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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第四章 女帝の塔の周りはトラブルばかり!
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74:これが私のSランク固有魔物です!



■ヴォルドック 26歳 狼獣人

■第490期 Bランク【風の塔】塔主



「くそっ! なんだあの鳥はっ! 俺の虫部隊が……!」


「タウロ! ミスリルヘラクレスだけでもボス部屋に逃がせ! こんな所でやられるわけにはいかねえぞ! ペルメもだ!」


「おう! ちっくしょう……! 最後の最後に……なんなんだよこの階層はよお!」



 【輝翼の塔】の六階層。実質的に最終関門とも言える階層。

 【女帝】からの情報では最後の大ボス部屋に眷属であるSランクの妖精女王(ティターニア)がいると分かっていたが、それ以外のことはいまいち掴めなかった。


 おそらく妖精女王(ティターニア)以外にも他の塔の眷属がいるはず。だからこそ大ボス部屋まではなるべく数を揃えたまま進みたいと。

 セイレーンは俺の魔物の中では群を抜いて強いが、風属性に特化しているからこその強さだ。

 それがはたして妖精女王(ティターニア)に対して有効か……懸念があるからこそ慎重にもなる。



 この階層、最大の敵は『樹氷雪原』という塔構成だった。

 なにせ地上戦には向かないし、残っているダンピールが行軍しづらい。合わせて飛行戦力の足も鈍くなる。

 俺の魔物の鳥たちも、下の階層でストームイーグルを失ったことで半壊している。空の主力はタウロの虫部隊だ。


 一方で襲ってくるのはエアリアルクロウ、アイスバードなどこの階層に適した鳥部隊だ。

 相変わらず嫌がらせのような強襲をしては撤退を繰り返す。それもかなりの練度だ。

 恐らく指揮官級の魔物がいるのだろうと思いつつ何とか歩みを進め、いよいよ大ボス部屋に近づいた。



 ――というところで、その指揮官級の鳥が現れたのだ。



 七色に輝く長い翼を持つ大きな猛禽類。

 鳥系の魔物が多い俺の塔のリストでも知らない鳥だ。                                          

 おそらく【輝翼】の固有魔物に違いない。高ランクは確定。

 下手すればSランク……いや、Dランクの【輝翼】に召喚できるはずがない。……しかし【女帝】がSランクを召喚している以上、ないとも言い切れない。


 思考が交錯する中、その鳥を中心とした部隊が攻めに転じてきた。

 今までのようなヒットアンドアウェイではない。こちらの飛行部隊を潰そうという意思を感じる攻撃だ。


 狙いはミスリルヘラクレスだ。こちらの指揮官級眷属を一体でも削っておきたいと。

 妖精女王(ティターニア)は属性魔法のエキスパート。風魔法に限ればセイレーンが上だろうが妖精女王(ティターニア)は全ての属性を操る。

 一方でミスリルヘラクレスは誰よりも高い魔法防御を誇る。

 だからこそ妖精女王(ティターニア)とぶつかる前に標的にされたのだ。



 逆に言えば相手は恐れているということだ。

 俺はタウロに指示を出した。他の魔物を盾にしてでもミスリルヘラクレスを大ボス部屋に向かわせるように。

 セイレーン、ヴァンパイア、ミスリルヘラクレスが揃って大ボスと当たれば勝機は高まる。それを敵が自白しているようなものだからな。


 しかしあの鳥の攻撃は苛烈だった。

 風魔法と光魔法とを連発しつつ、その巨体で次々に討ち取っていく。

 セイレーンに迎撃させることも考えたが大ボスの為に温存もしていきたい。


 何よりジータたちがすでに九階層に上がっている。

 早く【輝翼】を攻略せねばと内心焦る。


 そうして何体もの犠牲の果て、何とか眷属の三体を大ボス部屋に入れることに成功した。

 残った魔物は眷属の他にダンピールが少々、虫が数匹。総数は二十に満たなかった。



 そこは外の雪原とはまるで違う、ただの石造りの大部屋だった。何の変哲もないボス部屋。

 すでに向こうは布陣を終えている。対面するように広がるのは……明らかにこちらより多い。


 前衛と後衛ではっきり分かれているのもすぐに分かる。

 前はBランクのミスリルゴーレムが十体。物理にも魔法にも強い壁だ。

 中央にはAランクのクリスタルゴーレムがいる。おそらく【忍耐】の眷属だろう。


 【忍耐】はこの塔主戦争(バトル)の為に50,000TPで魔物を用意したと聞いていたので警戒していたが……クリスタルゴーレムではそこまで掛からないはず。

 見栄を張ったか、それともミスリルゴーレムも含めた総数で50,000TPという意味だったのか……。


 その鉄壁の後ろには空を飛ぶ妖精と、地には小さい精霊の群れ。

 中央には最大の脅威である妖精女王(ティターニア)が総指揮官とばかりに陣取っていた。


 妖精は【女帝】が塔から持ってきたヤツもいるだろうがそれだけではない。

 おそらく【輝翼】や【赤】【忍耐】も妖精なり精霊なりを出しているだろう。


 あれら全てが妖精女王(ティターニア)の支配下に入るとなれば……。




■シャルロット 15歳

■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主



「ちっ! ミスリルヘラクレスを仕留めきれんかったか……。シャル、ドロシー、すまんが頼むぞ」


「はいっ!」

「任せときぃ!」



 いよいよ防衛側の最終決戦となりました。


 ここまでずっとフゥさんは相手の情報を整理しつつ、皆さんに指示を出し、自らも塔の防衛に努めるという常人離れしたことを続けて来ました。

 私も同じ塔主として見習い、参考にできる部分も非常に多く。

 だからこそ最後くらいフゥさんの分まで頑張りたいと思うのです。


 すでに配置は終わっています。もちろん私の<付与魔法>も直前に出来る限りかけました。



「ターニアさん! セイレーンをお願いします! お気を付けて!」


『えぇえぇ分かりましたわ~。みんなも張り切っておりますし~わたくしも精一杯やっちゃいますわよ~』



 ターニアさん、精霊界の女王様らしいんですけど、召喚してみたらものすごくのほほんとした方だったんですよね……。

 大らかと言うか、とっつきやすいと言うか、女王様っぽくないと言うか……。


 それでも能力は本物です。さすがはSランクと言えるほどのものでした。



=====

名前:ターニア

種族:妖精女王(ティターニア)

職業:シャルロットの眷属

LV:60

筋力:B

魔力:S

体力:B+

敏捷:A+

器用:S-

スキル:四属性魔法、光魔法、統率、鼓舞、共感応、並列思考、魔力感知

=====



 この上に私の<付与魔法>で一時的にではありますがステータスが上昇している状態です。

 ターニアさんは豪華な短杖を持っていますが、エメリーさんから武器の支給は受けていません。エメリーさんが持っている杖は私に貸して頂いている【黒曜賢者の杖】だけとのことです。

 それでも魔法と指揮に特化した能力は、さすが妖精女王(ティターニア)様と言えるほど。



 私はターニアさんの直属としてCランクのハイフェアリーを五体用意しました。一緒に配置しています。

 加えてフゥさんも自塔戦力としてハイフェアリーを。アデルさんはトカゲン以外の火精霊(サラマンダー)を。ドロシーさんはノーミンと、同じく土精霊(ノーム)を用意しました。

 そうして妖精・精霊の後衛部隊が出来上がったのです。


 それら全てがターニアさんの指揮下に入る。

 すなわち、私の眷属に皆さんの魔物の命が預けられたということ。


 皆さんからは「勝利を優先させろ」とは言われていますが、私としてはなるべく使い潰すような真似はしたくありません。塔主としては甘いのでしょうが。

 とは言え、私は見守ることしかできません。ターニアさんに全てをお任せします。


 ドロシーさんはAランクのクリスタルゴーレムを眷属としたらしいです。名前はキラリン。

 さらにミスリルゴーレムを十体も。

 見るからに硬そうな力強い前衛部隊です。

 さすがドロシーさん。さすが【忍耐の塔】。その防衛力は誰より上でしょう。



「キラリン、来るで! 後衛を守るのが第一や! ヴァンパイアとミスリルヘラクレスには注意やで!」


『GOOOO!』



 セイレーンの風魔法以外はほとんどの魔法が効かないはず。それはヴァンパイアの闇魔法であっても。

 となれば物理攻撃を警戒する必要がありますが、ゴーレム部隊の硬さは異常。

 ミスリルゴーレムを斃すためにはヴァンパイアかミスリルヘラクレスの速度の乗った攻撃が必要でしょう。

 ゴーレムは遅いですからね。向こうの速さについていけません。


 基本的には防御。眷属への対処はキラリン。攻撃は主に後衛の仕事になるでしょう。

 やはり問題はセイレーンだと思います。

 まともにぶつかれればランクの壁を超えてキラリンが勝つことも考えられますが、セイレーンの速さにはついていけるとも思えません。


 そうなるとやはりターニアさんが相手するのが正解なのでしょう。

 しかしターニアさんには指揮もありますし、ヴァンパイアに対して有効な光魔法を放てるのもターニアさんだけなのです。

 召喚したばかりで戦いの場に立たせ、負担の大きい役割を……。何か私にできることは……。



『さぁさぁみんな行きますわよ~。みんなじゃんじゃん撃っちゃっていいですよ~。うふふ、楽しいですね~』



 ……楽しそうですね。すごく。

 私が何か言わないほうが良さそうですね……ターニアさんの好きにさせましょう。うん。




ターニア様のステータスが高ぎるかもしれません。いずれ下方修正するかも。


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