3.宣言。
書けたので、投稿_(:3 」∠)_
次回でオープニング終わりますね。
「二宮、くん……?」
「大丈夫? そんなに腹減ってるのか?」
「え、えぇ……」
俺がコロッケを差し出すと、天城は明らかに困惑した表情を浮かべた。
いったい、どうしたのだろうか。ここまでの涙を流す理由というものに、俺は空腹以外に思い当たる節がなかった。
そう考えて首を傾げていると、しばし悩んだようにしてから天城は……。
「そ、それなら一つ……?」
まるで気圧されたように。
彼女はコロッケを受け取ってくれたのだった。
◆
「期待が、怖い……?」
「……はい」
並んでベンチに腰かけて、天城の話を聞いてみる。
すると、出てきたのはそんな内容だった。
「色々な人が、私に期待してくれているんです。天城美鈴なら、きっとできるはずだ……って。それは、とても嬉しいことのはずなんです。でも――」
曰く、彼女の両親はとても厳格な性格をしているらしい。
テストの点数や成績、さらには模試の結果に至るまで。事細やかに目を光らせ、少しでも粗が見つかれば追及の手を止めないのだという。
それを天城は『期待』と言い換えたが、要するに過度な『プレッシャー』だ。
幼少期からそのように教育された少女は、いつしか周囲に弱みを見せないよう努めるようになってしまった。俺とは正反対な生き方だ、と思われる。
だからこそ今の天城美鈴は、その重圧に押しつぶされそうになっていた。
「――怖いんです。みんなの目が、常に私を監視しているみたいで……!」
そう、少女は訴える。
一連の話を聞いていて感じたのは、彼女がとても素直な子だ、ということ。
期待なんて、言ってしまえば他人の勝手な感情だ。それだというのに、天城は真剣にそれを受け止めて、かつ応えようと努力する。
自己犠牲的だとさえ云えるほどの献身、なのかもしれない。
だから、俺はそれを正直に言った。
「優しい子なんだな、天城は」
「え……?」
すると彼女は、まるで想像していなかったかのような顔をする。
再び涙がにじみ始めた瞳を揺らし、俺の顔を見つめ返した。
「どういう、意味ですか……?」
「そのままの意味だけど。もしかして、自覚ないの?」
「……そんな、私は優しくなんて…………」
そう言うと天城は、静かに目を伏せてこう口にする。
「私は、ただ臆病なだけなんです」――と。
臆病だから、怖い。
期待を裏切った結果、見放されるのが怖い。
「臆病だから、今まで必死に縋りついてきただけなんです。だから、決して優しいなんてことはないんですよ……」
そう語った天城は、どこか落ち込んだ様子で。
でも、彼女の言葉に俺はこんな考えを持つのだった。
「いいや、天城は優しいよ」
「え……?」
確信を得て。
俺は、それを伝えるのだった。
「だって、無視できたはずだろ? 反発しても、誰も文句は言えない。それでも期待に応えようとしたのは、天城が誰かを喜ばせたい、優しい子だからだよ」――と。
そうなのだ。
臆病だからと、彼女は言った。
それでも、その裏にあるのはやはり献身的な想い。
「だから天城は、本当に優しい子なんだよ」
「………………!」
俺の言葉を聞いて、天城はハッとしたように目を見開いた。
そんなクラスメイトに、俺は続けて言う。
「ただ、もう少し他人に甘えることを覚えればいいかな」
「甘える、こと……?」
「そそ、甘える」
それは、きっととても単純なことで。
甘えだと一口に言えば、そこまで良い印象はない。
でも、相手の厚意に応えると言い換えれば、それはガラッと変わる。
「人間は一人だと生きていけないからさ。結局のところ、何かしら誰かを頼らなきゃいけないんだ。甘えるってのは、それの根っこみたいなものなんだよ」
「………………」
俺の言葉に天城は、少し考え込む様子だった。
そして、しばしの沈黙の後に彼女はこう言うのだ。
「私、いままで誰かに甘えたことなんてないので……」――と。
それは、至極もっともなことだった。
彼女のような女の子が、自身に甘えを許すわけがない。
むしろそうやって、誰かに弱みを見せることさえも恐れているのだ。
「だったら、俺に甘えればいいよ」
「え……?」
「いいや、違うな。……そうだ!」
だから、俺は天城の前に立って手を差し出す。
その上でこう言うのだった。
「それなら、俺が勝手に天城のことを甘やかすよ!」――と。
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