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企画参加作品(ホラー)

夕暮れの公園で

作者: keikato

 夕方。

 自宅の付近を散歩しての帰り、懐かしさもあって子供の頃に遊んだ児童公園に立ち寄ってみた。

 夕暮れのなか。

 公園内の街灯はすでに明かりが灯っていた。そしてその明かりに浮かび上がるように、街灯の下にサッカーボールが一つ転がっていた。

 おそらく近所の子供の忘れ物だろう。

 私は童心に帰って、そのボールを公園の中央に向けて蹴った。

 ボールがコロコロと勢いよく地面を転がる。

 が、ボールは十メートルほど転がったところで、そこに壁でもあって、それにぶつかったかのようにいきなりピタリと止まった。

 そこには何もない。

 風も吹いていない。

 私がびっくりしていると、ボールは止まった状態から私の方に向かって転がってきた。それも私に向かってまっすぐにである。

 ボールが勝手に転がる不思議に、私は頭がひどく混乱した。

――どういうことなの?

 私は驚きながらも、転がってきたボールを足で受け止めると、それから今度は試すように再び同じ場所に蹴ってみた。

 ボールは公園の中央に向かって十メートルほど転がったところで、やはり今度も先ほどの場所から私の方へと動きの向きを変えた。

 そして勢いよく転がってきた。

 私はそれを足でうまく受け止められず、後ろにそらしてしまった。

 ボールはそのまま転がって、背後にあったベンチの下に入って止まった。

――ここには死んだ者の魂がいるんだ。それもたぶん子供で、きっと今も遊んでるつもりなんだわ。

 私はそう思うと、その見えざる子供に大きな声で言ってあげた。

「ナイスシュート!」

 夕闇のなか。

 男の子の嬉しそうな笑い声が聞こえてきた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公の「ナイスシュート!」が、よかったです。勇気のある主人公ですね……! そして、男の子の笑い声が、ほんとにいるよ〜!>.<(・o・;)と思い、怖かったです。
[良い点] 語り手を最初男性だと思って読んでたんですが女性だったんですね。 機転がきいて優しい女性。 最後の文を読んでいたとき男の子の声が聞こえたように感じました。
[一言] 引き続き投稿お疲れさまです! ホラーですが、ラストは温かい気持ちになりました。
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