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5.それぞれの夜。

ここで一区切り。

もしよければ、あとがきもお読みください_(:3 」∠)_








「本当に、甘えて良いのかな……?」




 ――帰宅後。

 自室でベッドに寝転がった美鈴は、スマホに表示される二宮寿人の名前を見てそう呟いた。連絡先を交換したからといって、あちらから頻繁に連絡があるわけではない。本当に必要最低限で、朝の挨拶を送り合うなどといったものもないのだ。

 寿人に下心なんてない。

 ただ本心から、美鈴の心配をしてくれているのだった。



「…………」



 そう考えながら、スマホの液晶を見ていると。

 自然、彼とのトーク画面を表示。そして、感謝の言葉を打ち込んでいた。

 だがそこで、美鈴はふっと我に返る。これではまるで、自分が彼に依存しているようではないだろうか。さらには、彼の言い分を肯定しているようでもある。



「わ、私は無理なんてしていません! それは、本当で……!!」



 そこまで考えて。

 彼女は誰に宛てたわけでもない言い訳を口にして、枕に顔を埋めた。

 顔がとにかく熱い。火が出るよう、とはよく言ったものだ。羞恥心に苛まれる少女は、先人の言葉のセンスに感心することで意識を別に移そうとする。


 それでも、隠しきれない気持ちが湧き上がってきていた。

 これは感謝のそれなのか。それとも――。



「…………ううん、そんなのじゃない」



 首を左右に振って。

 美鈴は改めて、自分の中に生まれた感情を否定した。

 何故なら、自分はそんなに弱い人間ではないから。今までだって、両親を始めとした周囲の期待に余さず応えてきた。

 だから、これからもきっとできるはず。

 先日の一件はやはり、少しばかりの気の迷いでしかないのだ。




「私、弱くないもん……」




 だから、いじけたようにそう口にする。

 その口振りがすでに、年不相応に幼いものだと彼女は気付かない。部屋の明かりを消して、大きく息をつきながら少女は眠りの中へと。



 自分は、彼のことを許さない。

 そんな対抗心を秘めながら、目蓋を閉じるのだった。











「茜ー? そろそろ飯できるから、手伝ってくれー!」

「はーい!」



 俺は週三のバイトを終えて帰宅すると、夕食を作ってから妹に声をかけた。

 テレビを見ていた妹の茜は、いつも通り手際よく食器を運ぶ。



「あにき、今日はなに?」

「おう! お前の大好きなチャーハンだぞ!」

「マジで!? あにきのチャーハン大好きだ!!」



 大皿に山盛りのそれを乗せて運ぶ。

 茶碗の用意ができたちゃぶ台の上に置けば、今日の夕食の完成だ。茜は手を合わせ、元気よく「いただきます!」と口にする。そして、大皿から茶碗にチャーハンを移して食べ始めた。

 満面の笑みで頬張る妹に、俺はホッとひと安心。

 次いで自分の分を取って口に運んだ。



「ねぇ、あにき!」

「んー? どうした、茜」

「今日は、なにかあったのか?」

「どうしたんだ、藪から棒に」



 そんな最中に。

 妹は口元に米粒を付けながら、そう訊いてきた。

 首を傾げると、茜はまだ上手く表現できないなりにこう言う。




「だって、なんだかあにき、今日はずっと優しい顔してる!」――と。




 それを指摘されて、俺は思わず呆気に取られた。

 そして、改めて納得するのだ。




「あー、そうだな……」




 良いことがあった、というのは変かもしれない。

 だが、どこか安心するようなことはあった。


 妹に説明するには、まだ少し難しいのかもしれない。

 そう思って、俺は曖昧にこう答えたのだった。




「もしかしたら、嬉しかったのかもな」






 彼女が少しだけ、自分を頼ってくれたような。

 そんな一連の出来事を思い出して……。




 


面白かった

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