2.出会いの一幕。
書けたので投稿_(:3 」∠)_
「今日も終わったー……」
一日の授業を終えて、俺は帰宅の途につく。
自分の偏差値よりも圧倒的上位の高校に、それなりに近いからという理由で記念受験したら合格してしまった。授業について行くのは大変だが――まぁ、なんとかなるだろう。
唯一の取柄ともいえる楽天的な性格が幸いして、高校生活はそこそこに楽しかった。もっとも部活動はしていないので、青春謳歌という言葉とは距離があるけど。
「でも、中学時代はこっちの方こなかったからな」
買い食いのために寄り道するのも、楽しいものだ。
今日はどこに行こうかと考えながら一人歩いていると、香しい匂いが嗅覚を刺激した。温かく懐かしい、これはきっとコロッケのものだろう。
たしか、この先には少し古い商店街があるはずだ。
「コロッケか、悪くない! よし、今日の御馳走は決まった!!」
そうと決まれば善は急げ。
俺は自分でも珍妙だと思う鼻歌を口遊みながら、匂いをたどって行った。――その途中、ふと何かが聞こえた気がして立ち止まる。
「ん、なんだ……?」
気のせい、だろうか……?
立ち止まってみると、その声は聞こえなくなっていた。
代わりと言っては何だが、大きく腹の虫が叫び声をあげる。ひとまずコロッケを買いに、視線の先にある肉屋に行くことにしよう。
そう思って、駆け足で向かうのだった。
◆
――で、有り金の半分をコロッケに使って。
「いやー、こんなたくさんのコロッケ食べきれるかな?」
俺はコロッケのたっぷり入った袋を小脇に抱えて、思わずそう笑う。
あまりにも美味しそうな匂いと見た目ゆえに、ついつい大量に買い込んでしまった。一人ではさすがに食べきれないので、家に帰ってから妹と一緒に食べよう。
そう考えて、ご機嫌な足取りで先ほどの場所まで戻ってきた。
すると、また小さな声が聞こえるのだ。
「……ん、でもこれって?」
だけど、どうにもさっきとは違う様子。
今度は明確に、それがすすり泣く声だというのが分かった。だから、
「誰か、いるのか?」
俺の足は自然と、その声のする方へと向かう。
そうして進むと小さな公園に出た。人気のないその場所に設置されたベンチを見ると、どうやら声の主らしき女の子の姿。制服を見る限り、自分と同じ学校の――ん?
「天城……?」
それどころか、クラスメイトのようだった。
容姿端麗、成績優秀で運動神経抜群のミスパーフェクト。
そんな彼女がどういうわけか、人目を避けて泣いていたのだった。
「…………ん、もしかして?」
俺はそんな天城に歩み寄り、ハッとした表情の彼女に言う。
コロッケの袋を差し出しながら……。
「天城、もしかしてスゲー腹減ってるのか?」――と。