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3/6

3.宣言。

書けたので、投稿_(:3 」∠)_

次回でオープニング終わりますね。










「二宮、くん……?」

「大丈夫? そんなに腹減ってるのか?」

「え、えぇ……」




 俺がコロッケを差し出すと、天城は明らかに困惑した表情を浮かべた。

 いったい、どうしたのだろうか。ここまでの涙を流す理由というものに、俺は空腹以外に思い当たる節がなかった。

 そう考えて首を傾げていると、しばし悩んだようにしてから天城は……。



「そ、それなら一つ……?」



 まるで気圧されたように。

 彼女はコロッケを受け取ってくれたのだった。







「期待が、怖い……?」

「……はい」



 並んでベンチに腰かけて、天城の話を聞いてみる。

 すると、出てきたのはそんな内容だった。



「色々な人が、私に期待してくれているんです。天城美鈴なら、きっとできるはずだ……って。それは、とても嬉しいことのはずなんです。でも――」



 曰く、彼女の両親はとても厳格な性格をしているらしい。

 テストの点数や成績、さらには模試の結果に至るまで。事細やかに目を光らせ、少しでも粗が見つかれば追及の手を止めないのだという。

 それを天城は『期待』と言い換えたが、要するに過度な『プレッシャー』だ。


 幼少期からそのように教育された少女は、いつしか周囲に弱みを見せないよう努めるようになってしまった。俺とは正反対な生き方だ、と思われる。

 だからこそ今の天城美鈴は、その重圧に押しつぶされそうになっていた。



「――怖いんです。みんなの目が、常に私を監視しているみたいで……!」



 そう、少女は訴える。

 一連の話を聞いていて感じたのは、彼女がとても素直な子だ、ということ。

 期待なんて、言ってしまえば他人の勝手な感情だ。それだというのに、天城は真剣にそれを受け止めて、かつ応えようと努力する。

 自己犠牲的だとさえ云えるほどの献身、なのかもしれない。

 だから、俺はそれを正直に言った。



「優しい子なんだな、天城は」

「え……?」



 すると彼女は、まるで想像していなかったかのような顔をする。

 再び涙がにじみ始めた瞳を揺らし、俺の顔を見つめ返した。



「どういう、意味ですか……?」

「そのままの意味だけど。もしかして、自覚ないの?」

「……そんな、私は優しくなんて…………」



 そう言うと天城は、静かに目を伏せてこう口にする。




「私は、ただ臆病なだけなんです」――と。




 臆病だから、怖い。

 期待を裏切った結果、見放されるのが怖い。



「臆病だから、今まで必死に縋りついてきただけなんです。だから、決して優しいなんてことはないんですよ……」



 そう語った天城は、どこか落ち込んだ様子で。

 でも、彼女の言葉に俺はこんな考えを持つのだった。



「いいや、天城は優しいよ」

「え……?」




 確信を得て。

 俺は、それを伝えるのだった。





「だって、無視できたはずだろ? 反発しても、誰も文句は言えない。それでも期待に応えようとしたのは、天城が誰かを喜ばせたい、優しい子だからだよ」――と。





 そうなのだ。

 臆病だからと、彼女は言った。

 それでも、その裏にあるのはやはり献身的な想い。



「だから天城は、本当に優しい子なんだよ」

「………………!」



 俺の言葉を聞いて、天城はハッとしたように目を見開いた。

 そんなクラスメイトに、俺は続けて言う。



「ただ、もう少し他人に甘えることを覚えればいいかな」

「甘える、こと……?」

「そそ、甘える」



 それは、きっととても単純なことで。

 甘えだと一口に言えば、そこまで良い印象はない。

 でも、相手の厚意に応えると言い換えれば、それはガラッと変わる。



「人間は一人だと生きていけないからさ。結局のところ、何かしら誰かを頼らなきゃいけないんだ。甘えるってのは、それの根っこみたいなものなんだよ」

「………………」



 俺の言葉に天城は、少し考え込む様子だった。

 そして、しばしの沈黙の後に彼女はこう言うのだ。





「私、いままで誰かに甘えたことなんてないので……」――と。





 それは、至極もっともなことだった。

 彼女のような女の子が、自身に甘えを許すわけがない。

 むしろそうやって、誰かに弱みを見せることさえも恐れているのだ。




「だったら、俺に甘えればいいよ」

「え……?」

「いいや、違うな。……そうだ!」





 だから、俺は天城の前に立って手を差し出す。

 その上でこう言うのだった。








「それなら、俺が勝手に天城のことを甘やかすよ!」――と。







 


面白かった

続きが気になる

更新がんばってマジでさ……。



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