表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第二十四章 女帝の塔は節制同盟と戦います!
473/486

452:こちらも【節制の塔】を上ります!



■アデル・ロージット 19歳

■第500期 Bランク【赤の塔】塔主



 【節制】の眷属である亜人の魔物についてはわたくしも警戒しておりましたが、シャルロットさん経由でレイチェル様のお言葉を頂き、余計に注意が必要だと考えておりました。

 おそらく限定スキルが効かないという予想は予めお聞きしておりましたが、まさか魔法まで効かないとは……。

 身近に虹竜アイダウェド(ブリング)という存在がありながらその可能性を考えていなかった。これはわたくしのミスですわね。


 あの亜人が魔法を使っている様子は道中で確認しました。

 つまり「スキル無効・魔法無効とする範囲魔法」を使っているということになりますから、ブリングより燃費は悪いと思われます。ブリングの場合は咆哮だけですからね。完全に上位互換と言えるでしょう。

 ただ人型で行使できる分、攻撃陣にも回せると。そこがやはり大きいですわ。シンフォニア伯がパレードに連れていたのも納得です。



 おかげでわたくしの防衛計画もかなり狂わされました。

 調査目的の威力偵察も無駄ですし、削り目的のヒットアンドアウェイも無駄。

 配置していた魔物の多くが「戦わせる意味のないもの」になってしまいました。

 二百体という配置数制限がある中ではかなりの痛手と言えるでしょう。勿体ないことをしましたわね。


 エメリーさんやアタランテを使って速攻で暗殺を仕掛けるというのも考えましたけれどね、万が一成功しなかった時は怖いですし、それにわたくしには少し懸念することがあったのです。


 もし【節制】側が限定スキルを使って仕掛けてきたらどうしたものかと。


 ドロシーさんが【針葉樹】戦で使われた「自塔への転移」。それとは逆に「敵塔への転移」をしてくる可能性もあるのでは、と思ったのです。

 【節制】側が持っている限定スキルの数は多い。どんな限定スキルを持っていてもおかしくはない。

 妙に弱い敵攻撃陣も、わざと数を減らし、余剰分を空け、増援が来やすくさせる目的があるのではないかと。


 そうした懸念があったので、特にエメリーさんはなるべく最上階から動かしたくはないと思っていたのです。万が一、敵部隊への合流目的の転移ではなく、最上階に直接転移できるようなものなら困りますから。



 ということで【赤の塔】の防衛は予定通り、時間をかけて徐々に削り、上層で一気に仕留めるという形をとりました。


 二階層でクリスタルゴーレム(キラリン)(A)のゴーレム部隊を使うと言って下さったのはドロシーさんです。

 わたくしが五階層でバーンレックス(チロチロ)(A)の蜥蜴部隊を使うと言っておりましたので「じゃあウチは二階層に置くわ」と。


 将来的に眷属でなくすつもりなら、せめて最後は戦場でという、わたくしと同じ気持ちがあったのだと思います。そこまではっきりとは言われませんでしたけれどね。


 ゴーレム部隊を使うならば洞窟のほうがいいですし、ならば二階層がいいだろうと。事前にそういった話がありました。

 とは言えただ使い潰すわけもありません。

 おかげであの亜人にもブレスは効果があると分かりましたし、状態異常も効くと分かりました。

 油は後の布石ですわね。ノノアさんには今回、かなりの数のスライムを出して頂いております。それもまたありがたい。



 三・四階層は鳥部隊の引き撃ちで削ることを主目的としていましたが、一階層の時点でそれが無駄であると分かっていました。

 ただ四階層に関しては、実はわたくしの<赤き雨の地>も試していました。

 薄い霧の状態ですが、それを本当に防げるかという確認ですわね。敵も気付けないほどの薄さですけれども。


 視界的には良好でも、霧が身体に触れれば微弱なダメージが入ります。

 魔物には気付かれないほどの薄い霧、弱いダメージ。しかしわたくしは1TPでも入ればそれを確認できると。

 それで<赤き雨の地>が効くか試したわけですが……やはりダメでしたわね。亜人の範囲魔法内では限定スキルも全て無効となるようです。


 つまり敵攻撃陣が視界不良になることはないということですわね。

 すでに六階層以降の屋外階層に<赤き雨の地>を設定してしまっているので今さら解除も出来ませんが、戦果に繋げることは出来ないと承知しておきます。



 そして五階層、チロチロの出番ですわね。『押し出す壁』と巨人・大蜥蜴の群れによる攻勢をかけます。

 目的は削りなのですが、もう一つ「溶岩による地形ダメージは効果があるのか」という検証も含まれていました。


 結果はかなり効果があると。亜人の魔法も無意味ということですわね。

 敵は水魔法を使える魔物を多く投入していましたが――【赤の塔】を攻略するつもりなら当然ですが――それでも苦戦している様子が見られました。

 ここでAランク魔物を含む計十六体を削れたというのは予想以上の戦果だと言えます。



 そうして敵攻撃陣は六階層へ、というところなのですが、一度【節制の塔】のほうに目を向けましょう。



 六階層『罠の通路』を抜けた攻撃陣は七階層『城内』へと進みます。

 市井の情報はここまでですわね。侵入者の最高到達地点が七階層ということです。

 随分と進んでいない印象ですが一番の原因はやはり魔物の質の高さでしょう。普段でもBランク以上の魔物がごろごろと出て来るらしいですから。


 しかもこの『城内』は連続中部屋に広間を合わせたような創りなのですよね。明らかに魔物で殺しに来ている塔構成と言えます。

 今回の塔主戦争(バトル)でも部屋ごとに守りを固め、少しでもこちらを削ろうとしている意図が見られました。


 六階層にもいたロイヤル部隊に加え、サジタリアナイト(A)とテラーナイト(B)の部隊、おそらく【蒼刃】の魔物であるケイブンキング(A)とケイブンナイト(C)の部隊、カルキノス(C)やクラッグキャンサー(B)が部屋を塞いでいるとかもありましたわね。


 遅延が主目的で、あわよくば削りも……といったところだと思います。

 普通に考えれば十分な防衛陣と言えるかもしれませんが、この程度でしたら全く問題ありませんわね。

 後衛部隊や飛行部隊の出番がほとんどないまま、前衛部隊だけで楽に斃せます。



 そして部隊は八・九階層へ。ここは連結階層ですわね。

 塔構成は『城下町広場』という感じで、中央が広く空いている街並みが見えます。

 事前情報もないのでターニア様が先に探ってから突入……という形にしたかったのですが、ここで一つ問題がありました。


 まずかなりの強風が向かい風になっているということ。天候設定でそうしているのでしょう。

 そしてその風にダメージがある(・・・・・・・)ということ――。



「は? どういうことやねん」


「風自体が細かい<風の刃(ウィンドカッター)>みたいになっているようです。ターニアさん曰く」


(ウォール)系魔法で防ぐことは出来るのか?」


「ちょっと待って下さいね…………出来るみたいです」


「ではそれで防ぎながら進むしかありませんわね。オルフェウス部隊に耐えず壁を張らせるよう、ハルフゥに指示を頼みますわ」


「了解です!」



 まさか本当に風魔法を使っているわけもありませんし、天候設定でそんなことが出来るはずもありません。

 そうなると限定スキルを使っているとしか思えないわけです。おそらく【蒼刃】の持っている限定スキルだろうと。塔名で判断しただけですが。

 屋外構成の多いBランクの塔でこのような限定スキルを使われれば確かに危険でしょう。使い道は如何様にも考えられます。


 しかし【節制の塔】では使い道が限られるはずです。そもそも屋外構成が少ないはずですしね。仮に屋内で使えるとしてもほとんど効果はないでしょうし。

 そう考えれば、今ここで敵の限定スキルが一つ判明して良かったと言えるかもしれません。

 自塔限定でなく同盟塔でも使えるというのは確かに大きいですが、そこまで脅威と呼べるものではないと思います。



 こちらは(ウォール)系魔法で守りながら、一塊になって進軍を開始しました。

 そして敵は追い風に乗って空から。これも予想出来ていたことです。

 ブリーズイーグル(B)、エアロイーグル(B)、サンダーイーグル(B)などですね。

 鳥の群れによる特攻と、魔法の連射を仕掛けてきたのです。


 問題なく対処は出来ていたと思います。ハルフゥの指示で各部隊が上手く動けていたと。

 しかし階層の中央……円形広場まで辿り着いた時に、様子が変わりました。

 今まで正面から吹いていた風が、左右からの風に変わったのです。


 左右から強風がぶつかり合い、広場の中央には竜巻が生まれました。それら全ての風からダメージを受けるということです。

 (ウォール)系魔法で一方向だけを守っていては到底防げません。無傷というのは不可能です。


 攻撃陣はなるべく周囲に(ウォール)系魔法を展開し、足早に通り抜けることしか出来ませんでした。

 天使部隊の回復により被害こそ出ませんでしたが、かなり魔力を使わされましたわね。



「つ、つまり、風を操りつつダメージを乗せるような限定スキルだった、ということでしょうか……」


「それしか考えられませんわね。天候設定で風向きを変えたにしてはタイミングが良すぎます。塔主戦争(バトル)の途中で設定変更など出来ませんから、限定スキルで風を創っていると見たほうが良いでしょう」


「思った以上に厄介じゃな。仮に屋外階層でしか使えんとしても、これから先の屋外階層は全て警戒が必要となるじゃろう。まだ八・九階層だというのにもう使ってきたのが良い証拠じゃ」


「奥の手でも何でもないってことやな。とりあえず使っておくかってなもんやろ。この分だとあと何回使われるか分からんで」


「もし屋内階層でも使えるようなら室内で竜巻が創れるということですよね……そうなればかなり厳しいのでは」


「敵の魔物にはダメージもなかったみたいですしね……限定スキルらしいと言えばらしいのですけれど……」



 色々と考えなければいけないことはありますが、対処方法も(ウォール)系魔法くらいしかありません。

 こちらに例の亜人はおりませんし、ブリングは攻撃陣に組み込めないのですから。

 一抹の不安を残しながら、わたくしたちは十階層へと進む攻撃陣の様子を見ていました。



 十階層は連結階層でもない屋内階層でした。風もなく内心で少しホッとしましたわね。

 ここは『城内』と言うより『砦』の形状。通路と部屋の組み合わせで構成された階層のようです。

 どうやら六階層以上に罠が多いらしく、それも察知系スキルが効かない罠やギミックが多いようでした。


 扉を開けるといくつも連動してギミックが働き、結果的に通路から矢が放たれるといった仕掛けや、人数制限のある部屋や通路、定期的に天井から槍が飛び出してきたりといった感じです。

 【女帝】【忍耐】【世沸者】で使われているような罠と似ているようで少し違う感じ、とでも言いましょうか。

 もしかしたら真似されたのかもしれませんが、シンフォニア伯独自のアイデアも盛り込まれているように思えました。



 これで斥候がロイヤルジェスター(A)だけであれば被害を受けていたかもしれません。

 しかし未だ影に潜み続けているスカアハがおりますし、画面を通してドロシーさんが見ています。

 どこにどのような罠があるか、あらかじめ予想しつつ<罠察知>を駆使するような形で階層を攻略していきました。


 魔物は部屋の中にやはりロイヤル部隊が待ち構えていたり、暗闇部屋にアサシンエッジ(C)が潜んでいたりといった感じです。

 やはり魔物の対処だけなら楽ですわね。

 それこそ配置数制限でろくに移動も出来ないでしょうから、最初に配置されていた魔物を順々に斃していくだけという作業になります。

 今のところ厄介なのは【節制の塔】の塔構成と限定スキルだけと言ってもよいでしょう。



 そして十一階層。ここも同じく『砦』のような形状なのですが、入ってすぐに分かりました。十階層以上に困難だと。


 通路も狭く、部屋も小さい。罠もおそらく多いでしょう。

 どことなく【世沸者の塔】や【女帝の塔】の四階層を彷彿とさせます。



「こ、これ、本当に真似てるんですかね……」


「うーん、ベテランでAランク最上位の【節制】がウチらの塔を見てわざわざ創り直すなんてしないと思うんやけどなぁ」


「諜報され始めたのも最近のはずですしね。まぁ侵入者情報でとっくに知っていた可能性はありますけれど」



 いずれにしてもこちらに似たような塔がある以上、攻略はしやすいと言えるでしょう。

 間違いなく侵入者は攻略出来ないでしょうし、どこかの塔との塔主戦争(バトル)でも有利となるでしょうけれどね。

 罠だらけの塔構成であればこちらに一日の長がありますわよ。残念でしたわね。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓こんな小説も書いてます。
カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~
エメリーさんも出てますよ!
ハーレム・チート・奴隷物が大丈夫な方はぜひ!
ぽぽぽぽいぞなぁ!~物騒すぎるジョブになっちゃったので、私、スローライフは諦めます~
村娘に転生してスローライフを夢見ていたのに就いた職は【毒殺屋】!?
暗殺者とか嫌なんで、こうなりゃもう冒険者になります!
シリアスなしのギャグ作品です
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ