夕暮れの公園で
夕方。
自宅の付近を散歩しての帰り、懐かしさもあって子供の頃に遊んだ児童公園に立ち寄ってみた。
夕暮れのなか。
公園内の街灯はすでに明かりが灯っていた。そしてその明かりに浮かび上がるように、街灯の下にサッカーボールが一つ転がっていた。
おそらく近所の子供の忘れ物だろう。
私は童心に帰って、そのボールを公園の中央に向けて蹴った。
ボールがコロコロと勢いよく地面を転がる。
が、ボールは十メートルほど転がったところで、そこに壁でもあって、それにぶつかったかのようにいきなりピタリと止まった。
そこには何もない。
風も吹いていない。
私がびっくりしていると、ボールは止まった状態から私の方に向かって転がってきた。それも私に向かってまっすぐにである。
ボールが勝手に転がる不思議に、私は頭がひどく混乱した。
――どういうことなの?
私は驚きながらも、転がってきたボールを足で受け止めると、それから今度は試すように再び同じ場所に蹴ってみた。
ボールは公園の中央に向かって十メートルほど転がったところで、やはり今度も先ほどの場所から私の方へと動きの向きを変えた。
そして勢いよく転がってきた。
私はそれを足でうまく受け止められず、後ろにそらしてしまった。
ボールはそのまま転がって、背後にあったベンチの下に入って止まった。
――ここには死んだ者の魂がいるんだ。それもたぶん子供で、きっと今も遊んでるつもりなんだわ。
私はそう思うと、その見えざる子供に大きな声で言ってあげた。
「ナイスシュート!」
夕闇のなか。
男の子の嬉しそうな笑い声が聞こえてきた。