!』」


"グモオオオオオオオオ!?"


おお!カリタスの胸から、太いビームが放たれました!これで決まったかー!?


シュウウウウウゥゥゥゥゥゥン・・・。


"グ、グモ・・・?"


あれ?アヴァリティアの目の前でビームが弱まって消えてしまいましたが・・・?一体どうしたのでしょうか?


「オイオイオイオイオイ、どうしたんだよ相棒?パワーが落ちてるぞ?せっかくビームを喰らわせりゃアイツを倒せるってのに、一体どうしたってんだよ?」


『あーそれなんだが。さっき食べた朝食がだな・・・足りなかったもんだから・・・オレのジェネレーターが枯渇してるんだ・・・。すまんが、オレになんか食わしてくれよ・・・』


「カーッ、ただでさえ食費かさんで家計が火の車だってのに、あの量でも足りねえってのかよ・・・」


カリタス、アヴァリティアからさらに距離を取り、カリタスのメインカメラで周囲を見渡しております。

何かさがしているのでしょうか?


「ええと、何か食い物があるとこは・・・、お!あそこに大きなスーパーマーケットがあるじゃねえか!この騒ぎで店員はみんな逃げてるはずだ。おい、相棒!あそこ行って、腹いっぱいになるまで食ってこいよ!なあに、ちょっとくらい失敬してもモンスターに壊されたってことでバレやしねえだろ!」


『おお、良いのか!?よっしゃあ、ひとっ走りして食いまくってくらァ!』


スポンッ。


おや?カリタスの背中から、何か飛び出しました。コックピットの操縦者でしょうか?

一目散にスーパーへ駆けていきましたが、戦闘はどうしたのでしょうか・・・?

ちょっと確認しに行ってみましょうか。運転手さん、ヘリ動かしてください。


「さぁ来いよ、デカブツ!力くらべだったらジェネレーターが無くともコンデンサに残ってるパワーでなんとか押し切ってみせらァ!」




[4]


“グモオオオオォォォォ・・・!”


ガキーン!ドシーンッ!ズガガガ・・・


10分ほど押し合い相撲していたところで、相棒が満足した様子で戻ってきた。


「おお、戻ってきたか。どうだ、腹いっぱい食えたか?」


『いやー、満足も満足、大満足だ!あんだけ食ったのはすごく久しぶりだぜ!ジェネレーターもたっぷりパワー全開100万馬力超えだぜ!』


「へっ、デュオロイドのくせに自分のパワーを馬で換算すんじゃねえよ。んじゃあ、さっさとコイツに蹴り付けるぞ!」


『ガッテン!』


「さあ、いくぜええええええ!」


カリタスの胸からまたビームが放たれる。しかしそれは、前にも増して極めて太いものだった。


"グ、グモオオオオオオオオ!!!"


「『うおおおおおおおおおおお!!!!貫けえええええええ!!!!』」


極太ビームはアヴァリティアの胸をいともたやすく撃ち貫き、雲を突き抜けた。

アヴァリティアだったその物質はその場で崩れ落ち塵となって消滅した。


カリタスは勝利したのだ――――。

まるでそれを祝福をするかのように、陽が差してきて空には大きな七色の架け橋が姿を現した。


「ヒューッ!こりゃあ良い景色じゃねえか!雨も上がって最高に良い天気だ!」


『だから言ったろう?「()()()()()()()()()()()()()()」って』


「へっ、ちげえねぇな!フ、フフ、アッハハハハハ!」


『ハハハハハハ!』




[後日談]


本部へ出頭し、顛末書を提出した後。廊下にてオペレーターに呼び止められた。


【ハイこれ、よろしくね♪】


「へっ?これ何だ?」


【アンタの相棒が食いまくったスーパーの補填費用の請求よ。全国のお茶の間に堂々と映ってたから、ビデオデータと一緒に本部に送られてきたのよ。ドサクサに紛れてバレてないとでも思ってたの?】


ビデオデータには相棒のデュオロイドが喜々として陳列されている食料品を片っ端から食べている様が映っていた。


「うお、マジかよ・・・。アイツの胃袋ユニットにはブラックホールが仕込まれてるのか・・・?」


請求書に目をやる。そこにはあり得ない数字が書かれていた。


「え、ちょ。この金額高くね?今回の報酬手取りの何十倍もあるんだけど、10分であいつどんだけ食ったんだ・・・?」


【併設されてるフードコート、およびレストランの厨房にある食材も全部綺麗さっぱりなくなってたんですって。これでもアンタの戦闘評価を鑑みて本部で9割負担してあげてるんだから、感謝ぐらいはしてほしいものだわ。分割でもリボでもなんでも良いから、頑張って払ってよね〜】


「チクショー・・・やっぱりこの世の中、()()()()ぜ・・・」


――― END ―――



[おまけプロフィール]


「俺」: 本作の主人公。人間の男性。人類を脅威から守る「組織」に所属し、『相棒』とデュオを組んでコードネーム「デュオアルファ」として事に当たる。戦闘技量は高いがハードボイルドかぶれで素行が悪く、組織内での評価はあまり良くない。大食いの『相棒』を養ってるため常に金欠。クラシック鑑賞が趣味。銭湯行くときは必ず岩盤浴セットを注文するほどの岩盤浴好き。


『相棒』: 本作のもう一人の主人公。「組織」で製造されたロボット「デュオロイド」の一体で、ジェンダータイプはGuy。「俺」とデュオを組みコードネーム「デュオアルファ」として、人類の脅威と日々戦っている。惚れっぽい性格で、【オペレーター】をはじめとする人間の女性をよく口説くが一度も成功ならず。当初風呂嫌いだったが、先のアヴァリティア戦で熱湯攻撃を受けてから銭湯趣味に目覚め通うようになった。あつ湯に入るのにハマってる。


【オペレーター】:「組織」の本部に務めていて、本部からの指令を「俺」や『相棒』に伝える伝令役の女性。仕事柄よく「俺」の世話を焼いてくるがおだて上手でもあり、「俺」のわがままを上手くコントロールできる。よく『相棒』に言い寄られるが本人はその気は無く、常にかわしている。銭湯行くときは必ずエステの最上級コースを経費で注文する強かさをも持つ。

最後までお読みいただきありがとうございます!

もし良ければ感想いただけますとありがたいです!

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[良い点] 人間とデュオロイド、二人(?)の真反対な性格の対比が非常に面白く、また「大喰らい」な点が可愛らしいと思えた作品でありました。 [気になる点] ……ナシ!!! [一言] 次もお待ちしておりま…
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