4.強がる気持ち。
今日はもう一話(*‘ω‘ *)?
「それで、話ってなに?」
「言わなくても分かるでしょう。先日、あの公園でのことです」
「あぁ、俺が天城さんを甘やかすってやつ?」
「そうです!!」
昼休みに俺と天城は、生徒があまりやってこない体育館倉庫の裏にいた。
ここなら秘密の話をするのに持ってこいだ。そう考えていると、彼女は明らかに不機嫌な表情を浮かべてそう声を上げる。
どうしたのだろうと思っていると、大きくため息をつく天城。
首を傾げていると、彼女は仏頂面で続けるのだった。
「あの時のことは忘れてください」
「なんで?」
「なんで、ではありません!!」
訊き返すと、今度はハッキリとそう怒鳴る。
かといって凄みがあるわけでもないので、怖くはなかった。
こちらが意味を理解できずにキョトンとしていると、天城は頭を抱えて悩ましげに言う。
「あの日は、どうかしていたんです。いつもだったらあのような、誰かに泣き顔を見せるなんてことはしないのですから……」
「うーん……つまり?」
「アレは一時の気の迷いです。だから、忘れてください」
取り付く島などないぞ、と言わんばかりに。
天城は腕を組んでそう語ると、そっぽを向いてしまった。
「……なるほど?」
「納得しましたか。それでは、話は以上で――」
「天城さんはそうやって、また強がるつもりなのか」
「…………どういうこと、ですか?」
そして、立ち去ろうとする。
俺はそんな彼女の背中に、思っていたことをぶつけた。
すると天城も気にはなったのか、立ち止まって怒ったような視線を投げてくる。俺は彼女のところまで歩み寄りながら、率直な意見を伝えることにした。
「俺って馬鹿だから、難しいことは分からないんだけどさ。今の天城さんが強がっているのは、なんとなく分かるんだよ」
「なっ……どこをどう見れば、私が強がっているように見えるんです!?」
「え、だってさっきから――」
どうやら自覚していないので、教えてあげることにしよう。
そう思って、俺は……。
「天城さんの声、ずっと震えてるよ?」――と。
彼女の頭を軽く撫でながらそう告げた。
俺に向けた言葉はどれも、悲しげに震えていたのだと。
「え、うそ……」
「ホントだよ?」
俺の指摘に、天城は明らかな動揺を見せた。
そして不意に漏れた自身の声を意識して、それが事実だと知る。
そうすると震えは声だけでなく、だんだんと肩や指先へ。最後には瞳が震えて、涙がにじみ始めたのだった。
「だから、無理しないでよ。俺ってこれでも、秘密は守るからさ」
「………………っ!」
そう声をかけると、天城はうつむいてしまう。
だけども、俺の手をむやみに振り払うことはしなかった。
素直ではないかもしない。
周囲からは、高嶺の花と呼ばれているかもしれない。
でも、俺は知ってしまった。
天城美鈴は甘え下手なだけの普通の女の子だ、と。
「私は、二宮くんを許しませんから……!」
まだ感情を必死に押し殺しながら、少女はそう言った。
俺はそれを聞きながら、ただ一言こう答える。
「……そっか。分かったよ」――と。
なんてことない日の、なんてことない昼休み。
だけど、そんな日常の中で俺は天城美鈴の心に触れられた気がした。
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