シュラトの本命
今回はシュラトの本命の話です。
「どうして一度に三人から婚約を申し込まれるんだ」
こんな事はあり得ない。
絶対に変だ。
事の起こりはルミア王女から告げられた婚約破棄だった。
その直後にルフワパ辺境伯爵家令嬢のキリイカ嬢が婚約を申し込んできた。
次に幼馴染みのイアツネ伯爵家令嬢のマリアナ嬢も申し込んできた。
最後に何故かルミア王女までも再婚約を申し込んできた。
キリイカ嬢はドラゴンを素手の一撃で倒せるという噂のある令嬢なので、婚約者にはしたくない。
マリアナ嬢は幼馴染みで、妹のような存在だが、直ぐに面倒事を押し付けてくるので、とても婚約者には出来ない。
ルミア王女は婚約破棄を告げられたので、絶対に再婚約はお断りだ。
何とか穏便に三人との婚約を拒否出来ないだろうか。
そもそも彼女達は恋愛対象にはならない。
僕の恋愛対象は年上の頼れる大人の女性だ。
実はシュラトはマリアナ嬢の姉であるリリアナ嬢に恋心を抱いている。
彼女は僕の理想そのものだ。
「シュラトくん、どうしてマリアナの告白を保留にしたの。もしかして好きな人でも居るの」
「マリアナ嬢は只の幼馴染みとしか思っていません。僕の好きなのはリリアナ嬢、貴女なんです」
リリアナ嬢からマリアナ嬢の告白を保留にした理由と好きな人が居るのかと、問い詰められた。
これは告白する機会だと思い、勇気を振り絞って、彼女の手を握り、好きだと告白した。
「・・・・冗談よね。私は貴方より年上よ」
「年齢なんか関係ありません。貴女は私の理想の女性なんです」
「・・・・」
告白してしまったので、もう後には引けない。
「子供の頃から好きでした。僕と婚約して下さい」
そのまま婚約を申し込んだ。
「・・・・本気なの」
「もちろん本気です」
「言葉だけでは信用出来ないわ」
「それなら行動で示します」
シュラトはリリアナを抱きしめて、唇をふさいだ。
「う、うぐぐ」
直ぐに唇を離そうとするリリアナの顔を抑えて、キスを続けさせた。
「こ、これ以上は駄目よ」
舌を絡めようとしたが、拒否されてしまった。
「・・・・シュラトくんって大胆なのね。本当に十七歳なの」
「十七歳ならディープキスくらいしますよ」
「・・・・」
リリアナさんは赤面して、顔を伏せてしまった。
「マリアナには秘密にしてね」
「何故ですか」
「マリアナはシュラトくんが好きなのよ」
「僕が好きなのはリリアナさんです」
「・・・・それは勘違いよ。こんな年上が好きなんて普通はあり得ない。憧れと恋愛を間違って認識しているのよ」
「勘違いでも、間違って認識している訳ではありません。僕の好きなのはリリアナさんだけです」
その後リリアナさんが納得するまで告白し続けた。
「・・・・」
「これで本気だと分かってくれましたか。それと返事を貰えますか」
「・・・・暫く考えさせてくれないかな」
「分かりました。良い返事を期待しています」
答えは保留されたが、取り敢えず脈はあるみたいだ。
「どうしよう。シュラトくんから告白されてしまった。しかも唇まで奪われた。私のファーストキスだったのに」
私は十九歳、彼は十七歳だ。
年上の令嬢は婚約者として、普通は敬遠される。
それなのに年齢なんか、関係無いと言ってくれた。
シュラトくんは幼馴染みで、彼が幼い頃から知っている。
昔は素直で、可愛い男の子だった。
今は成長して、とても逞しくなった。
私の理想の男性だ。
しかし妹のマリアナも彼に恋心を抱いているので、告白を受け入れる訳にはいかない。