87:図書館にお出掛けです!
■アデル・ロージット 17歳
■第500期 Cランク【赤の塔】塔主
後日、わたくし達は皆でバベリオの街へと繰り出しました。休塔日にしまして朝からお出掛けです。
我々五名に加え、エメリーさんとゼンガーさんもご一緒です。
ジータはどこかに遊びにいきました。まあいいでしょう。あの人が延々と調べものなどできるはずもありませんし。
というわけで目的地は図書館です。
バベリオの図書館は当然といいますか、バベルに関する書物が極端に多い。
利用客が住民と冒険者ばかりなのでしょうから当たり前です。
バベリオ住民にとっては英雄譚の舞台ですし、冒険者にとっては攻略しなければならない試練の場。どちらも知識を欲するものでしょうし。
調べたいのはこのような内容です。
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1、<悪意感知>を持つ魔物
2、<魔力感知>を持つ魔物
3、周囲の魔力を乱す効果のある魔法及びスキルの調査
4、限定スキルについて
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<悪意感知>や<魔力感知>を持つ魔物がわたくし達のリスト――まだ召喚していない魔物の中にいればいいのですが、いなければ他の塔から塔主戦争で召喚権利を得るということも考えなくてはいけません。特に<悪意感知>は。
わたくしとしては<魔力感知>も火精霊ではなく別の魔物で代替えできればと考えております。外に連れ歩く時のことを考えて。
③が一番調べるのが難しそうですわね。『魔力を乱す』という表現が、はたして資料で書かれているかと。
これは素直にレイチェル様にお聞きしたほうがいいのかもしれませんね。シャルロットさんには申し訳ないですが。
しかし何も調べないというのも愚かですのでもちろん出来る限り調べます。
限定スキルに関しては案外資料に残っているのではないかと踏んでいます。それこそ英雄譚のような感じで。
しかしわたくし達が取得できる限定スキルは過去にないもののはずなので、「こういうスキルがある」と理解するに留めておくだけです。
レイチェル様曰く先代【女帝】とシャルロットさんでは取得できる限定スキルが違うらしいので。
事前に調べた過去の【赤の塔】や【忍耐の塔】でも限定スキルについては不明ですしね。
「私はそれと付与魔法についても勉強しなければ」
シャルロットさんが意気込んでいます。わたくしがお教えできれば良かったのですが残念ながら詳しくありません。
メルセドウ王国は魔法バカが多いですから学校でも魔法の授業は多かったのです。それで一応わたくしも付与魔法について学んではいたのですが……本当にさわりだけですね。こんな魔法もあるよと、それくらいのものです。
そもそも付与魔法を使う人もいなければ研究する人もいない。学校でも専門では教えないのです。
好んで研究する人は変人扱いされるでしょうね。特にメルセドウ王国の場合は。
しかしさすがに図書館には何かしら資料があるでしょう。期待しておきます。
さて、そうして大通りを歩くことしばし。
唐突に妙な声が飛び込んでまいりました。
「おおっ! なんと麗しき女性よっ! 可憐なる赤き薔薇っ! まさかこんなところに咲いていようとはっ! お嬢さん、よろしければわたしとお茶でも――」
くるくると回りながらわたくしに近づいて来た男は、目の前までくると片膝をついて手を差し伸べてきました。
皆さんちょっと引き気味です。お気持ちはお察ししますわ。
「まあ、わたくしにナンパとは随分と畏れ知らず――」
と言いかけたところで気付きました。この優男は……
「……貴方、【傲慢の塔】の神定英雄ですわね」
「おおっ! わたしの事を知っておられるとはっ! これは運命っ! まさに運命の出会いっ!」
はぁ、と溜息しかでませんわね。塔主も馬鹿なら神定英雄も馬鹿ということですか。
この男の情報はあまりないのですよね。初出の神定英雄で、名の知れた英雄ではないとその程度。
おそらくフッツィルさんのほうが情報を持っていらっしゃるでしょう。シャルロットさんの一件もあって【傲慢の塔】も多少は調べていらっしゃるでしょうし。
「ともかく目障りですわ。大人しく飼い主のもとにお帰りなさい」
それだけ言ってスタスタと離れます。ささ、皆さんさっさと行きましょう。
後ろから「愛しの君―っ!」などと聞こえますが無視です。ああ気持ち悪いですわ。
■ノノア 15歳 狐獣人
■第500期 Fランク【世沸者の塔】塔主
アデルさん、カッコよかったですねー。さすがお貴族様。
ナンパされなれているのでしょうか、断り方が堂に入ってました。
フゥさんが仰っていましたが、あの男の人はシシェートさんという異世界人の神定英雄なんだそうです。
おそらく魔法剣士だそうですがその実力の程は不明だと。
異世界人と聞いて皆さんの目はエメリーさんに向けられたのですが、エメリーさんの世界の人ではないそうです。
なぜそう言い切れるのかと言うと――
『わたくしの世界の人間は基人族と呼ばれますが、戦闘能力が全くないのです。総数で二千程度しかいない絶滅危惧種なのですよ』
とのこと。これには皆さん驚きました。
こちらの世界では人間が八割を占めますし、強い人間だってたくさんいます。ジータさんやゼンガーさんしかり。
世界が変わればこんなにも違うものなんですね。
気になったので獣人についてもお聞きしました。
『獣人という括りではなく種族が細かく分かれておりましたが、狐の獣人――狐人族はノノア様と同じように火魔法が得意でしたね』
ああ、そこは一緒なんですね。まあこちらの世界では剣士の狐獣人とかもいるでしょうけど。
ちなみにドワーフやエルフも似ているようで結構違う別種族らしいです。
種族自体が膨大な数あるらしく、エメリーさんの多肢族というのもその中の一つにすぎないと。
こちらは四つしかないんですが……どっちがいいのでしょうね。
ともかくそれから図書館に行きまして、一日かけて色々と調べました。
ここでもエメリーさんが<速読>というスキルを使ってとんでもない速さで調べていましたが割愛します。
私は私でスライムについて調べていました。
結果、どうやらCランクのサーチスライムとBランクのマジックスライムというのが<魔力感知>持ちの可能性があると。
まだ召喚していない魔物なのでTPに余裕が出来次第召喚してみようと思います。
エンジェルスライムについては何も分かりませんでした。<悪意感知>は諦めたほうがいいかもです。
全体としては色々な魔物やスキルの情報を手に入れられたのですが、やはり『周囲の魔力を乱す効果のある魔法及びスキル』というのが難しく、なんとなくのニュアンスでピックアップするに留まりました。
例えばシャドウアサシンという亜人系の魔物が<影纏い>というスキルを持っているらしく、効果は『身体に影を纏って察知されにくくなる』というものだそうです。
しかし「これは魔力を乱しているってことなの?」という感じで止まってしまいます。
そもそも魔法ならまだしもスキルの場合『相手に影響を与えるスキル』でなければいけません。でないと塔主が眷属の魔物にスキルをかけてもらうということが出来ませんからね。
だったら付与魔法が得意な魔物とかを見つけたほうが早いのでは、となりましてそれも含めて調べていたわけです。
アデルさんのところは<炎の波動>を使える魔物がいそうですし、フゥさんのところは<風の波動>を使える魔物がいそうです。
でもドロシーさんと私のところは無理っぽいですね。マジックスライムでもダメですかね……。
その日は図書館から出て皆さんでお食事をして帰りました。
たまにこうして皆さんとお会いすると楽しいです。いつもは画面越しですしね。
本当に同盟に誘って頂いて感謝です。
◆
で、翌日、つまり今日ですが画面を見ながら塔内の様子を監視しつつ、自分の魔物リストを見たりして頭を悩ませていました。
そして妙な侵入者を見つけたのです。
それは四人組の冒険者パーティー。武器を見る限り前衛三人と魔法使いが一人でしょう。
見ていると何か様子がおかしいのです。
うちの【世沸者の塔】は普通の塔とは全く違う塔構成をしているので、探索も普通にとは行えません。
侵入者の方々はたいてい、パーティー内でわーわーぎゃーぎゃー騒ぎながらヒントや鍵を探し、一喜一憂するというのを繰り返します。
しかしその四人組は何も喋りませんし、どこかボケーとしていました。
入れる部屋を見つければヒントも探さずうろうろするのみ。パーティー内で会話するどころか目も合わせません。
廊下に出て入れない部屋を見つければ扉を剣でガンガンと斬りつけてみる。もちろん塔の扉が壊れることはありません。
無駄な努力をひとしきりやったあと、彼らは塔を出て行きました。
何がしたかったのでしょう。全く意味がわかりません。
あれですかね。【世沸者の塔】の情報を何も持たずにきて、どんな塔なのかを見て回るだけだったとか。
まあ一応皆さんに報告しておきましょう。
■チーノス 15歳
■Fランク冒険者 パーティー【一光一影】所属
「えっ、【落葉の塔】が攻略されたのか!?」
バベル帰りの冒険者ギルドでそんな話を聞いて驚いた。
【落葉の塔】はFランクだが一階から森の階層になっていて見通しが悪い。
魔物は弱いが羽虫やワーム系ばかりであまり人気のない塔だ。俺たちは一回しか行ってない。
しかしそんな人気のないFランクでも攻略は攻略。
俺たちだったら英雄きどりで浮かれていることだろう。
「攻略したのはどこのパーティーなんだ?」
「いやそれが分かんねえんだよ」
「は?」
攻略されたのは昨日なのだが、昨日の夜から今日になっても誰も攻略したとは報告に来ていないらしい。
冒険者パーティーだったら攻略したその足でギルドに報告にくるだろう。報酬だってあるだろうしランクも上がるに違いない。
しかしそれがないとなると――
「冒険者じゃなく傭兵とか騎士団とかか?」
「個別でバベルジュエルの取得を依頼されてた、とかなら考えられるんだけどな。それだって酒場で打ち上げくらいしてそうじゃないか? そしたら噂話の一つだって入るだろ」
「じゃあ急いでバベリオを出て依頼主のところに帰った」
「衛兵にも聞いたらしいがそれもないらしい。だからお前らに聞いてんだよ。Fランクなら昨日【落葉の塔】行ってないかとな」
いや行ってないから分からないが……。
とにかくバベリオの街としても困っているそうだ。塔の攻略者が不明ってのは一大事だそうで。
あーだから衛兵にも話がいってるのか。フランシス都市長も躍起になってるのかもしれねえ。
全くおかしな話だな。俺も知り合いに探ってみるか。
色々と説明過多な上、説明下手で申し訳ないです。分かりづらいですしねー。
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