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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第二十四章 女帝の塔は節制同盟と戦います!
482/486

461:最終盤、激しい戦いが続いています!



■フッツィル・ゲウ・ラ・キュリオス 52歳 ハイエルフ

■第500期 Bランク【輝翼の塔】塔主



 【節制】同盟との戦い、その最終舞台となる最上層では目まぐるしい攻防が展開されておった。

 スカアハとヨギィが光の檻で囚われたことに全ては起因する。


 筒持ちである大鷹は最後尾に陣取りながら最初はスカアハとヨギィを狙っておった。

 スカアハは狭い檻の中で何とか避けていたが、直撃は避けても衝撃は入るようで目に見えるダメージを負っていた。


 ヨギィが狙われ始めた頃には攻撃陣がほぼ布陣していたので、ランスロットが盾となり何とか防いでいた。

 あの長距離攻撃を確実に防ぐならランスロットかウリエルくらいでなければ厳しい。

 それが分かっておったからハルフゥはランスロットをヨギィの前に置いたのじゃ。



 ハルフゥはまず大鷹を斃すべしということで飛行前衛部隊の全てを指し向けた。

 六体のSランク固有魔物は三体ずつの二部隊に分かれ、ターニア・麒麟・パタパタは途中のホーリードラゴン(S)を抑え、クルックー、ヘルキマイラ、パルテアは大鷹に迫っていた。


 大鷹は狙いをクルックー部隊に変更し、攻撃を放ちながら逃げようとする。

 しかし今度こそ逃がすわけにはいかんとクルックーが奮闘した。

 大鷹の攻撃はヘルキマイラやパルテアにダメージを与えたが、クルックーは回復しながら自分は回避し、その上で突貫するという見事な働きを見せた。


 途中、ミカエル部隊や三つ首竜の邪魔も入ったが、そちらは傷を負ったヘルキマイラとパルテアが抑えつける。

 クルックーはとにかく大鷹を、という執念を見せつけ、見事撃破することに成功した。



「よし! よくやりましたわ!」アデルが吠えた。


 その後、クルックー部隊は敵陣最奥から無理矢理に脱出。ターニア部隊と共に攻撃陣のもとまで帰還する。

 六体はここでウリエル部隊から回復を受ける。無茶な突貫の代償はあったということじゃ。

 これで互いに初期配置に戻ったわけじゃが、敵は筒持ちの大鷹を喪い、こちらはスカアハとヨギィが動けないという状況。



『ペロを巨大化させます! 本陣の守りを! フィルフは私と共にペロの背に!』


『お前が狙われるぞ、ハルフゥ! ペロに乗るのは危険だ!』


『光の檻を引き付けます! おそらく次に狙うなら私かペロとなるでしょう! 私ならば囚われても指揮はとれますので問題ありません!』


『いや、それはそうかもしれねえが……』


『その代わり防衛はお願いします! シルバ、マナガルムは本陣を守って下さい! 前衛部隊は地竜とドレイクを! 飛行部隊は手前の飛竜部隊からお願いします! 後衛部隊は支援と防御を! 光のブレスをスカアハさんとヨギィに当てさせてはいけませんよ!』



 ハルフゥに気合いが入っているのは見て取れるが、なかなか堂に入った指示出しだとわしは感心していた。


 一見悪手に見えるペロの巨大化は確かにメリットもある。

 現状一番狙われやすいのはヨギィとスカアハじゃが、スカアハに関しては神聖・光属性が弱点となっておる。ヨギィも魔法は効かぬがブレスは効くらしいしのう。

 空を飛ぶホーリードラゴン、ホーリードラコからブレスでも受けようものならただでは済むまい。下手すれば死ぬじゃろう。


 だからこそペロを巨大化し、ハルフゥが背から指揮をとることで敵愾心を集めようと言うのじゃな。

 敵に狙われても防衛陣は固めるし、仮に攻撃が通ってもペロの耐久力は高いし、ハルフゥは神聖魔法で回復できる。

 何より限定スキルの標的をハルフゥかペロに限定出来るかも、というのが大きい。


 光の檻に捕らえられて困るのはウリエル、ランスロット、ターニア様、クルックーあたりじゃからな。攻撃陣の胆となるのはそこじゃ。



 案の定、敵は猛攻を仕掛けてきた。空から飛竜、地上にはドレイク。

 三つ首の飛竜もデカイが地竜もデカイ。何とも悍ましい光景にわしも思わず息を飲んだ。



『バートリ! ドレイクからヤるぞ! 地竜は後回しだ!』


『パタパタと麒麟はドラコをお願いね~。私はホーリードラゴンを抑えますから~』


『ジータ様前を空けて下さい! ペロを少し前に出します! マナガルム、右上のドラコを!』


『アタランテは空の援護! オルフェウス部隊はバフと闇魔法だけで構いませんぞ!』


『天使部隊前へ! 飛行部隊を援護する!』



 各小隊長、中隊長の連携。それはわしが想像していた以上のものじゃった。

 アズーリオたちからすればもっと意外に見えるじゃろう。こんなにまとまるはずがないと。


 部隊分けしたのが良かったのか、【空城】同盟戦が活きたのか、ジータやゼンガー爺が混ざっているのが良いのか、わしにもよく分からぬ。

 しかし明らかに連携はスムーズで、局所戦力が実力を発揮しつつ部隊として戦っているようにわしには見えた。



 とは言え、敵は強者。【節制】同盟の主力であり、竜と天使の群れじゃ。一筋縄ではいかん。

 おまけに向こうも向こうで妙に連携が上手く、予想以上に強くも思える。

 ミカエルの固有スキルなのか、何なのか……まさかまた限定スキルを使っているわけではあるまい。


 いずれにせよ敵の攻撃は苛烈で、ブレスを集中して吐かれればそれだけでBランク以下の魔物は斃される。Aランクでも無傷とはいかん。

 回復要員も多いがとても全てをケアすることは不可能じゃ。

 結局先頭に立って迎撃するのは固有魔物となる。それでも簡単に斃せる相手ではないがのう。


 バートリであってもソードドレイク(A)一体を斃すのに何発もの打撃を要する。

 相性の問題もあるがジータでも簡単に仕留められんところを見ると、やはり何かしらの強化が入っていると見るべきじゃろう。

 飛行部隊のほうがまだマシかもしれぬ。Sランク固有魔物が固まっている部隊というのはやはり強い。



 そうこうしているうちに再び『光の檻』が発動した。

 やはり狙われたのはハルフゥ。こちらの連携を脅威と見たのは間違いない。だからこそその中核たる総指揮官を狙ったのじゃろう。

 ペロの背から強制的に下ろされ、ハルフゥは狭い檻の中に閉じ込められた。



『シルバ部隊、オルフェウス部隊、防衛を頼みます! ペロはそのまま前進! ジータ様、ペロを地竜に当てて下さい!』


『おう、任せろ! バートリ、ランスロット、部隊を広げろ! ペロを中心に攻めるぞ!』



 慌てた様子はなし。狙い通りではある。

 敵はハルフゥを集中して狙って来るじゃろう。指揮官を狙えば連携も崩れると見るはずじゃ。


 だからこそハルフゥはペロを少し前に出しただけで本格的に戦わせてはこなかった。いつ囚われてもいいように。

 本陣の中で囚われる分には守りもしやすい。そうした狙いがあったのじゃろう。

 現に、すでにハルフゥの周りには狼部隊が固まり、後衛部隊からの援護も入りやすい状況になっておる。

 囚われたところで簡単にやられはしない。指揮をとり続けるのも問題ない。



 しかしあの限定スキル……やはり何かしらの条件があるようじゃのう。

 スカアハが囚われてからヨギィが囚われるまでは短時間じゃったのに、そこからハルフゥが囚われるまでにはかなりの時間が掛かっていた。

 単純な回数制限などではない。TP消費でもあるまい。となれば……魔力消費か? それくらいしか思いつかん。


 つまりアズーリオは魔力を回復させながら限定スキルを行使していることになる。

 三発目に時間が掛かっていたところを見ると、回復量が追いつかないほどに消耗しているのかもしれぬ。

 撃ててあと一発か……? 希望的観測かもしれぬが一応共有しておくか。



 それからも互いに削り合う戦いはその激しさを衰えさせることもなく、時間だけが経過していく。

 こちらが押しているのは間違いない。

 だが魔物の数は減り、天使部隊も忙しなく回復している。


 このまま行けば勝てるとは思うが、固有魔物の数体は喪ってもおかしくはない。

 そんな予感もしてきた矢先、福音とも言える報告が並ぶ玉座から聞こえてきた。



「ハルフゥさん! もうすぐエメリーさんが到着します! 皆さんに通達を!」



 恐ろしい速度で【節制の塔】を走るエメリーはもちろん体力を消耗することもなく最上層まで辿り着こうとしていた。

 正しく千人力じゃな。第三陣としておいて良かったとも言える。

 これでエメリーが加われば勝利は確実じゃ……が、問題は限定スキルじゃな。



「シャル、エメリーが最上層に到達した瞬間に『光の檻』に囚われる恐れがある。エメリーにもハルフゥにも説明しておけ」


「あ、そうですよね……でも説明したところで、どう対処すれば」


「仮に速攻で発動されても階段のすぐ上じゃから安全には違いない。それにエメリーに使うことで限定スキルはほぼ使い切ったと言えるはずじゃ。ならばあとはもう後顧の憂いなく攻めるのみじゃよ」


「分かりました! ではそのように伝えます!」



 エメリーが囚われては困るのじゃが防げん以上、他に言いようもない。

 しかし限定スキルが発動するまで若干の猶予がある可能性もある。そうであれば限られた時間で暴れてもらうしかあるまい。

 それにエメリーが戦場にいるだけで部隊は引き締まるしのう。精神的作用だけを考えても大きい。



 わしの淡い期待はどうやら適った。

 それからすぐにエメリーは最上層まで辿り着き、階段から飛び出すや否や、三本の武器を投げた。



『バートリ! ジータ様!』


『おお! 遅かったなエメリー!』『うおっ! いきなり投げんじゃねえよ、危ねえ!』


『限られた中で動きますのでご承知のほど。ハルフゥ、私は前に行きますのでそこで囚われたら後は頼みます』


『了解しましたわ!』



 投げたのはエメリーが普段から使っている魔竜斧槍が二本、そして魔竜大剣が一本。

 バートリはハルバード二本を受け取り、ジータは以前にも使った特大剣を再び構えた。

 こうなれば固い地竜であっても敵ではない。地上部隊は一気に押し込めるじゃろう。


 ……まだエメリーが囚われる様子はない。わしの仮説が正しければまだ魔力が回復しきっていないということじゃ。

 ハルフゥに使ったのが間違いじゃったな。

 それだけ部隊の連携を恐れたとも言えるが、残念ながらハルフゥの統率能力はスキルだけではない。光の檻の無駄撃ちと変わらん。



 エメリーも即座に囚われるつもりでいたのじゃろう。だからこそ第一に武器を渡した。

 自分が囚われようとも戦力を上げるという最低限の仕事はする。その意思は見事と言う他ない。

 しかし囚われないというのであれば好都合。時間の許す限り戦おうと、エメリーは速度を維持したまま戦場を駆けだした。


 地上部隊はジータたちに任せるらしい。魔竜剣持ちが二名もいるならば安心じゃろう。

 エメリーが向かったのは三つ首の飛竜じゃ。

 今はクルックーとヘルキマイラが相手をしておる大型飛竜に向かい、駆けると同時に跳ねた。


 エメリーの脚力を持ってしても連結階層の空を飛ぶ飛竜と正面から相対すことなど出来ぬ。

 だが、足元に刃を届かせるくらいのことは出来る。

 かすり傷でも付ければそれで終わりじゃ。もちろんエメリーが持つのは――【魔剣グラシャラボラス】じゃからのう。



 咆哮を上げ、暴れては地に落ちる飛竜を後目に、エメリーは速度を維持したまま駆けた。

 まだ戦わせてくれるのならば戦いましょう、といった具合じゃ。

 次の標的は最後尾の天使部隊。当然狙いはミカエルじゃ。


 さすがに恐怖を抱いたのじゃろう、ミカエルは飛んで逃げようとした。配下の天使を壁にも使う。

 しかしそれを許すエメリーではない。

 マジックバッグに魔竜斧槍を仕舞い、代わりに出した分銅付きの鎖を投げつける。



『ぐっ……! ぐあっ!!』



 鎖はミカエルの足に絡みつき、それと同時にエメリーは力一杯引き寄せた。

 地面に叩きつける様子を見れば、どれだけ力を込めたのかとミカエルを気の毒にも思うほど。

 わしが同じ真似をされれば足なんぞ引きちぎれておるじゃろう。画面を見ているだけで顔が引きつる。


 あとは落ちたミカエルに近づいて魔剣を触れさせればそれで終わりじゃ。

 最上層に来てから一分足らずで二体のSランク固有魔物を斃したことになる。三つ首もおそらく【節制】の魔物じゃろうしのう。Sランクで間違いあるまい。



 さあ次はどこを狙おうか。天使の残党か、さらに後ろに配置されたロイヤル部隊か。

 そう思っていたところに――幾本もの光が立ち昇った。



「やっと、ですか。遅すぎですわね」



 アデルの言葉は誰しもが思ったことじゃろう。

 アズーリオはエメリーが最上層に上がる前から焦っていたに違いない。なるべく早く魔力を回復させようと躍起になったはずじゃ。

 しかし第四の封牢はあまりに遅すぎた。

 数秒であっても十分な仕事をする。――それが【女帝】の侍女じゃからな。





■エメリー ??歳 多肢族(リームズ)

■【女帝の塔】塔主シャルロットの神定英雄(サンクリオ)



 わたくしが最上層に辿り着いてから予想外に時間的余裕がありましたので、取り急ぎ目ぼしい魔物を二体ばかり斃しておきました。

 そこでどうやらタイムアップのようです。


 光の檻はわたくしを包み……なるほど、武器すら持てなくなるわけですか。スキルも使えませんね。これは確かに厄介です。

 惜しむらくは少々敵陣の深くまで入りすぎてしまったことですが……皆さんも動いて下さるでしょうしね。まぁ大丈夫でしょう。

 いざとなればジャンプは出来ますし最低限敵の攻撃を避けることは可能でしょう。



 ……と思っていたのですが、予期しないことが起こりました。



 カランと鳴った音。それは敵陣最後尾、ロイヤル部隊のさらに奥で聞こえました。

 それと同時にわたくしを包む光の檻も消えたのです。

 限定スキルが解除された? わたくしは不審に思いながら、ロイヤル部隊の奥、妙な音が鳴ったほうを見ます。



 するとそこには……【節制】の塔主、アズーリオが斃れ伏していたのです。






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